14 代駆さん家の四姉妹
朝である。
クッションを幾つも重ねたような寝床から彼女は立ち上がった。
寝ぼけていても足取りはしっかりしている。
なぜなら彼女はケンタウロスだからだ。
白い馬の部分にでかいパンツを履き、豊かな胸をブラで支えている。
薄手のネグリジェは透けており、滑らかで引き締まった肉体を見せていた。
フローリングの床を蹄で傷つけないよう、器用にルームシューズを履き、足首の辺りを紐で縛る。
縛らなければ脱げてしまう。
そう、蹄だから足の甲がないため、スリッパでは脱げてしまうのだ。
ルームシューズの底はスポンジが敷いてあり、固めだが非常に肌触りの良い布で覆われている。
蹄なので全く関係はないが。
彼女はクロゼットの戸を開ける。
派手な服が並んでいた。
赤やら青やら緑やら、原色かきつく明るい色の服ばかりだ。
その中から今日は白いシャツを選んだ。
白とはいえ、肩は金色の何かで装飾が成されており、袖口はラメ加工されてキラキラ輝いている。
シャツは一先ず置いて、下はスカートを選んだ。
ケンタウロスのスカートは下から履けない。
馬体が大きいからだ。
だからシャツを着る前に上から被る。
上から被ってそれから馬体に被せるのだ。
前後を間違えると回すのが大変になる大きさの布だが、仕方が無いのだ。
スカートの布が翻りすぎないよう馬の腹に回して留めるためのベルトが付いている事も多いが、彼女は留めない。
自身の体に恥じるところは無いからである。
着替えが終わり、ようやく彼女は部屋を出る。
四人姉妹の四人暮らし。
平屋一戸建てのちょっとお高い家だが、平屋以外にケンタウロスは住みづらい。
「あ、シロナちゃん起きたんだ~」
黒い馬体の姉が彼女に声を掛ける。
「クロねーさんおはよう。
今日もダサいね」
クロエの服は古い。
つぎはぎを当てたケンタウロス用ズボンがとてもみずぼらしくみえる。
「シロナちゃんの服は派手すぎるんだよー。
もっと節約しようよー」
「クロねーさんの節約はやりすぎだっての。
アカねーさんは?」
「アカネちゃん?
もうご飯食べて走り込みに」
「よくやるねぇ」
赤い馬体のアカネ、喧嘩好きの格闘技好き。
でも馬の足で蹴ったら傷害罪確定なのでゲームや武術でお茶を濁す毎日だ。
「はやく顔洗って髪をといて来なさい。
ボサボサよー?」
クロが忠告をする。
特に出かける予定はないが、シロナは姉に従うことにした。
自分の金髪は自慢の綺麗さだ。
家に居てもボサボサでは私の名が廃る物。
と、はたと気付く。
「そういやアオねーさんは?」
「アオイおねえちゃん?
今日も元気にひきこもりー」
返答にシロナはため息をついた。
「長姉がそれじゃあ見栄もあったもんじゃないね」
シロナは自室の向かいにあるアオイの部屋を睨む。
歩み寄ってさして期待していないノック。
直ぐにドアを開けた。
薄暗い。
ひきこもりの部屋にありがちなモニターの光はなく、ただただ薄暗く散乱している。
「トイレや食事には出てくるんだから引き籠もりなんかやらずにしてればいいのに」
中に入り、ベッドに目を向ける。
シロナに尻を見せるように背を向けて項垂れている。
「アオねーさん!」
まず大声。
アオイは身じろぎをして人の体を起こす。
馬体はベッドに伏せたままだ。
青白い馬体は薄暗いからこそよく見える。
「うぅ……なに」
掠れた声でアオイは返事した。
「外に出て。
引きこもってたらもっと外に出にくくなるわ」
「うーやだ」
「もう……」
シロはそれだけで馬体を翻す。
半分、諦めかけているのだ。
だが、幼馴染みの少年に申し訳が立たない。
彼は、アオイが好きなのだ。
だから足繁く通う。
でも、このままなら自分が彼を手に入れられるかも知れない。
そう思って、シロナは自分が嫌になってため息をついた。
勝利とは苦戦の果てに勝ち取る物だ。
今の姉から勝ち取っても意味は無い。
代駆さん家の家庭の事情は続きます。
本日(7/13)の午後22時ごろ、新作投稿予定。
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