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12 雷獣娘


 大学の校内で、凄くそわそわしてる女の子を見つけた。

 周囲の様子を伺って、胸の辺りを強く抑えて何かを我慢しているようだ。

 

 知ってる顔でもないので放っておこうと思ったが、財布を落としてそれに気付いていない様子。

 その上こちらに背を向け、足を引きずるように歩いている。

 あれでは気付きようがないだろう。


 仕方ないので拾って渡すことにした。

 人気のない所に行こうとしているのも気になる。


 彼女の財布を拾った。

 手触りがおかしい。

 ゴムだこれ。

 チャックもプラスティックで、凄く安っぽい。

 色こそ派手だが、女の子が持つような財布ではないと思う。


 品評をしていてもしょうが無い。


 女の子は何か逃避するようにおどおどとしており、具合も悪そうだ。

 大丈夫かこの子。


 後から近づく。

 気付かない。


 見つけた時は分からなかったが、派手な金髪は染めているのではなく、地毛のようだ。

 金、というよりは黄色と表現したほうが近い色だ。

 頭に髪の毛が膨らんだところが二つあり、なんか変わった髪型だな、と思う。


 黒いゴムっぽい指出し手袋とかラテックスのスカートとかパンクな格好は趣味だろうか。

 パンクロック部なんで部活、この大学にあったのか。

 などと考えつつ、お礼に食事にでも、なんて多少の下心も交えつつ、僕は彼女に後から接近した。


 肩の所を露出した大胆なファッションだ。

 肩を叩くときに肌に触れても仕方が無い。

 仕方がないのだ。


「ねえ」


 僕はゴムを自分のカバンの持ち手と纏めて持ち、空いた右手で彼女の肩を叩く。


「あっ」


 意外と可愛い声、と思う暇も無く、僕は腕に痛みを感じた。


「やっ、やだあああぁぁぁんっ!」


 彼女が悲鳴を上げる。


 痛みは手首から先だけではなく、肘や肩、その間の筋肉に至るまで。

 激しい痛みにもかかわらず、僕は反射的に手を引けない。

 痛みは次第に大きくなり、右の脇、脇腹、腰、腿、膝、脹ら脛、足に震え。

 直ぐに震えが大きくなって痛みを感じるようになる。


 腕が、引けない。


 筋肉が激しく震えるような、痺れ。

 そう痺れだ。


「ぐ、……ぎっ」


 口から声が漏れる。

 意識を手放さないように歯を食いしばり、痺れと痛みと下に感じる変な味に耐えながら、何とか腕を動かした。


 痛みは彼女から手を離すと同時に収まる。

 あとに残るのは軽い痺れと、痛みの名残だ。


 上手く体を支えることが出来ず、僕は尻から後に倒れ込む。


「なっ、んだ……?」


 尻餅をついて、ようやくその言葉を言うことができた。


「ひぅぅぅん……」


 そして僕はようやく、彼女の様子に注意を向けることが出来た。


 彼女は自分の体を抱きしめるように両腕を体にきつくまわし、内股になって小刻みに震えている。


 やがて膝を地面に着き、息を荒げた。

 呼吸を落ち着かせようと、荒く呼吸をし、肩が上下している。


 僕はその様子を見ていた。

 体に力が入らず、立てなかったのだ。


 彼女が落ち着いても僕は動けずにいた。


 彼女が地面に手をついて立ち上がり、憔悴した様子で暫く佇んでいた。


 僕はようやく動けるようになって、何とか立ち上がり、声を漏らす。


「な、なんだった……? 今の、なんだ?」


 すると彼女は振り向き、僕に罵声を浴びせてきたのだ。


「この、ばかあああ!」


 目いっぱいに涙を溜めて、顔を真っ赤にしていた。何故だ。




 あとで聞いた話なのだが、彼女は雷獣だ。


 最近街に増えてきた人外の存在が人の姿をとったもの、らしい。


 で、雷獣が人の姿を取ると、体内に溜まった電気を一日に一回は放出せねばならないらしい。

 彼女はあのとき、放電を忘れて体に電気を貯めすぎていたようだ。

 そのため迷惑にならないところで放電をしようとしていたのだとか。


 後から急に声を掛けられビックリし、漏電した、そうだ。


 雷獣にとってこの漏電はとても恥ずかしく、人間で例えるとお漏らししたようなものなのだとか。


 そのことを付き合いだしてから彼女に聞いた。

 きっかけ?

 アレだよ。

 漏電だよ。



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