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11 元猫の猫娘


 人外達が人の街に馴染んできて数年。

 見たことはあるけど街をすれ違うだけだった。

 

 そんな遠い存在が近くなると、案外たいしたことないな、って思う。




 名前を呼んでも彼女はこない。


 しかたないなと、仕事を始める。

 僕の仕事はモノカキだ。パソコンでかく事を仕事にしている。

 暫くモニターに向かっていると背中に重みを感じるようになるのだ。

 それと、人の肌の温度。

 重みは少女のそれで、温もりは僕より少し温かい。


 モニターの黒い所に彼女の顔が写っている。

 判別しづらいが、興味津々だ。


 肩越しに後を見ると、彼女はふぃっと顔を逸らし、目を瞑った。

 長いまつげが伏せられて、カーブを描いて天を向く。

 ふるふると震える毛先が我慢をしている証か。


 僕は前を見る。


 モニター越しに彼女がモニタを見ているのが分かった。

 もう一度肩越しに彼女を見ても、やっぱり顔を逸らす。

 肩に掛かる彼女の重みは増し、意識の前のめりさを伝えてきた。


 仕方ないな、と苦笑して僕は作業を続ける。




 暫く続けると、飽きてきたのか、僕の上からどいた。


 軽くなった肩を回し、凝りを取っていると、彼女はロープを持ってきた。

 ロープの片側は解れ、ボサボサになっている。


 彼女は自分の遊び道具をキーボードの上に無造作に放った。

 僕がロープを手に取ると、彼女は床の上に背を向けて座り込む。

 胡座を掻いて背を曲げて。

 硬くて軽い音が一定のリズムで何度もすることから、爪を立ててフローリングの床を叩いているのだろう。

 猫の鋭い爪ではなく、短く切られヤスリで丸められた人の爪でだ。


 遊んで欲しいのだ。


 彼女は僕の飼い猫。

 

 正確に言えば、元・僕の飼い猫。

 今は化け猫。

 ずいぶんと見た目は人間らしくなったが、その性質は変わらない。

 見た目が人間と言っても、耳や尻尾が猫のままだ。


 僕はロープを置いて、作業に戻る。


 作業をしながら待っていると、彼女は体を動かさないよう首だけ動かして肩越しにこちらを見てくるのだ。


 彼女の動きに気付いてそちらを見ると、彼女は慌てて前を見る。

 そのまま見てると、僕に気付かれないようにしているのか、ゆっくりと振り向いてきた。


 僕が観察してることに気付くと、慌てて前を見る。


 ロープを持つと、それ以上解れないようロープの端から少しの所に付けた鈴が音を立てる。


 褐色の毛が覆う彼女の耳がぴくりと動いた。

 ロープを揺すってころころと鈴の音を立てると、彼女は耳と尻尾を反応させる。


 彼女が拗ねても面倒なので、そろそろ構ってやることにした。


 ロープの中程を持って、解れた方を彼女の近くに放る。

 ロープの左右を振ると解れた端が振られて鈴がころころと音を立てるのだ。


 彼女は猫。

 だから速く動く物を目で追う修正がある。

 目に入らないよう前を向いていても、耳と尾っぽはぴくり、ぴくりと反応するのだ。


 やがて彼女は体を丸め、ゆっくりと後を振り向いてロープの解れた先っぽを見る。

 首をふってロープの先を目で追う。

 ちょっと止まったところで彼女が腕を伸ばしてロープの端を捕まえようとした。


 僕が彼女の動きを読んでロープを引くと、彼女の手は空を切った。

 それでも視線はロープの端を追い続けている。


 うん。

 うん。

 僕と彼女はしばらくそうやって遊んでいた。


モデルの猫は従弟の飼い猫です。

オスです。

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