10フランケンシュタインの怪物娘
発想の源が怪物君なのでこっちで。
現代のフランケンシュタイン教授、佐堂完次は稀代の天才であると言わざるを得ない。
新鮮な死体を切り刻み、繋ぎ、縫い合わせ、一つの生命体として復活させるなど、常人になせることではない。
が、許されることではない。
現代日本で成そうとすれば、方法は限られるし、実際その様に成したからだ。
つまり、死体の調達を殺人によって行ったのだ。
連続猟奇殺人鬼にしてマッドサイエンティスト、佐堂完次の作品は50を越えるが、殆どが正気をなくし暴れ射殺された。
自分の姿と現状に耐えられなかった、と彼女は言う。
彼女、つまり佐堂完次の怪物最後の生き残りだ。
「光が入る。
閉めなさい」
しゃがれた声は久しぶりの発声だからか。
暗い部屋の中から彼女は言った。
僕は見えてはいないだろうが首を横に振り、嫌に光る彼女の両目に向けて語りかける。
「そういう訳にもいかない。
そろそろ、外に出てみないか?」
「お前は酷い男だ」
強い語調で彼女は断言した。
「私の醜い顔を、お天道様に晒せというのか。
人を怯えさせろと、いうのか」
僕は彼女の返事を聞きながらドア脇の壁を探る。
「やめろ!」
クッションか何かが僕の顔に当たって落ちた。
顔を下に向けてそれを見ると、くまのぬいぐるみだと分かる。
彼女が投げつけたのだろう。
僕は探り当てた電灯のスイッチをつけた。
だが灯りは灯らない。
「蛍光灯、抜いていたのか」
彼女は応えない。
「そこまでして見られたくないのか」
「そういう訳じゃない」
佐堂完次は天才だった。
死体の組織を蘇らせ、新陳代謝すら行わせる。
だから、彼女の体は腐っている訳でも血が流れていない訳でも無い。
新鮮、というか生きている。
ただ、つぎはぎなのだ。
そして彼女は女の子なのだ。
「だったら外に出よう」
「それは嫌」
「だけど何時までも引きこもっているわけには行かないでしょう」
「嫌」
瞼が閉じられるか、顔が伏せられたか、彼女の光る目が見えなくなる。
闇の中から布同士が擦れる音がした。
「私の顔はどこだ。私の腕は誰のだ。
私の躰に、私はどれだけ残っている。
人に見られるより、光に照らされて、否応無しに理解させられるのが何よりも、嫌」
このまま引き籠もり続けるのは限界があると、彼女もそう思っていたのだろう。
初めての告白だった。
殺され材料にされた者達全ての叫びだったのかもしれない。
アイデンティティーという言葉がある。
日本語では自己同一性といい、自分に対する一貫性、その実感のことだ。
「私は、誰?
私はどこにあるの?」
嗚咽混じりの告白が、啜り鳴きに変わる。
泣いているお陰で、彼女が何処にいるか分かった。
だから、僕は彼女に近づける。
「君は君で、ここにいる、じゃあ満足しないんだね」
彼女は、哀れに思った父が引き取ってきた。
そして、僕と彼女は暫く闇の中で話し、交流してきたのだ。
初めてかもしれない。
彼女に触れるのは。
僕は彼女の息づかいを感じ、手で探りながら彼女を抱きしめた。
「君は僕が好きになった人で僕の傍にいる。
これでどう?」
気の利いた慰めはできない。
だから、僕は彼女のために出来ることをしよう。
重いよ!
1500字以内でやれないよ!
文量足りないって!
……長編でやるんだった。




