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「ものがたり…………?」
………こんな空気の中で急にそんなワードを出されても。彼女のくちぶりからしてそれは所謂ストーリーという名詞のこととは違うものなのだろう。
だがしかし、まあ。
無表情な彼女と言い。
張り詰めた空気と言い。
急に大声で笑いたくなった。
いや、もちろんそんなことはしないけど、この空気を壊してしまいたいと突発的に思ったのだ。実際にやるのはただの阿呆だけ。さすがに……僕がそうなる気はない。
「……研究者集団。そういう、名前の……」
麻耶は簡潔にそう告げた。研究者の集団とは、また。
「変なの」
思わずつぶやく。
「わたしに、言われても」
麻耶は律儀に応対した。また仮定の話になるが、彼女がもし普通の人間なら、なんとも言えない苦笑いを浮かべているだろう。
「とにかく、その物語の起こした実験で、わたしは人じゃなくなった」
気付けば笑いたい衝動は消えていた。狭いリビングには濃すぎる密度。飽和状態。明らかに自分自身、余裕が無くなっていくのがわかった。
「人じゃなくなるなんて……」




