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そして──現在時刻、六時三十七分。
僕は外ではないところ。有体に言えば自宅にいた。
面倒且つ怠い学校がやっと終わったというのに、僕は緊張の溶けないまま、リビングに置いてある低いテーブルの前に正座していた。
何を隠そうそれは、麻耶と一瞬にいるせいだ。結局は、そういうことなのだ。
「ここ……」
「あーうん、僕の家だけど」
麻耶は文句をいったりはしなかったけど、これはひどい。移動しようといったきり、行き先も告げず着いた先は高校生の、しかも男子の独り暮らしの部屋。自分でもそう思うし、もしもこれを友人達に知られたりでもしたら僕は精神的にも社会的にも殺されるんじゃないだろうか。
……などと色々と思うところはあるのだけど、それが何か、と僕は首を傾げて見せる。やはり、彼女は何も言わず、無表情で首を前に傾けた。……ここで頬を紅潮させるだとか、なんらかのリアクションがあると助かるのだけど。
いやでも麻耶が至って普通の少女だったなら、そりゃあまあ、問題は少々、いや下手をすれば多々あるんだろうな、とは思う。しかし、彼女の場合は…………。
それを求めるのは、酷なんだろう。なんとなく気まずい空気が流れて、僕は立ち上がった。
「何か飲み物でも」
少し待ってて、といいつつ台所の方へ向かおうとする。
その瞬間気が付いた。──麻耶はカップ持てないし、飲み物飲めないんじゃん?
「あ……」
更に気まずい空気が……といっても彼女には感情がないのだからそんなもの僕の一方的な感想でしかないのだが。
実際麻耶は、唐突に、さっきの僕の行動など無かったかのように話を始めた。
「……さっきの続き、だけど」
「え。おう、うん」
若干戸惑う僕。未だに彼女との距離感が取れていない。
「わたしだって、もちろん、はじめからこうだったわけじゃ……ない」
僕は大きく頷いた。
「普通に……人間だった」
それもなんだか変な話だなと、苦笑する。彼女は今自分が人間ではないとはっきり言ったのだ。
「感情も、体も、全部奪われた」




