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数分、あるいは数秒か――何もかもが静止したような不思議な間があいた。まああんな、酷い中二か、もしくは精神が狂ったかと疑われてしまうような発言をされたのだから仕方がないだろう。
しかしそんな僕をもっと混乱させるような言葉を麻耶は更に重ねた。
助けてほしい。
と。
簡単にいってしまえば、そういうことだ。
助ける──何から? はじめに浮かんだのはそれだった。からかわれているのかとも思った。
だけども、彼女の顔はどうしても冗談を言っている顔には見えない。見つけたときから微塵も変わらない無表情を貫き通している。それもここまでくるとなんだか薄ら寒い感じさえする。だが今のこの状況下だとそれも妙に緊迫した雰囲気を持たせるのだから不思議だ。
「助ける、って言ったって」
変にかすれた声になってしまった。口の中が乾き切ってしまってうまく喋れない。
彼女は一歩だけ前に出て訝しがる僕の前に、ゆっくりと自分の腕を突き出してきた。見るたびに思うけど、標準と比べて随分と細い腕である。
その先──白い指先は段々と僕に近づいて、そしてそれはとうとう僕に触れようというところで一度動きを止めた。
その意図の読めない行動に僕は疑問符を浮かべたが、つかの間に彼女は勢いよく、僕の方へ更に腕を突き出してきた。
……普通に考えれば、だ。威力の増したそれはある種の武器となって僕の鳩に衝撃を与えるはずだ。そして僕の痛覚はそこまで大きくは無いだろうが刺激され、僕は鈍痛と息苦しさに見舞われるだろう。
しかし、実際の僕の体には一切その感覚は無かった。もっというなら、何かに触れられている感覚すら全くしない。
「……?」
反射的に閉じてしまった目をゆっくり開ける。
「うわっ!?」
目を開けたときに見たのは信じがたい光景だった。
────手が、僕の体に突き刺さっていた。




