生徒会室
「待て、楢葉。行くな。」
クラスメートを押しのけ、教師の制止を無視して青いヌバッとしたゲル状の液体に近づいた。その手にはロッドが握られている。
「今度こそ暴発させないでよ。」
女性の声が聞こえる。彼もそれは分かっていた。が、できるかどうかは分からなかった。
緊張する。冷や汗が滴る。十分間合いを取って、ロッドを一振り。すると一閃の光が飛び出した。その光がゲルに当たる。当たった瞬間に魔弾は爆発した。ゲルは盛り上がっていたところから一気に後ろに弾け飛びぶちまけられた水のようになる。それが黒く変色し動かなくなった。
彼の緊張が解けた。教師はさすまたやほうきを持って駆け付けた。モンスターが現れてからおよそ五分。これを待っていたら間違いなく一人はやられていたかもしれない。
「楢葉…。」
駆け付けた教師の中に楢葉の元担任がいた。その教師が声を上げた。教師の目に焼き付いた光景はロッドを片手に立っている楢葉だった。それからしばらく沈黙が流れた。
「楢葉さん。」
知らない声が聞こえたので思わず構えてしまったが、その声の主は女子生徒だった。教師たちの間をかき分け淳司に近寄る。
「は、はい。」
構えていたせいで遅れてしまった返事をする。
「来て。」
現代文の教科担任をちらりと見るが硬直してしまいそれどころではなかった。彼は戸惑いながらもついていくことにした。何が起こるか分からない。収まりかけていた冷や汗がさっきより多く流れる。
(モンスターより怖いかも…。)
「座って待てて。」
連れてこられたのは職員室ではなく生徒会室。生徒が職員室に連れて行くのも変な話ではあるが…。女子生徒がさした椅子に座って待っていると奥からゾロゾロと4人の女子が現れた。
(生徒会のメンバーだよな、これ…。アニメみたいに吊し上げられたりするのか…?)
「自己紹介して。」
女子生徒は彼に言った。
「は、はい。楢葉淳司です。」
彼は目を閉じて深呼吸をする。心を落ち着ける。そして目を開ける。すると、美人だらけだった。アニメの世界を忠実に再現した世界がそこにあった。
「そ、それだけ!?」
一人の女子生徒が言った。
「ほ、他に何が…?」
彼は純粋に聞いてみた。
「ない…わね…。」
(ないのかよ…!)
「じゃ、次あたしたちね。あたしは三年A組の日向葵よ。ここの副会長ね。」
彼を連れてきた人が言った。黒髪で肩まで伸びる髪は見るからにさらさらしていた。まさに清純派だった。可愛いという表現より美しい感じがした。
「私は会計の御坂朱音よ。ちなみに三年C組よ。」
今にもレールガンを飛ばしそうな名前とは違い気の優しそうな顔をしている。茶髪の長い髪は左右等しく分けられたツインテールだった。
「あたし、書記の二宮遥希よ。」
これに黄色のリボンを足せばまさにあの人だった。制服が違うので無理だけど。少々背が低いせいかもしれない。
「同じく書記の水流魅麗よ。」
(この人だけ名前がすごい。)
黒縁メガネが可愛さを引き出し、すこし茶色の髪は腰まで伸びていた。それなのに結んでいないが、それも魅力の一つかもしれない。
「あれ…、会長は?」
副会長に会計に書記二人はいた。が、一番重要な会長がいなかった。
「ここに来るメンバーじゃない。」
遥希は答えた。どこか神経質そうだった。来た時からの仏頂面。可愛い顔が台無しになっている気がする。
「どういうこと?」
「あの娘、魔法使えないからね…。」
朱音が答えた。若干かすれたような声。遥希とは真逆で笑顔を絶やさなかった。
「ここに居るのはみんな魔女よ。」
魅麗がきっぱりと言った。いかにもできる女と言ったところだ。
「はあ…。」
(リアクションに困るなあ…。みんな電波系か…。)
人のことを言えた質じゃない。現に人に見えないとはいえロッドを担ぎ魔法を使ってしまった。おそらくそれが原因で生徒会室に連れてこられたのだろう。
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