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モンスター

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(戦えって言われてもなあ。誰か教えてくれないかな…。)

 高校二年になって早々、重荷ロッドを背負って自転車をこぐ。人に見られてないかすごく心配になってきた。今朝握られていた紐でロッドを括って背負っているがそれ以外のことをしていないため丸見えの可能性が高い。

「よう、楢葉。」

「おう祐貴。」

 結城祐貴。高校一年のころからの友達で読みは「ゆうきすけたか」。まちがっても「ゆうきゆうき」ではない。彼の親の遊び心丸出しの名前だ。ノリのいい人で、クラスでは人気があった。ノリについていけない淳司とは違う。そんな淳司にも合わせる器用で好い人だ。

「俺の背中、何かついてる?」

 淳司はさりげなく聞いてみた。

「いや、何も。どうして?」

「時々、弟にシール貼られてることがあってさ…。」

(済まない、浩司。)

 と、謝っても浩司にはあずかり知れないことだ。しかし、これで他人にロッドが見えていないことが分かった。これで少し楽になった。


 教室に行っても誰もロッドについて触れることはなかった。しかし、座り方に気を付けないと椅子にロッドが引っ掛かる。それで折れそうではないが何かと不自然だし不便だ。

「よし。ん、楢葉。」

(マズイ。見えてる…?)

「教科書はどうした。現代文だぞ。」

 机の上には古文の教科書が置かれていた。浮足立ってつい間違えてしまった。彼は慌てて古文の教科書を片付け、現代文を出した。

「すいません。」

「じゃあ、授業に入るぞ。」

(あれだけ視力よくて、ロッドのことをツッコまないなら大丈夫だな。)

 彼の席は一番後ろでその机に乗っているB5サイズの教科書が見えて、ロッドの赤い先が見えないはずがなかった。

「敵が近い。」

 女性の声が聞こえる。一瞬反応しそうになったが、それを抑えてノートの端につづった。

‘授業中に話し掛けないで’

「いいじゃん。他には聞こえてないんだから。」

‘でも、俺の声は聞こえるから。’

「来るよ!」

「ここで、ケイスケは…。マズイ。みんな壁に寄れ。職員室、二の五にモンスター侵入。」

 教師は授業を中断して、生徒に指示を出しつつ、職員室に連絡を取った。青い液体のような何かが廊下を流れてくる。ドアがひとりでに開く。ヌバーッと盛り上がる。クラスメートは窓側に逃げていく。彼もその流れに従う。

「ちょっと、何やってんの。早くいきなさい。」

(分かってるから待ってくれ。)

 今、独り言のように声を上げるわけにもいかず、ノートもないので女性の声は無視した。それから、彼は背中のロッドに手を回す。

ありがとうございました。

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