魔法って…
出してほしい魔法、技、武器…。何か出してほしいのもがあれば感想を書いてください。
彼は知らない間に眠りについていたようだ。もう夢の中。
「このロッドを拾ったのはあなたですね。」
微睡の中で女性の声が聞こえた。
「はい。」
彼は答えた。
「あなたが拾ったロッドは金のロッドですか?それとも銀のロッドですか?」
(どういうボケ…?)
「あの、自分から聞いておいてそのボケはないと思うのですが…。」
彼は思いつく限りのツッコミをしてみた。あまり漫才やコントは得意ではなかったので、結局人のボケを真顔でツッコむハメになった。
「あのさ…、真顔でツッコまないで。」
女性の声は冷ややかだった。
「すいません。」
彼は平謝りだった。
「まあ、いいわ。次はもっと面白くツッコみなさい。」
「ツンデレですか?」
今度は少し笑顔を作りながら言ってみた。
「そうそう、その感じ。」
女性は元の声に戻る。
「楽しい楽しい漫才はここまでにして本題。」
(ツッコむこっちはかなり神経使うし、そんなに楽しくないけどな…。)
事実、ツッコミがガサツすぎてトラブルを起こした覚えがあった。女性はそんなことを知らず、話を続ける。
「あなたは魔法を…。」
その言葉をさえぎって彼の母親の声が聞こえる。
「淳司―。ご飯よ。」
「ご飯って…、あなたどんなけ深く寝てたのよ!?ここに来たの3時だったよ?もう…8時じゃん!」
(それを言われても困る。)
彼は起き上がった。
(何だったんだ、今の夢…?)
彼は棒を布団に隠してダイニングに行く。すでに一家全員がそろっていた。彼は5人家族だ。
酒の飲まれるダメ人間の鏡、46歳の楢葉幸太郎。ドラマの恋にときめく48歳、楢葉瑞穂。色恋沙汰に疎い女子大生の楢葉沙月。永遠の弟、14歳の楢葉浩司。と、一家の中で影薄い楢葉淳司。ちなみに彼は17歳。
「ごめんごめん。寝てた。」
淳司は階段を下って行く。カレーのいい匂いがする。急いで席に着いた彼はテーブルの脚に足の小指をぶつけた。たまらなく痛かった。
「何やってんの?」
弟の浩司が真顔でツッコむ。
(なるほど…。真顔でツッコむな、か…。)
晩ご飯が終わると父、幸太郎はビール瓶を持ってくる。慌ててみんな自分の部屋に飛んでいく。母の瑞穂に至っては皿に洗剤が付いたままシンクの中に放り出す。淳司も自室に戻る。
「淳司ー。飲もうか。」
何処で手に入れたのかビールジョッキ二つ持って淳司を誘う。
「遠慮しとくよ。」
淳司はもちろん断るが幸太郎はあきらめなかった。幸太郎は淳司の部屋に否応なしに乗り込む。すでにアルコールが入ったようで見境がなくなってしまっている。ビールが注がれたジョッキを無理やり淳司に渡す。もう、飲むしかなくなった。
彼はジョッキを一気に傾けてビールを飲み干した。しかし彼は酔わない。彼は酒にめっぽう強い。一方の幸太郎は一口で泥酔状態になる。
「それぐらいにしておけ、親父。」
幸太郎もジョッキを傾けて飲み干し、ビールを注ごうとする。
「お前、いつからそんなに偉くなった?ええ!」
もう、ウンザリだ。酒が入るとすぐにこれ。見境以上に善悪の判断までできなくなる。感情のままになる。なら止めるな、とまわりは言うだろうが止めなかったら野獣と化してしまうため強くなる前に退治しておく。
「威張るな。みっともないぞ、…。」
続きを言おうとしたが、やめておいた。
「うるせえ。ヒック。お前なんか、一ひねりだ、ヒック。」
(もうつぶれてる。今日は楽しくなりそうだ。)
この喧嘩は彼の密やかな楽しみだ。幸太郎はビール瓶を振り回し始めた。
(やべえ、楽しむどころじゃなくなった…。)
喧嘩は日に日に過激になっていく。もしかしたら、命を落とすかもしれない。彼は布団の下に隠した棒のことを思い出した。彼は布団の下から棒を取り出した。両手で持つとちょうどいい長さだった。
「へっ。上等だ。喧嘩は酒の肴にちょうどいい。お前もそれが分かったか。」
幸太郎は嬉しそうな口ぶりだ。
「冗談きついぜ、親父。」
幸太郎は酒に飲まれ暴れだす。手に持ったビール瓶を振り回し始めた。
(今日は結構ガチだな。見切った。そこだ。)
一発。幸太郎の頭に棒を食らわせた、だけでよかったのに爆発を起こした。
ドーン。
ありがとうございました。