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【完結】不遇職の盾職人が神と崇められるまで~魔盾(まじゅん)は異世界のゲームチェンジャーとなる~  作者: テツみン
第二章 盾職人は異世界の起業家となる

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第59話 申し上げます――となる

 公開断罪は、断罪を仕掛けたブルームハルト侯爵が、実は悪党だったという幕引きで終わり、集まった貴族たちは大広間を去る。


 その後、この企てに参画したボクたちだけが大広間より小さな『謁見の間』に移動し、国王陛下へことの詳細を説明するのだった。


「さて、ディーノとやら。順を追って説明していただけるかな?」


 玉座に国王陛下。そのとなりにスチュワート殿下。

 玉座の前には、ブルズのメンバーに、ディーノさん。そして、ボクとアリシアがいた。


「それでは申し上げます、陛下」


 ディーノさんは帝国にいた頃から説明を始めた。


 彼は帝都でそれなりに名の通った冒険者だった。あるとき、男が彼に近寄り、王国への侵入調査をしてほしい――そう言ってきたそうだ。

 その人物は、帝国の諜報(ちょうほう)部員だと名乗り、侵入調査に協力したら破格の報酬を用意する――そう伝えたらしい。


 もちろん、ディーノさんはその話を信じることなく、即座に断る。しかし――


「その夜、行きつけの飲み屋で女性がひとり飲んでいたのを見かけ、声をかけたのです」


 彼女と意気投合したディーノさんは、酔った勢いで彼女の家に行ってしまう。そして、彼女とベッドインの瞬間、昼間に会った諜報部員の男が現れた。他にも、数人の腕の立ちそうな男たちが彼を囲んでいたそうだ。


「その女性は、帝国大公の愛人で、このことを大公閣下に知られたくなければ、昼間の依頼を受けろ――そう言われ、仕方なく私は王国へ潜り込んだのです」


 つまり、ベタなハニートラップにはまってしまった――ということだね。まあ、ディーノさんらしいと言えば、らしいけど……

 今から思えば、帝国大公という人物もグルだったのだろう――そう、ディーノさんは言う。


「王国にやってきて半年――やはり、帝国諜報部だという人物から『魔盾(まじゅん)の情報を盗み出せ――』という指示を受け、私はヒロトさんの工房で働くことになったのです」


 それで、ディーノさんは魔石に『魔物の敵意を引きつける魔法』を封じ込める方法や、魔盾の図面を書き写し、その男に渡してしまった。


「しかし、利用されるばかりでは悔しいですからね。私は姿を消せる魔法でその男を尾行したのです」


 姿の消せる魔法――アリシアも使っていた魔法だ。


「その人物が入っていたのが、ブルームハルト侯爵の屋敷だったのです」

 

 ディーノさんはそのまま屋敷にの中に侵入――いくら魔法で姿を消していたとしても、なんて大胆な――すると――


「中で、その男と会っていたのはブルームハルト侯爵と、私をワナにはめた『大公の愛人』というオンナだったのです」

「つまり、侯爵――いや、賊(ぞく)のブルウタスは帝国とつながっていたと――」

 スチュワート殿下がそうつぶやくと、ディーノさんは「そうかもしれません。あるいは……」と、最後は言葉を濁らす。


「あるいは?」


 陛下の確認に、「いえ、なんでも――」とディーノさんは応える。


 彼は、「何か帝国につながる証拠はないか――」と、そのまま屋敷を探ったらしい。そしたら、侯爵夫人にバッタリ出会ってしまう。


「ですが、侯爵夫人の様子がおかしかったのです」


 魔法によって状態異常に陥っているようだと感じたディーノさんは、彼女の状態異常を解除した。


「そして、侯爵夫人から話を聞いたのです」


 あるとき、夫人と先代の侯爵が外出した際、賊に襲われた。その時に何やら魔法をかけられ、それ以降、二人はブルウタスの言いなりなってしまった。

 夫人はブルウタスと婚姻を結ばれ、先代は彼に侯爵の地位をゆずると宣言させられる。


「その直後、先代は急病をわずらい、ひと月後他界。夫人は先代が殺されたと考えたようだが、状態異常のため、自分の考えを言葉に出せない――」


 ディーノさんに状態異常を解除してもらったのだが、ヘタに騒ぐと先代のように殺されかねないと考えた夫人は、状態異常のフリをして、ディーノさんとふたりでブルウタスたちを陥れる機会をねらっていた――ということらしい。


「そんなときに、ヒロトさんたちに捕まりましてね。ここは、共闘してブルームハルト侯爵――ブルウタスを陥れようと、本日のような策となったわけです」


 公開断罪をブルウタスにけしかけ、たくさんの人が見守る中、自分の正体をバラされる。まさか、自分が開いた公開断罪が自分のためだったなんて、本人は微塵(みじん)も思っていなかっただろう。


「ふむう……先代のブルームハルト侯爵とは旧知の仲だったのだが、まさか、帝国がそこまでしてくるとは――」

 

 悔しそうな表情を見せる陛下に、ディーノさんは「いえ、これが帝国、ましては皇帝が関わっているかはわかりません」と伝える。


「ディーノ、どういうことか?」

 スチュワート殿下がたずねると――


「私が帝国にいたころに聞いたウワサなのですが、帝国、王国、どちらにも属さない、召喚人(しょうかんびと)の組織があり、魔族や魔物と戦わず、女神から得たスキルと私利私欲のために使っている輩が存在すると――」


 召喚人は帝都、王都、いずれかの大教会に召喚される――女神アスタリアから、そういう宣託があったようだ。

 以降、召喚人は帝国、王国どちらかに属することになった。しかし、行方不明となる召喚人はあとを絶たない。中には、魔物との戦いで亡くなった者もいるだろう。しかし、自らの意志で姿をくらました者がいるらしいということ。そして、自分の『スキル』を悪用し、私服をこらしている――そういう召喚人がいても不思議ではない。


「たとえば、先代ブルームハルト侯爵と侯爵夫人は、誰かから状態異常の魔法をかけらていたわけです。その術士が召喚人だったとしたら?」


 魔法が使える現地人もいるが、状態異常の魔法は闇魔法――つまり、魔族が得意とする魔法である。

 もちろん、魔族が関わっている可能性もあるが、魔族の容姿では人間の世界に紛れるのが難しい。つまり、闇魔法のスキルを得た召喚人のほうが現実的だ。


「そして、私を騙(だま)した『大公の愛人』だというオンナ。アレは召喚人です」


 ディーノさんがこの世界に召喚された当初、そのオンナと冒険者ギルドで会ったことがあるそうだ。


「その当時とはずいぶん印象が違ってましたが、間違いないです。まあ、私も今とは容姿が大きく違っていたので、オンナも私とは気がつかなかったようですが――」


「ディーノさんも容姿が違っていた?」

「はい、召喚された当時は太っていて、髪ももっと伸ばして、生気のない顔をしていましたから」


 人見知りが激しく、人から声をかけられるのが苦手だったらしい――それから一年ほどで、ここまで陽気な性格に変わったのだとか――


「つまり、そのオンナも帝国の組織から外れ、『闇』に下った人物だと――」


 スチュワート殿下の質問に、ディーノさんはうなずいた。


「そして、流出した『魔盾(まじゅん)』の情報は帝国ではなく、その闇組織に渡ったと考えるべきです」


 全員が黙り込む。

 現在、王国は魔族と戦っている。帝国とは停戦状態だが、それがいつ破られるかわからない。このうえ、闇組織と相まみえるとなると、戦力をどのように振り分ければイイのかわからない。


「ここまでの話はわかった。それでスチュワート、余に提案があるのだろ?」


 そう。実はココに陛下をお呼びしたのは、ある提案をしたかったからなのだ。スチュワート殿下には、ムリな話を受けてもらって、本当に申し訳ない。


「はい陛下――それでは、提案者であるヒロト・ニジカワから説明をお願いする」


 ボクは生唾を飲み込むと二、三歩、前へ歩み寄り、再びひざまずいた。


 そして、第一声でこうお願いした。


「陛下、恐れながら申し上げます。帝国と和平交渉を行いましょう!」

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