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【完結】不遇職の盾職人が神と崇められるまで~魔盾(まじゅん)は異世界のゲームチェンジャーとなる~  作者: テツみン
第二章 盾職人は異世界の起業家となる

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第57話 『鑑定!』となる

 ブルームハルト侯爵は、国王陛下、スチュワート殿下、ならびに王国貴族がいる前で、魔族が王宮の敷地内に入り込んだという重大問題があったと声高らかに言い放った。


 その言葉に、出席者がざわつく。


 現在、王国は魔族の侵攻におびやかされている。数週間前に、一年以上魔族に占拠されていた王国領、フーベル地方を奪還し、やっと反転攻勢の機運が高まってきた。そんなとき、王国で最も不可侵でならなければいけない王宮の敷地に魔族が入り込んでいたとなれば、たしかに大問題だ。


「侯爵、詳しく説明したまえ」


 国王の言葉に、ブルームハルト侯爵はニヤリとする。


「こちらにいる二人、ヒロト・ニジカワとアリシア・リンは名人(マイスター)の称号を賜り、王宮の敷地内に工房を構えるという名誉も国王陛下より与えられました。しかし! この二人はその地位を利用し、魔族を王宮へ引き入れ、王国の情報を売り渡そうとしていたのですよ!」


「おおっ!」というざわめきの中、ボクたちは冷たい視線を感じる。


「侯爵、貴公の言いぶんはわかった。しかし、彼らが魔族を引き入れたという証拠はあるのかな?」


 陛下の質問に、侯爵は「フ、フ……」と含み笑いをする。


「もちろんです、陛下。おい! 例のオンナをつれてこい!」


 すると、奥の扉が開き、赤毛の少女が入場してきた。


「メルダさん!」

「ヒロトさん! アリシアさん!」


 メルダさんはボクたちに気づくと驚いた表情を見せる。

 そのまま、ボクたちの横まで連れてこられ、ムリヤリひざまずくようにカラダを押した。


「メルダさん、大丈夫? ひどい目に遭(あ)っていなかった?」


 まだ、状況が理解できていないという顔のまま、「はい――」と彼女は応える。


「それよりも、これはいったい――」


 ボクは、「なあに、すぐ終わる」とニッコリ笑った。


「それより、あのことは絶対に言わないで」と念を押す。


「ヒロトさん……」



「さて、このオンナ。なぜ、このようなあさましい赤い髪をしているのか? それは、このオンナが魔族であるからなのです!」


 再び、出席者がざわめく。


「このオンナは、ひと月前まで帝国にいました。そう! 魔族だけでなく、帝国ともかかわりがあるのです! そして、ここにいるヒロト・ニジカワたちと結託し、魔族と帝国へ情報を売っていたのですよ!」


「なんてことだ――」

「この売国奴め――」


 そんなささやきが聞こえてくると、侯爵の勢いは増してくる。ついには――


「そうなんですよ! しかし、考えてみてください! このヒロト・ニジカワとアリシア・リンに名人(マイスター)の称号を与えたのは、国王陛下御本人なのですよ!」


 ボクは「くっ――」と歯を食いしばる。よりによって、陛下まではずかしめるような言い方をするなんて――


「あのとき、ヨハネディクト枢機卿(すうききょう)が異議を唱えました。『亜人』に準貴族の称号を与えるのは王国の権威を損ねると――しかし、陛下は枢機卿の意見を跳ね除けました。それがこのような事態を招いたと思いませんか?』


 侯爵はヨハネディクト枢機卿の名をあげると、全員、その場に居合わせている枢機卿のほうを向く。純白の祭服をまとった男性は薄ら笑みを浮かべていた。


「あまつさえ、王宮にこのような輩を住まわすとは――陛下、大変申し上げにくいのですが、その責任、いかがと思われますか?」


 出席者の一部から「クスクス――」と笑いが漏れる。


 魔族が王国領へ侵攻してきて以降、陛下は「考えを変えねば、国は滅ぶ」と、帝国敵視論や、亜人蔑視をやめるように国民へ言い続けた。それが、一部貴族の反感を呼んでいるという。フーベル地方を奪還したという気のゆるみから、陛下の「国を変える」という思いを軽視するようになったのも、残念ながら起きていた――


 侯爵はそういった者を煽(あお)り、陛下の発言力を削ごうという考えなんだ。


「くそ……」とボクはつぶやいてしまう。


「侯爵の懸念はよくわかった。たしかに、貴公の申していることが事実なら、余の責任は重い。しかし、この者が魔族であるという証拠はあるのかな? 余が聞いた話では、まだ、この者は自分が魔族だと認めていないと聞いておるのだが?」


 そう、まだメルダさんは自分を魔族だと認めてない。ボクが彼女にそう頼んだからだ。

 一度、魔族だと認めてしまうと、それを覆(くつがえ)すのは難しい。だから、絶対に認めてはいけない――そう、彼女に伝えた。


 だが、侯爵は「フ、フ、フ――」と不気味な笑い声をあげると――


「それでは、その証拠をココにいる全員にお見せしましょう! おい! あの者を連れてきなさい」


 すると、ある人物が大広間に入ってきて、ボクたちの前に立った。


「紹介しよう! 召喚人(しょうかんびと)のキムだ。彼は鑑定士である」



 召喚人はこの世界へ召喚されたとき、女神から職(ジョブ)に合うスキルをひとつ与えられる。

 だいたいは戦闘職や生産職だが、なかにはめずらしい職を求める者もいた。

 彼のジョブは鑑定士――つまり、あらゆるモノの本質を見ることができるスキル、『鑑定』を使い、それを仕事としているのだ。


「彼にかかれば、このオンナの種族なんぞ簡単にわかります。もはや、彼女の自供など必要ありません!」


 侯爵が勝ちほこったように言い放つと、陛下も「うーむ……」とうなる。


 ボクも「くっ――」と、くやしさをあらわにした。


「そ、そんな……」

 メルダさんの顔が蒼白《そうはく》となり呆然(ぼうぜん)としている――が、アリシアは「大丈夫ですよ」と、そっと声をかけた。


「――えっ?」

 メルダさんは、ビックリした顔でアリシアを見る。アリシアはニッコリとした。


「さあキムよ! このオンナの種族を『鑑定』するのだ!」


 侯爵の声に、キムさんは「承知いたしました」と応える。


「鑑定!」

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