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【完結】不遇職の盾職人が神と崇められるまで~魔盾(まじゅん)は異世界のゲームチェンジャーとなる~  作者: テツみン
第二章 盾職人は異世界の起業家となる

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第50話 仲直りとなる

 翌朝、アリシアと一度も話さないまま、食事を終えてしまった。


 本当にボクは何をやっているのだろう。アリシアがディーノさんと仲良くしているのを勝手に嫉妬して、イライラして――

 自分がこんなになさけない男だったなんて、思ってもいなかった。


 そうなふうに一人でウジウジしていると、メルダさんが声をかけてきた。


「もしかして、私と食事をするのが嫌でしたら、そのう、私は別で食べることにしますので――」

「――えっ?」


 メルダさんが住み込みで働くようになって一週間。それから、日に日にボクが不機嫌になっていくので、どうやら自分のせいだと彼女は勘違いしてしまったようだ。


「そ、そんなことは全然ないから! どうか気にしないでください!」


 慌てて、ボクは否定する。


「そうですか……それならいいのですが」


 メルダさんは一応、納得はしてくれたのだけど、まだ少し疑っているようで、浮かなない顔のままだった。


 それでボクは再び落ち込んでしまう。工房の代表として、仲間が働きやすいような職場を作らなければならないのに、自分から不穏な空気を作ってしまうなんて――



「よう、ヒロト! ひさしぶり!」

「アーノルドさん!」


 王国の双璧と言われるトップクラス勇者パーティのひとつ、『ブルズ』のメンバーであり、昔からのお得意さんであるアーノルドさんが現れた。彼がフーベル地方奪還から戻ってきて、凱旋(がいせん)式典で会って以来だから、実に一カ月ぶりだ。


 ボクにお客さんが来たので、メルダさんは一礼して離れる。それを、アーノルドさんがじーっと見ていた。


「どうしました?」

「ん? いや、ちょっと……彼女は?」


 ボクはメルダさんを発注、会計で雇ったと説明する。


「そうか……」とアーノルドさんの顔がなにか考え込んでいるように見えたので、「なんか気になることでも?」とたずねた。


「いや、彼女の髪の色が――ね」

「髪の色?」


 たしかに、メルダさんの真っ赤な髪は珍しい。


「実はな――」


 そう言って、アーノルドさんはある話をした。


 フーベル地方奪還作戦で魔族と戦ったのだが――


「魔族軍の兵士は、炎のような赤い髪だったんだ」


 あまりにも強烈すぎて記憶に残っているのだとか――


「それって、メルダさんの髪と――」


 アーノルドさんはうなずく。


「……まあ、たまたまだと思うけどな」


 彼はそう言うのだけど、なんか気になってしまった。


 彼女は『帝国で仕事をしていた――』以外、なにも話してくれなかった……

 そのことと関係あるとしたら?

 まあ、それは後で考えることにして――


「それにしても、どうしたんですか? こんなに朝早く――」

「そうそう。頼まれた物を少しでも早く持ってきてあげようと、急いでやってきたんだ」


 頼まれていた物?


「それって、もしかして――」

「おうよ!」


 そう言うと、彼は担(かつ)いでいた大きな麻袋を下ろした。その口を広げると――


 金属なのだが、無色透明ではないかというくらい、見事な輝き――


「こ、これが――」

「金剛鋼(アダマンタイト)だ!」


 ダイヤモンドの輝きと硬さを持つ最高峰の金属。それがアダマンタイト。

 希少性もさることながら、加工できる職人も限られている。


 ボクは盾職人のレベルが七十九に達したとき、アダマンタイトの加工スキルも手に入れた。もちろん、アダマンタイトのインゴットを手に入れていなかったので、まだ一度もそのスキルを使用したことがなかったのだけど――


 しかし、これで――


「これはこれは、アーノルドさんではないですか!」


 工房にやってきたディーノさんがアーノルドさんを見つけ、そう声をかけてきた。


「おう、ディーノ! オマエ、本当にヒロトの工房で働いているんだな!」


 アーノルドさんとディーノさんは、先のフーベル地方奪還作戦で、ケルベロス討伐メンバーとしてともに戦ったメンバーだったそうだ。


「話には聞いていたけど、バリバリの冒険者だったオマエが工房で働くなんてな! ヒロトに迷惑をかけてないか?」


 アーノルドさんがふざけて言うと――


「まだまだ勉強中ですが、毎日が楽しくてしかたありません。どうやら、冒険者より生産職のほうが私に合っているみたいですよ」


 と、ディーノさんも言い返す。


「アーノルドさん、お久しぶりです!」


 アリシアの声が聞こえて、ボクはドキッとする。


「おう、お久しぶり! アリシアも元気だったか?」

「はい!」と笑顔で応えるアリシアなのだけど、ボクは彼女と視線を合わせられない。


「それでは、後ほど」とアリシアが離れると――


「ヒロト、ちょっといいかな?」


 そう言って、アーノルドさんはボクを工房の外に連れ出した。


「アリシアと何があったのか?」

「――えっ?」


 アーノルドさんの《《ぶっとい》》腕をボクの首にからめ、顔を近づける。

 ボクとアリシアの雰囲気がおかしいと思ったらしい。アーノルドさん、豪快な性格なので勘違いしてしまうのだけど、けっこう、他人のことをしっかり見ているんだよなあ――


「はあ……」とボクはため息をついたあと、彼に全部話した。


 すると、「ハ、ハ、ハ!」と大声で笑われてしまう。


「ちょっと、こっちは本気で悩んでいるんだから」

「いや、悪い悪い。まあ、たしかにディーノは女に声をかけなければ気が済まない性格だからな」


 フーベル地方遠征のときも、騎士団の女騎士や、勇者パーティー『ブルズ』の女魔導士、エレーナさんに声をかけまくっていたそうだ。


「エレーナさんにも⁉」

「ああ、しつこいくらいにな。エレーナなんか、ヤツの頭を杖で二、三発、殴ってたよ」

「ハ、ハ、ハ……」


「だから、気にするな。それにな、女性というのは気になっている異性の話を人前では絶対にしないものだ」

「そ、そうなんですか?」

「ああ、そうだ。そして断言する! アリシアはオマエにゾッコンだ」

「――えっ?」


 いきなり、そんなことを言われ、ボクは顔が熱くなるのを感じた。


「だけどな、こういった勘違い、すれ違いが続くと、あっという間に関係の修復ができなくなるぞ。女性はな、不安定な関係というのを一番嫌うんだ」

「は、はあ――」

「はあ――じゃねえ! さあ、今からすぐ、アリシアのところに行って謝ってこい!」

「――えっ?」


 い、今からすぐぅ⁉


「いや、ちょ、ちょっと、心の準備が――」

「バカ! 何を言っている! そう言って、先延ばしにしているのが一番良くないんだって! よし、わかった!」


 アーノルドさんはボクから離れ工房の入口へ向かった。


「えっ? アーノルドさん?」


 ボクも彼の後をついて、中に入ろうとしたのだけど、「ヒロトはそこから動くな!」と言われる。


 仕方なく外で待っていると入口が開く。現れたのは――


「あのう、アーノルドさんに言われてきたのですが――」

「ア、アリシア⁉」


 そう、アリシアだった。

 いきなりのことで、ボクは混乱した。


「ヒロトさんが言いたいことがあるらしい――そうお聞きしたのですが――」

「えっ? いや、えーと――」


 どうしようか、ボクは迷ってしまう――いや、何を言っている!

 ここで、ちゃんと謝らなければ――


「アリシア、実は――」


 ボクはディーノさんに嫉妬していたことを包み隠さず彼女に話して、頭を下げた。


「そのう――ゴメン。そんなことで、アリシアに嫌な思いをさせてしまって――」


 すると、彼女は「フ、フ、フ――」と笑う。


「そうだったんですね。私はてっきり、嫌われるようなことをなにかしてしまったのかと心配してました。ですけど、そうですね。仕事中に笑い声を上げるなんて、不謹慎ですよね。これから、ディーノさんと仕事以外の話はしないようにします」

「――えっ?」


 いや、そこまでは――とボクは言うのだけど――


「いえ、みなさんの仕事に影響があってはいけません。以後、気を付けたいと思います」


 そう応えるアリシア。「それじゃ、仕事場に戻りましょ?」と言われる。


「あ、あの、アリシア――」

「はい、なんでしょう?」

「これからも、よろしくお願いします!」


 ボクが頭を下げると、彼女は満面の笑顔になった。


「はい!」

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