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ルール

 

 うちの母はどうやら多少のことでは驚かない図太い神経を持っていたらしい。

 

「この人たち、行く場所無いんだけどうちに置いても良い?」

 拾ってきた猫を飼ってもいいかと訊くように母に訊ねれば「かおるがちゃんと世話するならいいよ」という答えがあっさりと返ってきた。


「お前の母さんすげぇな」

「うん。私も驚いてるよ」

 確かに昔から、友達十人くらい連れて泊まっても何一つ文句言わない母だった。けれど、こんなにも平均年齢の高い男女を連れ込んで何も言われないとは思わなかった。

「ってかさ、あの四人のお陰でだいぶ平均年齢高いよね」

「ああ」

 悪友トリオと魔女を指して言うとアラストルは納得したように頷く。

「あ、先に言っておくけど一人一部屋なんて甘い夢は見ないでよね。雑魚寝だよ。リビングで」

 にっこりと笑って言うとジルとミカエラは明らかに嫌そうな顔をしたし、瑠璃は「外で寝かせてくれ」などと言う。ウラーノに至っては「雑魚寝」の意味すらわかっていないようだった。

「流石にここで11人はきついだろ」

「やっぱり? 玻璃、私の部屋においでよ。ベッド貸してあげる」

「いいの?」

「うん。可愛い子には親切にしなきゃ」

 だって玻璃可愛いもん。と言うと他の奴らが不服そうな顔をする。

「一人減っても……」

「あと10人だ」

 まぁ、確かに。

「仕方ない。父さんの部屋、使う? 普段居ないから大丈夫だと思う。ベッドは治療用のしかないけど」

「治療用?」

 メディシナが反応する。

「えっと、父さん、単身赴任なんだけどさ、昔武術整体やってたんだ」

「へぇ」

 メディシナは興味深いといった表情をする。

「で? 誰がその部屋を使うんです?」

「そりゃあ勿論、女性優先」

 そう告げるとメディシナはあからさまにがっかりした表情をする。

 だって六畳しかないし。

「瑠璃と朔夜とミカエラと魔女の四人だって結構厳しいと思うよ?」

「玻璃はお前の部屋決定なんだな」

 アラストルの呆れた声。

「当然。玻璃、夜更かしして朝まで怪談しようね」

「うん」

「どこのガキだ。お泊り会かよ」

「あーそれ懐かしい。ってかクレッシェンテにもそういうのあるんだ」

「田舎にはな」

「アラストルも参加したの?」

「ああ。記憶が薄れるほど昔にな」

 そういやこの人三十済んでた。

 時々忘れるほど若々しいと言うか、外国人というのは実年齢より若く見えるらしい。

「まぁいい。とりあえず男共はここで雑魚寝。女性人は父さんの部屋ね。お客さん用の布団が二組だけあるからそれと治療用のベッド使えば三人は何とかなるね」

「あれ? 玻璃は?」

「私のベッド」

「お前は?」

「お昼寝布団があるからそれで」

 悪いな。と瑠璃が言う。


「で、男共だけど、毛布とクッションならあるからそれは勝手に使って良いよ。あとソファかな? 三人掛けが二つだからアラストルやメディシナが使っても大丈夫だと思う」

 メディシナも結構大きい。一八五センチ以上はあると思う。だって前に見たバスケの選手よりは大きい。

「二つしかねぇぞ」

「仲良く使って。じゃんけんでも阿弥陀でもいいからさ」

「じゃんけん?あみだ?」

「知らないんだ……」

 クレッシェンテに阿弥陀が無いことは予想は出来たけどじゃんけんが無いのは意外だった。

「じゃあ、スペード、決め方は任せる。いかさまでも腕相撲でもなんでもいいから任せた」

「酷いですね。僕に全責任を押し付けるつもりですか?」

「外に行ってもいいよ? まだ秋だから凍死はしないだろうけど……冬は悲惨だね。北海道だし」

 氷点下を体感しろ。そう視線で告げるとスペードは深い溜息を吐いた。


「全員集合。ここでのルールを発表する。一度で頭に叩き込め。守らない奴は食事抜きだ」

 既に半分寝ている玻璃を引きずって今に集合させる。

「で? ルールとやらはどのようなものですか?」

「うーん。まず、武器の持ち歩きは禁止。殺しは絶対ダメ。賭け事も禁止、麻薬は論外、あと、その変な格好で外に出るな。民族衣装で出歩く奴はまずい無いと思ってくれても間違いではないはず。ってかさぁ! なんでクレッシェンテは各国の民族衣装の展覧会みたいにいろんな衣装混ざってるんだ?」

 スペードは中華風だし、朔夜とセシリオはアラビア風、ウラーノは中世ヨーロッパみたいだし、ジルやアラストルはファンタジック。それに魔女に至っては何系でもない。瑠璃と玻璃が普通に出歩いて違和感が無い衣装なのがせめてもの救いだ。

 ミカエラは……似合ってるんだけど……

「軍服?」

「騎士団看守部の正装だ」

「へぇ……ジルのは?」

「宮廷騎士の正装だよ」

「アラストル」

「……略装だ」

 へぇ……色々あるんだ……

「メディシナは……医療行為は出来ないってことで」

「何でだよ」

「こっちの医師免許持ってないから」

「はぁ?」

「患者もいないと思うけど」

 そう告げればメディシナ自身も納得したようだ。


「あと、お前ら……バイトしろ。ってかしてください。お願いします」

 経済問題だ。食費と衣服。あと光熱費と水道代……無理だ。我が家の経済状況じゃ絶対!


「お前は何の仕事をしてるんだ?」

 メディシナに訊かれた。

「学生。で、バイト探してる最中に向こうに流された」

 ってか飛ばされた?

「明日、アルバイト情報誌買って来るからそれまで大人しくしていてください」

 そう言ったころに玻璃は眠りの世界に旅立っていた。

 結局頷いたのは瑠璃とミカエラだけ……。


 先が思いやられるとしか言いようが無い。


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