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灰色の空と、金の狼  作者: 灯薄
【始動編】
1/14

プロローグ



いつからだろう。



私の中で、『卑怯』という言葉がとても大切になったのは。



私の、幼い頃の記憶は断片的だ。

正確に言うと、ほとんど覚えていない。

罅割れた写真のような思い出の中、その言葉だけは何故か覚えていた。





『私達は、卑怯だ』





誰が、いつ、どうして言ったものかは分からない。

父がいて、母がいて、他にも、大勢の人達がいた。

自分がどのような立場の人間だったかは覚えていない。


温かい想いと、冷たい決意。


それだけが僅かに、頭の中に残っているだけだ。


その時私の心の中に侵入した『卑怯(それ)』は、だんだん変化していった。


穏やかな川の中の石のように、ゆっくりゆっくり時間をかけて形が整えられていって、それはいつのまにか手放せないものになっていた。


宝石を失った指輪のように、何故か捨てられないもの。

何の役にも立たない気がするのに、時々ふと思い出しては取り出して眺めてしまうもの。


不完全なままで、完成している。


そういう認識が、心の底にあった。

鬱陶しいだとか、邪魔だとか思わないわけでもないのだが、何となく安心できるような気がして。

いつも存在は感じているけれど、特別意識もしない。

いうなれば、秋の日の風のような爽やかさすら持っていて、でも寂しさを滲ませるもの。



卑怯(それ)』は着実に、私の中に住み着いていった。



人は、誰もが歪さを抱えているのだろうか。


その問いに、答える人はいない。

この問いに、答えられる人はいない。


何も分からないまま、彷徨い続けていた。






そして今、私は、灰色の世界を生きている。




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