柚希視点
家の前で手を振る和真を背にしながら
柚希は、大学に向かって歩き出した。
(今日もダンジョン行くんだよね…あの顔、絶対嬉しそうだった)
大学へ向かう道で、自然に小さく息をがこぼれた
心配じゃあないわけが無い。
昨日だって、あんなに疲れた顔色してた。
無理してないって言ってた時の笑顔どこかぎこちなかった。
小学生の頃からずっとそうだった。
転んで膝をすりむいても「平気」って言う。
頭を打っても「大丈夫」って笑う。
でも、帰り道で痛そうに歩くのを、柚希はいつも黙って横で見守ってきた
(そんなの、心配するに決まってる)
それでも、胸の奥がほんのり温かくなる。
和真が、夢に向かって動いてる姿を見るのが、嬉しい。その姿が好きだった。
幼馴染としてだけではないことを自分では分かってる。
ただ、それを言葉にしたら何かが壊れそうで、
ずっと心の中にしまっているだけ。
「…でも、無茶しないって言ってたし)
小さく微笑む。信じてるからこそ、不安にもなる。不安になるくらい、和真が大事。
和真ならきっと強くなれる。
そう信じてるから応援したい
背中を押してあげたいと思ってしまう。
(今日も、無事に帰ってきますように)
心の中でそっと祈る。それは幼なじみとしての気持ちも、恋する女の子の気持ちも、どちらも本物だった
坂の途中で立ち止まり、柚希は空を見上げる
「がんばれ、和真」
その一言に、彼への想いが詰まっていた




