幼馴染
探索を終え、興奮と疲労がまだ少し残るまま家に帰ると、ちょうど隣の家から玄関の扉が開いた。
「あ、和真。おかえり」
隣を見ると、蒼井柚季が立っていた
肩に触れるくらいの黒髪が外側にふわりと跳ね、夕日の光で焦げ茶の瞳が少し明るく見える。白いカーディガンに黒のスキニーという、落ち着いた大学生らしい格好だ。
柚季は小柄だが姿勢が良くて、静かに立っているだけで絵になる。俺の、小学校からの幼馴染だ。
今はどこか心配そうに眉を寄せていた。
「今日帰り遅かったね。ダンジョンいってたの?」
「うん、まぁ。今日はちょっと長めに潜ってた」
そう答えると、柚季は視線を足元から頭の先までじっくりと見てくる。
昔から、なんでもすぐ気づくタイプだ。
「ふーん…顔、少し疲れてるね。無理してない?」
「大丈夫大丈夫、慣れてきたし」
俺が軽く笑って返すと、柚季は小さくため息をつく。
「油断した時が一番危ないんだよ!ダンジョンじゃあ何が起こるかわからないんだし」
言いながらも、その声は責めるより心配の方が強い。昔から変わらない、優しいまま。
「まぁ、無事ならそれでいいや。怪我したら言ってね。手当ぐらいするから」
そう言って微笑む。
普段はクールなのに、表情が柔らかくなる笑顔、それがずるいと思う。
「じゃあ、私課題あるから戻るね、またね」
軽く手を振って家に戻る柚希
帰り際、一言だけ。
「ほんと、無茶だけはしないでよ」
その声が、いつも以上に胸に響いた気がした。
小学生からの幼馴染みで、隣の家に住んでいて、俺が探索者を目指すって決めたとき誰より心配し応援してくれた相手。
(無茶だけは、しないで、か)
今日もダンジョンでボブゴブリン死にかけた。
もしあの血晶兎が通常個体より強かったら。
先日母にも同じように心配された。
和真は、心に一つの決意をした。
絶対生きて帰る。どれだけ強くなっても無茶はしない!そう、心に刻んだ。
翌朝
今日は、今までダンジョンには、ジャージで行っていたが、お金がある程度貯まったので防具を、買ってからダンジョンに行くことにした。
和真は、着替え行く準備をし、玄関を出た。
ちょうどそのタイミングで、隣の家の幼馴染の柚希が家から出てきた。
肩まで伸びた柔らかい黒髪に、控えめなメイク。
「おはよ、和真。今日もダンジョン行くんでしょ?」
「行くよ、でも今日はいつまでもジャージだと不味いから防具買いに行ってから行こうと思って」
「ほんと無茶しないでよ。昨日帰ってきた時顔色悪かったんだから」
「そう見えた?」
「見えるよ、幼なじみ歴何年だと思ってるの。心配してたんだからね?」
柚希は、大学に行く前に、こちらに振り帰り、
じっと和真の目を見る。
「今日もちゃんと帰ってきて、じゃないと怒るから」
「わかった、帰ったら報告する」
柚希が去って行くのを見送り和真は、ダンジョン専門のお店に向かった。




