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一炊夢  作者: 納豆ご飯
第1章 虚と死蝋
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幕間



 ピッ、ピッ、と規則的な間隔で鳴る機械音。

 点滴台に挟まれた白いベッドの上で、僕は何をするでもなく、細い管がいくつも繋がっている己の手を眺めていた。

 途端、静寂を壊すように鳴った、金属の軋む音。その音は、薬品の匂いに充たされた病室に変化を訪れさせた。

 無意識に音のした方を見る。

 そこには、鉄扉を開いた張本人……呆然と僕を見つめる、友人の姿があった。

「次郎……」

 僕は咄嗟に、彼の名を口に出していた。

 彼はまだ何も言わない。病室にゆっくりとした足音を刻み、僕のいるベッドの前で足を止めた。

 次郎の目は、僕を真っ直ぐに捉えていた。僕には彼のその瞳が、心なしか涙で歪んでいるように見えた。

 気まずくなって、僕は咄嗟に目を逸らす。

孝史(タケシ)

 僕を呼ぶ彼の声が、停滞した空気を打ち破った。

「お前は絶対に死なせない」

 堪え難きを堪えるような表情で次郎が言う。

 普段は感情を見せない彼がそんな顔をするものだから、目頭がどんどん熱くなっていった。

 ()()()()()()が、走馬灯のように頭を過ぎる。

 僕に差し伸べられた彼の手。

「生きよう、孝史。俺と一緒に」

 目の前の親友は、力強い眼差しでそう言う。

 でも、僕は彼の手を取ることができなかった。

 無機質に鳴り続ける機械音。底なしの空虚と喪失感だけが、病室に漂っていた。



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