第8話 アリーナ、ルークに打ち明ける
「なるほど……アリーナ様はあいつらへの復讐にスタンピードを利用しようと考えているんだな」
二人に復讐をしたいと言って大泣きした後、やっと落ち着きを取り戻したアリーナは「……したいことっていうのは、もしかして二人への復讐か?」というルークからの言葉に、前世の記憶が甦って以降、一人で密かに立てていた計画を打ち明けた。
子どものようにルークの腕の中で泣いていたことへの恥ずかしさに、まだ胸がドキドキしているアリーナとは違い、ルークは真剣な面持ちで打ち明けられた計画を反芻している。
「……悪くはない。その計画なら、あいつらのお株を奪い、評判を貶めることができる。ただ……現時点で、懸念点が三つあるな」
そう言って、思考を終えたルークはアリーナの顔を見つめてきた。吸い込まれるようなルークの瞳に、アリーナの胸がまた跳ねる。
「一つ目は、どうやってスタンピードの発生を予期するかだ。正直、"ここら辺では見ない魔物を見る"という証言程度では、スタンピードが起こる証拠としては弱い。実際に魔の森に入って、魔物の様子を確認できたらいいんだが……」
想定していたものの、案の定出てきたルークの疑問に、アリーナはビクリとする。
ギフトというものが転生者にとって大きな武器であることを、二人への復讐の計画を立てていたこの数週間でアリーナは痛いほど理解していた。そして、それを他人に知られることのリスクも……
ただ、アリーナはこの計画を打ち明けた時点で、自身のギフトについてルークに話す覚悟を決めていた。
「……それについては多分、大丈夫。実は……私のギフトは、千里眼なの」
アリーナの言葉に、ルークは目を見開く。同時に、ルークはどこかホッとしたような、柔らかな表情を見せた。
「……そうか……アリーナ様のギフトは千里眼か……それは、良かった……なるほど。それで、この軽装でここまで来ていたというわけか」
そして、ルークはこれまでのアリーナの行動に納得がいったといった様に頷く。
「これからの話は"スタンピードが起こる"という前提で話すことになる。早速ではあるんだが、善は急げだ。アリーナ様、今から魔の森を千里眼で見てみて、見えたものを教えてくれるか」
ルークの言葉に、アリーナはコクリと頷いてみせる。
そして、ルークに見守られる中、魔の森を視界に捉えたアリーナは千里眼を発動させた。