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第5話 アリーナ、魔の森の異変を知る

 前世と同様、エイトは美味しいところだけ持っていって、煩わしい仕事は全てアリーナに押し付けていた。


 その一つに、領地を巡って領民たちの声を聞くというものがあった。


 日々の何でもないちょっとした気付きから、この地を治めるアリーナ達への不満に至るまで、どんなことでも領民たちの話を受け止め、事が大きくなる前に対処する。


 最近は千里眼の力を少し使って、()()()()()()対処できるようになっていた。


 そして今回は、魔王城とこの領の境に位置する魔の森にほど近く、屋敷のある領都から馬車で三日かかる、国境の街・ディーリンガムにアリーナは来ていた。


 魔王はエイト達に滅ぼされたものの、統率を失った魔物達がいつ人々を襲いに来るか分からない。

 特に、魔の森は魔王城に近いことから、国内でも最も警戒すべき場所だった。


 そして、これこそがエイトとアリーナが結婚した理由でもある。


 エイトとアリーナの結婚は、辺境伯という地位と肩書きにエイトの自尊心を満たし、勇者を国に縛り付け、最も危険な場所に勇者を配置し何かあったら即座に対処させるという、一石三鳥ともいえる采配だった。




「最近、ここら辺では見たことのない魔物を森の奥で見るんだ」


 これまでの定期的な訪問に、すでに仲良くなっていた子ども達がアリーナに小声でそう告げる。


 子どもが魔の森に近づくことは禁止されていた。


 だが、ダメと言われれば余計に行きたくなるもので、子ども達は大人の目を盗んで森に行き、そこにしか生えない薬草や果物などをコッソリ取ってきていた。


 それらの珍しい薬草や果物を、これまたコッソリとアリーナは子ども達から買い取り、子ども達は大人達に内緒のお小遣いを得ている。


「……そうですか……少し調べてみますけど、結果が出るまで魔の森へ行くのは禁止させていただきますわ。もし行ったら、今後、二度と魔の森の物を買い取りませんわよ」


「えー!! ん〜〜〜〜分かった……できるだけ早く調べてよね!!」

 

「ええ、お約束しますわ」


 そう言って、子ども達は得たお小遣いを手に市場の方に消えていく。

 手を小さく振って子ども達を見送った後、アリーナは市場のある街の中心とは反対の、魔の森の方を見た。


 千里眼のギフトに目覚め、エイト達や転生者について調べるうちに密かに立てた計画……待ち望んでいた()()の前兆ではないかと、アリーナは(はや)る気持ちを抑えつつ魔の森に向かった。

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