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第4話 アリーナ、復讐を決意する

「ええっと……確かこの辺に……」


 翌日、気持ち悪さから回復したアリーナは、屋敷の図書室を訪れていた。

 

 昨日脳内に流れてきた映像……あれは、おそらく転生者が神から与えられるという()()()というものなのだろうと、アリーナは考えていた。


「転生者については、むかし座学で少し学んだけれど……まさか、自分が転生者だなんて思いもしなかったから、この辺りの話は聞き流していたのよね……」


 と、自分以外誰もいない図書室で、独り言を呟きながら目的の本を探す。


「あ、あった! あった!」


 本棚の一番上の段から取り出した本は、あまり掃除も行き届いていなかったのか少し埃がついていた。



 

 この世界に時折り現れるという転生者。

 彼らは神から与えられた()()()と呼ばれる能力を持ち、その時代に必ず存在する、魔王を倒すという使命を負っている。


 判明しているギフトの種類は決して多くないが、昨日見た映像から、自分のギフトは『千里眼(せんりがん)』なのではないかと当たりをつけた。

 遠く離れた土地の出来事や未来を見通し、人の心の中までも知ることのできるという、ギフトの中でも特にレアな能力。

 

 そして、あの映像の中でミザリーが「穢れている」と言っていた公爵の妹は、現在、全身に発疹が出てやがて死に至る、原因不明の病にかかって床に()せているという。


 これは、売春婦などが多くかかることから()()()()()とされてきた。

 そして、この病気にかかった人は侮蔑(ぶべつ)の対象で、女性であれば二度と外の世界に出ることは叶わなかった。


 この病気は、前世の知識によるところの、おそらく梅毒(ばいどく)だろう。


 公爵の妹とアリーナは話したことはなかったが、彼女は社交界でも聡明で、真面目で身持ちが固いとの評判だった。

 そんな彼女が、性病である梅毒に感染するだろうか……?

 

 おそらく、ミザリーのスキルが関係しているに違いない。


 人を呪う系のギフトなのだろうか……だが、彼女は腐っても聖女。多くの病を抱えた人々が、彼女に救われたという事実もあった。

 彼女のギフトを見破るには、もっと彼女を観察しなければならない……

 

 そして、観察しなければいけないのは、勇者であるエイトも同様だった。

 結婚生活を振り返ってみても、エイトが有するはずのギフトに思い当たる節がなかった。

 

 あの二人をそばで見続けることは考えただけで苦痛でしかなかったが、おそらく彼らは、私が同じ転生者で望美(のぞみ)だとまだ気付いていない。


 アリーナは、これはまさに、神が与えてくれたギフト(チャンス)だと感じた。

 

 ミザリーを認識して以降、心の奥底から溢れるこの気持ちが、私の方を向いてくれない夫へのやるせなさなのか、夫を取られたあの女への恨みなのかも、最早分からなかった。

 

 虚しさだけが残る結果になるかもしれない。

 それどころか、惨めで、もう二度と二人の前に出たくないような思いをするかもしれない。

 

 でも、この千里眼の能力を活かして、必ず二人を(おとしい)れ、復讐する……!!


 埃が付き、少しすすけた本を胸に強く抱きしめながら、アリーナはそう固く心に誓った。

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