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第2話 衛、栄斗を地獄に落とす

今日3本更新します。

「番外編:終わりと始まり」は本日で完結です。

 黒澤栄斗は家庭内において望美に過労を強い、モラハラで支配していたが、それは家庭だけに留まらずに仕事にも及んでいた。


 栄斗は、高圧的でワンマン気質の経営者だった。


 彼は野心家で、大学の友人たちと起業し、社会を知らないまま大人の世界に踏み込んでしまった、典型的な子どもだった。


 友人たちが社会の荒波に直面して徐々に経営から離れていく中、何とか会社を存続させようと、()()()()()()()のやり方で仕事を行っていた。


 同時に、重くのしかかる責任へのストレスは、彼の部下達と共に、妻である望美と外の女性たちにも向けられた。

 部下へはパワハラ、望美へはモラハラ、女性たちへはあと腐れのない()()の相手として。


 ただ、そんな大多数の遊び相手だった女性たちの中から、一人、頭角を現すものが出てきた。


 ――紅村美咲。


 彼女は、そもそも栄斗の秘書だった。


 仕事で多くの時間を共に過ごしていた二人は、いつしか、プライベートでも徐々に一緒にいることが多くなっていった。

 

 彼女が放つ妖艶な見た目と雰囲気、そして公私と心身にわたるサポートに、栄斗は徐々にのめりこんでいき、それに比例して、望美は隅に追いやられ、扱いがますます雑なものになっていった。


 法的にギリギリな経営手法や部下へのパワハラ、そして社内不倫。

 この三つは、黒澤栄斗を地獄に落とすのに十分だった。


「な……んだ……これ……」


 ある日突然始まった、畳み掛けるように白日の元に晒されるそれらの事実に、あっという間に栄斗は会社での立場も、社会的な立場も失うことになった。


 まずは一人、栄斗の部下とコンタクトを取り、彼のパワハラや危ない経営手法を方々に内部告発させた。

 同時に、その事実と社内不倫の情報を、週刊誌や地元の新聞社、そしてネット上にもばら撒いた。

 少し実家の後ろ盾も使いつつ、傾きはじめた彼の会社を丸ごと衛の会社が買収した。


 たった、それだけのことだった。

 たまたま衛と栄斗は同業であったために、衛にとってこれらは寧ろ、簡単な作業ですらあった。


 わずかな間に、これまで培ってきた全てを失くした栄斗は、これからの自分の人生に絶望したことだろう。


 ドラマのような転落劇に、特にネットを中心に世間は大いに盛り上がり、栄斗の生きる場所も希望も、根こそぎ奪っていった。


 黒澤栄斗、四十二歳。

 望美が死んで三年が経とうとしていたある日、彼は自らの手で、その生涯に幕を下ろしたのだった。

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