第18話 アリーナ、前世を二人に知られる
「お前がなぜ、俺達の前世を知っている……!! お前は一体、誰だ!?」
ルークからの蔑むような目線にエイトは苛立ち、握りしめた拳を地面にたたきつけた。
しかし、ルークは冷ややかな視線を向けたままエイトに言葉を落とす。
「……そんな事、今更知ってどうするつもりなんだ? それより、お前達はもっと、自分の置かれている状況を理解した方がいい」
ルークにそう鼻であしらわれて、エイトの顔がますます悔しさに歪んでいった。
エイトは下唇を噛み締め、膝をついていた地面を爪で抉るようにしながら体を震わせる。
そして、俯いた姿勢のままルークを睨みつけて言った。
「……それにしても、お前の攻撃はこんな風に、この魔物を真っ二つにできるほどではなかったはずだ!」
「……それは、俺のギフトのおかげだ」
ルークはそう言うと、衝撃的な事実に置いてきぼりになっていたアリーナの方に視線をやった。
突然向けられた視線に、アリーナの心臓がビクッと跳ねる。
「……アリーナ……?」
アリーナに視線を送るルークの意図を測りかねて、エイトが怪訝そうに言葉を漏らす。
その様子を見て、ルークは大きくため息ながら言った。
「まだ気づかないのか、お前は。彼女は今世でも、前世でもお前に尽くしてくれていたというのに……!」
エイトとルークだけでなく、このやり取りを見守っていた全員の注目が一気にアリーナに集まる。
「……栄斗……」
「……まさか、望美…………!!?」
追加された驚愕の真実に、エイトは息を呑み、牙を抜かれたように呆然とアリーナを見つめることしかできなかった。
……その時、当事者でありながらも、ただ静かにルークの言葉を受け止めていたミザリーが、ポツリと呟いた。
「黒澤……望美……?」
ルークはその声を捉え、ハッとした表情をしてミザリーの方を急いで振り向く。
ミザリーは先ほど見た時より一歩、こちらに近づいていた。
呆けたようにアリーナの姿を……アリーナの姿だけを見つめ、少しずつ、確かめるように、こちらににじり寄ってくる。
そして、みるみるうちに、これまで全く動じていなかった表情は、鬼のような形相に変わっていった。
「……黒澤ぁ……望美ぃぃい!! あんたは……またッ……!!!!」
ミザリーはそう叫びながら、勢いよくこちらに向かって走り出してきた。
ルークが、迫り来るミザリーからアリーナを庇うように両手を広げて覆い被さってくる。
それはまるで、スローモーションのようだった。
ミザリーとの間に入ってきたルークの体の隙間から、ミザリーの赤い瞳が嫉妬の炎に激しく揺れているのが見える。
ミザリーに触れられたルークは苦痛に顔を歪めて一瞬、体勢を崩した。
横に逸れるルークの体を薙ぎ払うようにしてミザリーの体が現れる。
その赤い瞳を覆い隠すように広げられたミザリーの手が、アリーナに向かってまっすぐに伸びてきていた。




