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ヤンキー、悪役令嬢になる  作者: 山口三
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貴族裁判


  ジュリエットが連行されるのを見届けたゴードンはその足ですぐリンの元へ急いだ。


 ベッドに横たわり眠るリンの顔色はまだ優れなかったが、医者が言うには命に別状はないらしい。ゴードンの処置が良かったのと飲んだ毒が微量だったのだ。


「ああ、助かって良かった。君の身に何かあったら私はどうしたらいいんだ」 ゴードンはそっとリンの手を取り、優しく自分の両手で包み込んだ。


 

 ゴードンがミナの聴取を始めようと廊下に出ると弟のライオネルがこちらに向かって歩いて来た。


「兄上、リンが倒れたと聞きましたが」その顔には困惑の表情が広がっている。

「ああ、詳しくは歩きながら話そう。私はこれからミナの聴取に向かう所だ、お前も同席してくれ」

「分かりました。しかし聴取とはまたなぜ? まさか俺が遅れた茶会で何かあったのですか?」


「ああ。リンが毒を盛られた。幸い命に別状は無かったが・・」

「毒ですって! では犯人はミナなのですか?」ライオネルは心底驚いて兄の顔を見返した。

「まずは聴取してからだ」ゴードンは厳しい表情でそう言ったまま押し黙ってしまった。



 ミナの聴取はゴードンの執務室で行われた。


 ミナはリンのカップに薬を入れて欲しいとジュリエットから薬の小瓶を手渡された事、その薬は滋養強壮剤で、最近リンから『多忙で疲れが取れない』と相談されたからだとジュリエットに言われた事を供述した。


「リン様は王太子殿下とのご婚約が決まってからとてもご多忙でしたから、お疲れの事は皆が存じておりました。ですから私も何の疑いもなく薬をリン様のお茶に入れてしまったのです」


 ミナはボロボロと涙を流しながら訴えた。


「どうか、どうかお許し下さい。私は決してリン様を傷つけるつもりは無かったのです!」


 ミナの供述を聞いているライオネルの顔から血の気が引いて行った。「 それは・・本当なのか? 本当にジュリエットがお前に薬を渡したのか?」


 その質問にはたった今入室して来た王立騎士団の団長ネイサン・ロードが答えた。


「ジュリエット様のパースからお茶に混入されたと思われる毒の小瓶が見つかりました。中身は分析に掛けている途中ですが」ロードはここで言葉を切った。


「毒なのには間違いないようです」


 ゴードンは頭を振った。


「ライオネル、残念だがジュリエット自身も「妃教育を受けてきたのは自分なのに」と話していた。リンを妬んでの行動だったのだろう。リンがいなくなれば自分が妃になれるとでも考えたのか、浅はかな女だ」


「そっ、そんな」ライオネルは兄の言葉をにわかには信じられなかった。自分の目で、自分の耳でジュリエットから話を聞きたかった。だから今はただこう言った。「俺も残念です・・兄上」


 ライオネルはそう言うとゴードンの執務室を出て行った。



 後日ジュリエットからも聴取がなされた。確かに毒薬は自分が購入した物だと認め、リンを妬む気持ちもあったと認めた。


 ただ毒をリンのカップに入れる指示をしたかと聞かれると「指示していない」と一言言ったきり、それ以上は何も話さなくなってしまった。



 ジュリエットは貴族裁判に掛けられた。


 裁判の間もジュリエットは聴取の時と同じ事のみを返答し、それ以外は何も話さなかった。


 裁判の結果、リンの命に別状は無く、後遺症も残らなかった事、ジュリエットが高位貴族である事などを考慮されたが、リンは王太子妃になる人物だ。


 後の王妃になる人物に私怨から自分勝手な犯行に及んだ事、また自らの手を汚さずミナを欺いて毒を混入させた犯行は非道だと非難され、地下牢に20年の幽閉を言い渡された。


 あまりにも重い刑罰に世間は騒然となったが、ジュリエットの冷酷な性格を知っている貴族たちは裁判中も反省の色を見せない態度に当然の刑罰だと陰で囁いていた。


 父親のクレイ公爵でさえ、家の恥だとジュリエットを罵り刑罰に異を唱えなかった。


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