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恋と愛の本棚

俺のことをストーカーする女子に「俺のこと好きなの?」って聞いてみたら「え?いや違います」って言われたんだけど!恥ずいわ!



「……」


 学校帰り。背後から人の気配がして、後ろを振り向く。すると、電柱の影に誰かがサッと隠れた。


 …また、いる。


 少し前から、何故か俺の後をついてくる女がいる。すぐに隠れるからどんな女か分からんが、チラッと見えた制服…あれは、俺の通う高校のすぐそばにある女子校の制服だ。

 それにしても、何故女子校の女に付きまとわれてるのかわからん。そこの女子校と接点なんてまるでないし。別に俺はイケメンとかでもないし。つーか、生まれてこのかた、彼女なんていたことの無い、ちょっと目付きの悪いフツメンだし。

 何でこんな俺にストーカー?するのか、意味がわからない。


 もしかして…俺に一目惚れした…とか?なわけねーか。


 とかなんとか、内心でひとりそう思いながら、でも、もしかしたらそうなのかもしれないと、どこかで期待する俺もいて。





 そんなある日の放課後。俺が一人で下校してると、また後ろから誰かの気配を感じて。後ろを振り向くと、やはりいつもの女がついてきているようだ。

 女は結構素早く、不意に振り向いてもささっとすぐに物陰に隠れてしまう。なので、顔を見たことがない。


 さて、どうすっかな…


 そう心の中で独り言を言い、俺は急に早足で歩き出す。女も急いで歩いているのか、俺の後ろからローファーが地面を踏む音がよく聞こえる。

 俺はいつもとは違う道にサッと曲がり、曲がり角であの女が曲がってくるのを待つ。

 そして。


「キャッ!!?」


 予想通り、女は慌てて曲がり角を曲がってきて、曲がり角を曲がったすぐのところにいた俺にビックリして、小さな悲鳴を上げた。

 初めて見た、俺の後をついてくる女の顔。何て言うか─…え?!めっちゃ可愛いんだけど?!この女が毎日俺の後をつけてたのか!?ウソだろ!?

 亜麻色の腰まである、ゆるふわにうねる髪。ぱっちりとした大きな瞳。華奢で小柄なのに、存在感のある大きめの胸。何より…顔が可愛い。というか、あんまり見たこと無いくらいの美少女だ。


 女は目をキョロキョロとさせ、小さな声で「どうしよう…どうしよう…」とぶつぶつ言う。曲がり角のところで急に俺と出会ったから、相当動揺しているようだ。

 俺はその女を見下ろしながら言う。


「えーっと…あんたさ、ちょっと前から俺の後をついてきてた…よな?」


 俺がそう聞くと。


「あ、えと…はい、すみません…」


 そう言って、女は深々と頭を下げた。


「何で、俺のことストーカーするみたいなことしてたの?何か言いたいことでもあるの?」

「その…」


 女はもじもじしながら、視線を地面に落とした。俺は。


「あのさぁ…もしかしてあんた、俺のこと好きなのか?」


 少し胸をドキドキさせながら、俺はその女に聞いてみた。すると。


「え?いや違います」


 女は、きょとんとした顔でそう言った。


「えって…え?俺のことそういう…恋的な意味で好きだから、ストーカーしてたんじゃないのか?」

「あ、いえ。恋愛的な好意は無いです。ただ…その、あなたの顔が、去年亡くなった奏翔カナトに似てて…それで何だか気になっちゃって」


 女は少し涙目になりながらそう言った。

 …なるほど、亡くなった元カレか片想いしていたヤツに俺が似てて、そいつの姿と俺を重ねてた…的な感じか。


「でもほんと、近くで見ると奏翔に目がよく似てる。目付きが悪い子だったけど、そこが可愛いかったんだよね。いつも私のこと見るとちぎれそうなくらい尻尾を振って…すごく大好きだったなぁ…」


 そう言いながら、女は涙目から涙を溢しはじめた。

 …ん?尻尾?


「そのカナトってやつ、元カレとかじゃないのか?」

「え?ううん、奏翔は私が飼ってた犬だよ」


 …………


「いや、犬かよ!!!」


 間をあけて、俺は思わず大声でツッコんだ。そんな俺のツッコみをスルーし、女は声を震わせ本格的に泣きはじめた。


「ふう…うううっ…かなとぉ~…」

「お、おいおい…俺の前でマジ泣きはじめるなよ」


 俺の目の前で涙をボロボロと溢しながら泣く女。すると、俺たちの横を通りすぎる人たちがぼそぼそと「やだ、女の子泣かしてる、サイテー」「カツアゲ?警察呼ぶ?」とかなんとか、とんでもないことが聞こえてきた。おいおお、勘弁してくれよ。


「はぁ~…」


 俺はため息を吐き、そして。


「…そんなにそいつのこと、可愛くて大好きだったんだな。俺も昔犬…飼ってたからさ、悲しいのはわかるけどでも、あんまり泣くなよ。そんなに泣いたら、その犬天国でずっとお前のこと心配しっぱなしだぞ」


 気づいたら俺は、その女の頭をぽんぽんと撫でながら、そんなことを言っていた。


「うん…そうだね。奏翔ちゃんに心配ばっかかけさせちゃダメだよね。ごめんね…奏翔」

「おう…いや、俺を見ながら言うな。俺はカナトじゃねぇよ」


 涙を手の甲で拭いながら、俺に笑いかけるその女が…すごく可愛くてキレイで、ドキッとする。


 ─────いつか、犬に似てる俺じゃなく「俺は俺」として見てくれるようになったら、俺はまたこの女に…この人に告白したいな、って思った。






 それから約一年後。


 俺はストーカー?だった女に─…奈留なるに告白して付き合いはじめるけど、それはまだ先の話。




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― 新着の感想 ―
[一言]  がっかりかと思わせつつ、ほっこりさせ、しっかりお幸せになるオチまでついてましたね。  ゴチソサマ。
[良い点]  面白い!  1年後も楽しみだけど、その1年後に至るまでの過程を読者(ぼく)に妄想させてくれる嬉しい物語でした♪  とにかく面白かった!
[良い点] >男子の方は恋が芽生えましたが~…女子の方は彼のことを「ワンコ」と思ってますからね~… なかなか、恋愛関係に発展しなさそうですね~(´▽`) 続き書くとして、ギャグっぽくなりそう。彼に首輪…
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