溺死!
不用心に野宿するルディアルに近寄る巨大な獣の姿があった。
ガゥゥゥ!!グゥゥゥ!!
「うぅん…」
なんか獣の唸り声が聞こえる。
ガリガリガリ!!
眠い目をこすりながら薄目を開けると…
クマが左足を齧っていた!
うえ!?
いつのまにか薄暗い洞穴にいた。
そして俺の足を齧る熊。
(思考1.0秒)
おそらく野宿していた俺を熊が見つけ、住処の洞穴まで引きずってきたのだろう。
そしてご馳走だとばかりに俺の足を齧っていると…
あぶねー!この鎧を着てなかったら朝、起きたら頭しかなかったって事になっていたかも。
慌てず騒がず天使の眼で確認。
[デスベアー (とてもとても強い敵だ)]
そっと見習い天使の剣を具現化しようと手を動かした瞬間。
「グアアアア!!」
動き出した俺に気がつきデスベアーが怒り始める。
「うわっ!」
俺の左足に噛みつき、そのままその巨体を上下に振る。
ブンッ!!ドカァッ!!ドカッ!ドカァッ!!
身体を振り回され、壁に床に叩きつけられる。
「うっ!あ!くっ!」
ダメージはないが激しく振り回されて目が回った。
グルングルングルングルン…ポイッ!
ジャイアントスイングのように振り回され投げ飛ばされる。
糞たれ!熊ごときがプロレス技を使うとは生意気な!
「あっ!」
ドカァッ!!倒れた俺の上にヒップドロップをかます熊。
500キロを超える体躯で、俺の身体を抑えつけ頭を齧り始める。
「うわっ!臭え!!涎!!うっぷ!やめ!あ、あ、は、禿げるやめ!!」
痛みはないが臭いベトベトするキモい!!
「いい加減にしろ!!」
デスベアーの口に右腕を突っ込む。
そしてそのまま右手に見習い天使の剣を具現化する
「ガッ!」
デスベアーの後頭部から見習い天使の剣の刃が突き出る。
「ふー…全身ベタベタだよー」
何か拭く物はないかとあたりを見回すと…
人間の物と思わしく骨が散乱していた…
中には子供の物と思われる靴があったりした。
俺は一応天使として彼らの冥福を祈った。
彼らの身元がわかる物がないか、洞穴の中を漁っていると。入り口の方から煙が激しく流れ込んできた。
「ゲホッゲホッ!か、火事!?」
慌てて外に飛び出す!!
「うわっ!!」
ドサッ!!
直径6メートル。深さ10メートルぐらいある落とし穴に落ちてしまった。
な、なんでこんな大きな落とし穴が!?
もしかしてクマが自宅のセキュリティのために掘った?
ジャバァァァ…!!
「うあっ!!」
当然、大量の水が落とし穴に流れ込んでくる。
み、水責め!
これは不味いぞ!飛翔しようした瞬間!
ドカッドカッドカッ
今度は落石かよ!大岩の下敷きになり水没してしまう
流れ込んでくる水の勢いは収まらない!
このままだと溺死する!
「ゲホッガボッ!や、とめて!!」
岩と水で歪み沈む視界に、落とし穴の上から覗きこむ人物の影が見えた…
そして俺は窒息した…