ボクっ子教皇
ファーラスト神聖国最高トップが乱入してきた!
「初めまして、天使さま」
片膝をつき、臣下の礼を取る教皇さま。
「こちらこそ、お初にお目にかかります」
カーテシーで俺も淑女の挨拶をしながら天使の眼で教皇さまを視る。
[魔王]とただそれだけ表示された。
次の瞬間!世界が凍った。
「やっぱりバレちゃった」
テヘ、と可愛らしく舌を出す教皇さま。
俺自身予想していなかった出来事に動きが固まる。
「な、何故、魔王が教皇を?」
ようやく、それだけを言葉に出せた。
「そんなに怖がらないでよ!僕は悪い魔王じゃないよ」
魔王(教皇)は指パッチンする。
凍った聖女の部屋の中央にテーブルが現れ、そこにやたら高級そうなワインが置かれていた。
「一緒にお話しようよ!」
俺の為に椅子を引く魔王。
「お話するのは良いですが、皆さんを元に戻して貰えませんか?」
氷の彫刻のようになったリリィフラワーのみんなや勇者。聖女達。
もし彼女たちが死んでいたら、刺し違えてでも、こいつは絶対殺す…
「大丈夫!時間が止まったから凍っているように見えるだけで、命に別状はないよ」
嘘を言っているようには見えない。
「それに、ボクは人間が大好きなんだ」
俺は魔王の用意した椅子に座る。
そしてテーブルの対面に座る魔王。
魔王は俺のグラスにワインを注ぐ。
魔王は手酌で注いだ。
俺は魔王に差し出されたワインを躊躇うこと無く飲む
天使として、魔王の酒をビビって飲めないなどと言えるハズがない。
それに魔王の秘蔵のワインなら、かなり上物なハズだ。
「こ、これは…」
くくっと笑う魔王。
「ただの葡萄水じゃないか!!」
アルコール入ってねぇ!相当、美味しいんだろうなって期待して飲んだのに!!
「だってボク、まだ子供だよ」
俺は胸元からファ◯タグレープを出す。
「へぇ…変わった容器だね」
差し出された魔王のグラスにファ◯タグレープを注ぐ。
一口飲む魔王。
「うっ…まい…」
ただ葡萄を潰して水で割った飲料が、ドイツで生まれ、日本で遥か昔から愛飲されている国民的ジュース、ファ◯タに勝てるハズがない!
一気に残りを飲み干す魔王。
俺は、空になった魔王のグラスにファ◯タを注ぐ。
主導権がこっちに渡ったところで質問をする。
「魔王さま…何故、教皇などをしておられるのですか?」
「自己紹介が遅れたね。ボクの名はデビアス。さっきも言った通り、ボクは人間が大好きなんだ」
手酌でファ◯タを飲み始める魔王。
たしかにファーラスト神聖国は秩序があり、民たちも虐げられている様子はなかった。魔族の姿も見えない
「むしろ神様の方が人間を苦しめているぐらいさ」
「どういう事ですか?」
俺もファ◯タで喉を潤す。
「神様はねぇ…人間を溺愛しすぎるのさ」
俺は無言で先を促す。
「神の寵愛によって人は守られ繁栄した…いや繁栄しすぎた…」
なんとなくわかってきた。
「作物は無限に取れる訳ではない…だんだん不足し奪い合い、そして戦争…同族殺しが始まった」
悲しい目をするデビアス。
「それを見た神様は戦争で傷ついた人を治せるように回復魔法を人類に授けた」
空になったファ◯タの容器を悲しい目で見るデビアス
「結果…戦争で戦死者が激減し、ますます人口は増加…世界飢饉が始まり、人類は滅亡の危機になったのさ」
俺は新しいファ◯タオレンジを胸元から取り出し、デビアスのグラスに注ぐ。
「人間が居なくなると、人間の負の感情を食べるボクたち魔族は生きられない。…くはぁっ!効っく!」
ファ◯タオレンジを一気飲みするデビアス。
「だからボクたち魔族は増えすぎた人類の頭数管理をする事にしたのさ…それが500年前の魔神戦争さ」
「その戦争に破れた魔族は封印されたと聞きました」
「封印されたのは神様達のほうだよ」
「え!?」
「勇者エミリナ達が魔王だと思って封印したのは創造の女神ファーラストなんだ」
衝撃の真実。
「エミリナ達人類に攻撃魔法を授け、女神を倒すように仕向けたのはボクなのさ」
「なっ!」
「そして女神 対 魔族と人間の連合軍の戦争が始まり、人類の半数は死滅。女神は封印された…」
ファ◯タオレンジをラッパ飲みするデビアス。
「人口が半分になったお陰で世界飢饉は回避され、人類は滅亡の危機から救われました…終わり」
これは…魔王デビアスの話が本当なら、一概に悪とは言い切れないだろう。
全滅するよりは、半分見殺しにして残りを生かす。
ありえない選択ではない。選ばざるを得ないかも知れない。
この魔王は信じられるか信じられないかは、この質問で決めよう…
「最後の質問です…」
「何かな?」
俺は深呼吸をする…
「貴方は男の子ですか?女の子ですか?」
一瞬、キョトンとして
「あっははは!!どんな質問かと思って身構えちゃったよ!ボクは女の子だよ!」
ペラっと法衣をめくり、下半身を見せるデビアス。
ノーパンだった…ついでにツルツルの女の子だった。
貧乳ロリ魔王…俺の性癖にぶっ刺さる。
「分かりました…悪い魔王ではないようですね」
俺は信じる事にした。
心の広い俺は、可愛い女の子になら裏切られても許せる。
「分かってもらえて嬉しいよ!!そうだ!みんなでパーティを開こうよ!!あ、お金はボクが出すから、君の胸の中にある料理出してよ!!」
アイテム購入スキルは5万円分チャージされているな…良し…
「500金貨(500万円)で天界の料理を出しましょう」
何せ、俺はこの世界での現金収入がない。取れるところからボッタくろう。
「決まりだね」
時間停止が解除される。
無事、動き出したみんなに、晩餐会を開く事を伝えた。
いいね元気の元




