黒い炭酸飲料水
ルディアルに貰った炭酸飲料を大切に抱えるマリアーヌ姫を見かけた王は、それを一杯飲ませてくれと頼み込むが…
「こ、これが…天界の水…」
シュワシュワシュワ…
ランバード王の前に置かれた盃に注がれた黒い水。
「うん。天使さまとピクニックに行って、美味しい物いっぱいご馳走してもらったの!」
本当なのか?とマリアーヌ姫の後ろに控える護衛騎士のレイラに視線を送る王。
「はい、私とノエルもご一緒させて頂きましたが、間違いなく天使さまかと思われます」
「そうか…やはりあの時の天使さまであったか」
王は、ふたたび黒い水に目を向ける。
これは城に戻った娘マリアーヌが大切そうに抱えていた変わった容器に入っていた黒い水だ。
なぜ泥水を大切そうに持っているのか?娘に尋ねたところ
「天使さまに頂いた、美味しい水です」
「ほう…一杯貰うか」
「嫌です」
無下なく娘に断られてしまった国王は、必死に頼み込んで一杯1金貨で売ってもらった。
「で…ど、どんな味なのだ?」
シュワシュワシュワ…と黒い液体の表面に湧き出る泡。
錬金術師が使う大きな鍋に入った液体を思い浮かべる王。
「最初は口の中が弾けて
「口が弾ける!?」
「頭の中がパーってなるの!!」
「それ大丈夫なの!?」
娘の感想に目を見開く王。
「嫌なら私が飲むわ」
「いや、飲む」
黒い水が入った盃を目の前に掲げる。
覚悟を決め…
クイッ!
ジュワッ
口内で弾ける刺激に目をギュッと瞑り耐える国王
ゴクッ
飲み込む…
「はぁっ!!」
喉の奥に流れ込む炭酸の刺激に覚醒する。
「美味い!!なんか疲れが取れる!!目が醒める!!」
国王のその姿を見て、自分も飲みたそうな顔をする家臣達。
「マリアーヌ!お前の欲しいがってた国宝とその天使の水を交換してくれ!!」
「やだ」
王のその提案に一瞬、動きが止まるがきっぱり断るマリアーヌ。
「うぅっ…ならば他の望みはないか?」
「…」
心の中で打算するマリアーヌ。
「…じゃぁ…天使さまの住む街で暮らしたい」
天使さまからの頂き物を父とは言え他人に譲ってしまうのは心苦しい。
でも天使さまのそばで生活できるなら、そっちの方がいい。
「そ、それは…」
王城の外で暮らすとしても護衛のレイラとノエルが居れば、それほど危険はないだろう。
しかし…可愛い娘を外に出すぐらいなら天使の水は我慢できる。
「王よ…天使さまと繋がりができると思えば、姫を伯爵領に住まわせてもよろしいのでは?」
宰相のサィファスが提言する。
娘と天使さまが仲良くなれば王国にとっても大きなプラスになるだろう。
「よし、アイリーグ伯爵と相談して娘の別荘を用意させるよう手配しろ」
「いいの!?」
手放しで喜ぶマリアーヌ。
「うむ。天使さまの迷惑にならないよう友誼を深めてくれ」
「やったぁぁぁぁ!」
ダンスするようにくるくる回る姫。
当然、黒い炭酸飲料の入ったペットボトルもそれに合わせて振り回させる。
「お父様、ありがとうございます!これは約束の品です」
ペットボトルを王に手渡すマリアーヌ。
「おぉぉ…すまないマリアーヌ。大切に飲ませて貰うぞ」
さっそく、栓を開ける王。
プシャァァァァ!!
噴き出す炭酸飲料。
「ぐぁぁぁぁぁ!!目が!目が!私の目がぁぁ!!」
「あ、お父様。言い忘れましたが、開ける時は気をつけないと噴き出します」
この後、半分に減ってしまった炭酸飲料を嘆く王であった。
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