刺客
ウシラゥ村での休暇も終わり帰路に着くリリィフラワー達。
「じゃ、行ってきます」
「「「お世話になりました」」」
俺たちはクリスさんとラウスさんに挨拶をしてウシラゥ村を後にした。
「ふー、久々にゆっくりできましたね」
「本当ねぇ。一時はどうなるかと思ったけど」
「父の事は…忘れてください」
クラリスさんの特殊性癖は父親譲りなんだなぁと実感できた。
「ルディ!そろそろアレ出してちょうだい」
アリシアさんにおねだりされる。
「はいはい、今出しますよぉ」
一応、人目はないか確認してから青い猫型ロボットのポケットのように胸から軽自動車を出す。
「いつ見てもルディのアイテムボックスは凄い」
「自分でもそう思います」
アリシアさんが運転席に乗り込む。
俺はサポートとして助手席に。リリアさんとクラリスさんは後部座席だ。
ブロロロロ…
「快適ねぇ」
「本当です。」
時速40キロで走る軽自動車。
道中、旅商人達の馬車を見かけるたびに道を外れてやり過ごしたり、迂回したり、花摘み休憩で用を足すみんなの安全を見張りながら、さりげなく風下に移動して深呼吸したりして、夕方前にはギルドの街に帰りついた。
リリィフラワーの拠点である宿屋前に着いた時!
「気をつけて!もの凄い殺気を感じるわ!」
「な、なんて強大な神威…」
「膨大な魔力の奔流。危険。」
うわっ、マジでなんか圧を感じるよ!
これが噂に聞く、強い奴だけが感じ取れる気配、殺気ってやつ?
これって俺も強くなったってやつ?
天使の眼でステータスを確認する。
レベル6。俺弱!
時は3日前に戻る。
リリィフラワーがウシラゥ村で軽自動車を乗り回し、ルディが吐いていた頃。
「ここが天使がいると言う宿か…」
背の低い女性と
「あぁ、そうみたいだな。さっそく天使様のご尊顔を拝ませて貰うか」
虎の顔をした2メートルを超える大男の獣人の二人組がリリィフラワーの拠点である宿屋の前に立っていた。
宿屋に入る二人組。
ズカズカとカウンター前に来る。
「夜になると天使の歌声が聴けると聞いてここに来たんだが、間違いないか?」
宿屋の主人に女が尋ねる。
「あぁ、ルディちゃんの歌声ね。生憎だけど今はどこかに出かけてて戻ってくるのはあと1ヶ月くらい先だけどな」
「行き先は?」
「聞いてないな」
じーっと宿屋の主人の眼を見る女。
「嘘は言ってないようだ」
女は虎顔の男に言う。
「なら、主人。1ヶ月ほどここに泊まらせて貰う。」
ドサッと金貨の入った袋を置く女。
「おぉぉ…ありがとうございます!!天使様の歌声が良く聞こえるお隣の部屋をご用意させて頂きますね!!」
リリィフラワーが旅に出て売り上げが落ちていた主人にとってまたとない上客だった。
もし宿屋の主人が冒険者だったら気がついていただろう。
その上客は中央大陸を支配するファーラスト教国の異端諮問会の執行官であり、彼女達は歴戦の勇者で、魔王を封印した英雄である事を。
女の名は勇者エミリナ。古の神の血脈を受け継ぐ半神半人のデミゴットだ。
そして虎顔の男は勇者の後見人でファーラスト教十三最高司祭の一人にして異端処刑人のガーランドだと。
(天使の名を騙る不届き者ルディアルとその一味のクビを我が敬愛するファーラスト神に捧げます)
暗い微笑みを浮かべながら祈るエミリナだった…
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