最強対最弱
聖地で激突する火竜対4万101人の軍隊。
しかし…天を舞う火竜に対してあまりに無力すぎた。
ルディアルは最後の希望として火竜の前に立ち塞がるが…
「全騎配置につきました!」
「うむ…」
伝令を受ける国王。
不思議だ…死の恐怖が全くない。
空は蒼く澄み渡り、心地良い風が吹いている。
「かっかっか!死ぬには良い日ですな。国王よ」
死装束を兼ねた真っ白なローブを着た魔法ギルドの長
ガンダールは愉快そうに笑った。
「全くだ…こんな強大な敵と戦い英雄として死ねる日は滅多にないぞ」
国王も国宝である純銀のフルプレートアーマーを着ている。
「それに、ここは天使さまが降りた場所だ。死に場所としても申し分ない」
国王達の背後にある小さな教会はルディアルが降臨(墜落)した場所だ。
ルディアルが降臨(墜落)した痕が残されていたので、王は聖地として急遽教会を建てたのである。
「来たぞ!」
蒼い空にポツンと黒い点が現れる。
それが段々と近づき、大きくなる。
「魔術部隊、詠唱準備!!」
老人とは思えない大声で指揮を出すガンダール。
ガオオオオオオオオオオオン!
あたり一帯の空気を振動させる火竜の咆哮!
「目標!火竜の翼!!撃て!!!」
数万の魔法と弩弓が火竜の翼に向かって放たれる。
ゴオオオオオオオオ!!
地上に向かって吐かれたドラゴンブレスが一瞬で魔法と弩弓を焼き払う!!
「ヒーラー部隊防御魔法展開!!!」
神官達による防御魔法陣がドラゴンブレスを防ぐ。
「ぐううう!!結界越しでもこの熱さとは…」
「防御魔法陣、持ちません!」
ドラゴンブレスが止まると同時に結界が崩壊する。
スウウウウウウウゥ
火竜が再び、ドラゴンブレスを吐くために酸素を取り込む。
「防御結界間に合いません!!」
アーデルの悲痛な叫び!
やはり…無理か…我が王国も今日で滅びるか…
せめて民が逃げ切れる時間だけでも稼ぎたい。
後のことは、我が娘とサイファスに任せるとしようぞ…
「私が相手です!!」
「おおおおおお!!!」
歓喜の声が大地を震わす。
火竜の前に天使様が現れた!!
純白の翼を広げ、天に舞うルディアルの姿に
ランドール三世の目から大粒の涙がこぼれた…
さて…カッコつけて飛び出したは良いが…
でけぇ……
火竜の前に飛び出した俺は、その大きさのあまり途方に暮れた。
なんでも斬れる見習い天使の剣とはいえ、刃渡り以上の長さは斬れない。
見えない真空波かエフェクトで刀身以上の長さの物を斬るアニメとかゲームに出でくる剣が羨ましいぜ。
ゴアアアアア!!
ドラゴンブレスを正面から浴びる。
「天使様!!!」
悲痛な叫びが地上から聞こえる。
左手のバックラーでブレスを受け流す。
とりあえず火竜の意識を俺に向ける事は成功したようだ。
作戦通り、上空に向かう。
火竜も俺を追いかけ上昇してくる。
高度1500メートル。
ここから落とせばさすがに死ぬだろう。
ブレスを受け流し、振りかざす爪は鎧で受け止める。
「くっ!」
ダメージはなくても100メートルぐらいは吹き飛ばされる。
MPが尽きる前になんとか火竜の背中に取り付かねば。
火竜は、なかなか背後を見せない…
こうして火竜の背後を取ろうと旋回する姿は、まるで戦闘機のドックファイトのようだ…
ドックファイト?
そうか!!
俺は一気に上昇する!
俺の背後には太陽がある。
グアッ!!
火竜は太陽の眩しさで視界が眩んだ。
今だ!!!
重力プラス推進力で急降下し、火竜の背中にしがみつく事に成功する。
残りMP10
十分だ!!!
俺は火竜の両翼の根元の骨を斬り落とした!!
ギャオオオオオオオオオン
激痛の咆哮をあげる火竜。
勝ちを確信する。
しかし!!
落ちない!?なんで!!!どうして!!!
両翼を失いながらも飛び続ける火竜。
まさか…翼は飾り!?
考えてみれば、火竜はほとんど羽ばたかず飛んでいた…
そうだよねぇ…もともとあんな翼でこんな巨体が物理的に飛べるわけないんですよねぇ…誤算だ。
だが、翼を失った事で姿勢制御が上手くできなくなっている。
くそ、なんとかなんとか墜落させる方法はないか!!
残りMP5…俺にある攻撃魔法は…4種類。
火魔法…火竜には無意味。
風魔法…そよ風レベル。
土魔法…子供の投げた石ころレベルの威力。
水魔法…手洗いにちょうど良い威力。
ダメじゃん!!詰みじゃん!!
火竜は俺を振り落とそうと暴れる!!
「ひっ!!」
遠心力で振り落とされる
「うああああああ!!!」
ここで飛翔してMPを消費する訳にはいかない!
俺は必死に手を伸ばし火竜の一部に手を引っ掛ける。
「ゲッッ!!!」
火竜の勃起したピーーーを掴んでしまった。
でかい!!大きい!!ふとい!!
ヘンな所を刺激され、ますます暴れる火竜!
「くそっ!何か何かないか!!!」
俺は必死に火竜のピーーーにしがみつく。
ハッ!!
ある!!土魔法ならできるかも!!
火竜のピーーーを見て閃く。
火竜に効くか分からん!
しかし…
これでダメなら諦めるしかない!
「喰らえ!!king of Pain!!尿路結石!!!」
俺は火竜のピーーーの尿道口に肩まで腕を突っ込み
土魔法の石つぶてを尿道の奥に向かってMPが切れるまで連射する。
「詰まれ!!詰まれ!!詰まれぇぇぇぇ!!」
1分後…火竜は泡を吹いて失神した。
「うわぁぁぁぉぁ…」
MP0…飛ぶ事もできず、火竜と俺は上空2000メートルから落下した…




