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TS天使爆誕。しかしげきよわ

「はぁ…飯買ってこよう…」

深夜2時。終わらない仕事…

今日で何十連勤だ!?


俺の名前は佐藤邦彦。27歳。独身。趣味はゲーム。ブラック企業勤めのサラリーマンだ。


俺は職場の近くのコンビニに弁当を買いに行く。


普段は交通量の激しい国道だが、今は誰も走っていない。


それにしても今日はやけに静かだ

深夜だとしても静かすぎる

耳鳴りがするぐらいだ


歩行者信号が青になった。

向かい側のコンビニに向かって横断歩道を渡り始める


突然、俺の体を眩しい光が照らす


ト、トラック!!

車の音なんて聞こえなかった!

な!?運転手寝てる!!


この時の俺の体は無茶な労働によって耳に不調をきたし一時的な難聴になっていたのだ。


だからトラックの接近音に気がつかなかった。


でも…まぁいいか…

生きてても労働地獄だし…死んだ方がマシ…あぁでも、死ぬ前にオンラインゲームの仲間にお別れ言いたかったな…FCのみんなと昔のように極行ったり…



「ダメ!!」

もうスピードで突っ込んでくるトラックと俺の間に飛び込んできた少女が俺の体を抱きしめる。


ふよん。

少女の柔らかな二つの胸の感触と甘い匂いが俺を包む。


次の瞬間

ドシャ!!!!!

トラックに跳ねられた激しい衝撃

に俺は気を失った。



(起きて!起きてください!!)


「うっ…うう…」


(邦彦さん!起きて!目を覚まして!!)


「うっ…い、生きてる!?」

(良かった…魂は無事でしたね)

女の子の声が耳と頭に聞こえた。


「俺は…」

また女の子の声が聞こえた。


(トラックに跳ねられた貴方の身体は修復不可能なぐらいグチャグチャになりました)


今度は女の子の声が頭の中で聞こえた。


(それで消えそうになった貴方の魂を私の身体に定着させました)


「え!?」

(今、この身体には貴方と私の魂が同時に宿ってます)


そう言われて自分の身体を目視する。


デン!

「デカルチャー!!!」

Dカップはありそうな二つの双丘が俺の視界に飛び込んでくる


(や、やめてください!そう言う発言はセクハラですよ!?)


次に目に入ったのはむっちりした太もも!!!


エロい!!太ももエロい!!

(ヘンな事考えないでください!!は、恥ずかしい…)


ボンキュボンのエロい身体を純白のミニスカのウェディングドレスのような甲冑が包んでいた。


「これが…俺?」

(えぇ、私の身体を貴方に譲り渡しました)


「も、もしかして、さっきトラックに跳ねられそうな俺を庇ってくれた女の子!?」


(はい、記憶がはっきりしたようですね。良かったぁ)


「あ、ありがとう!助けてくれて本当にありがとう!!」


今日はもう朝になってるし、会社バックれて数ヶ月ぶりにFCのみんなに会いに行こう!!いや!あんなブラック企業辞めてやる!!!


(残念ですが…貴方はもう14はできません)


「え!それ死ぬより辛いよ!」

(心中お察しします…)


今、気づいた…ここどこ!?

(異世界です…貴方は異世界転生してしまいました)


緑が極端に少なく茶色い岩肌が目立つ荒野のような大地に俺は立っていた…まるでウル◯ハのような土地だ。


夢…うそ!?…ありなの?夢オチ?

(現実です。おそらく緊急移動魔法を発動した私の魔力と貴方が思い浮かべた場所が混じり合って似たような異世界に転移してしまったようです)


「ま、魔法!?」

異世界転生物大好きです。

憧れてました!!


でも、いざ本当に異世界に来て、こんな荒野のような世界に立たされると生きていけるのか怖くなってしまう。


(安心してください。その身体は不老不死です。欠損してもすぐ修復されます)


それを聞いて少し心に余裕が出た


(ですが…本来なら使えるはずの能力の殆どが使えません)


「えぇ!?」

(今の状態を例えるなら最強の剣と鎧を装備をした、か弱き少女状態ですね)


「微妙!」


(そうですね、でも経験を積めば見習い天使の身体とは言え、世界を変えるぐらいは強くなれるはずです)


リアル14の世界で無双できるわけか…しかもこんなむちむちエロエロな身体で…


「…って見習い天使ィ!?」


とそこで気がつく。

今の自分の顔をまだ見てない。


トラックに跳ねられる直前にチラっと少女の顔を見たが…トラックのライトで逆光で良く見えなかったけど、天使ならブ◯って事はないと思うが…


もし◯スならリセマラするぞ!!


(…お好みの顔か分かりませんが…ステータスオープンと呪文を唱えてください)


俺は、祈りを込めてその呪文を唱える。

「ステータスオープン!!」


おぉ!!!!

目の前に半透明なディスプレイが現れ、俺の全身図が浮かんだ


「か、かわいい!!!めっちゃかわいい!!!これが俺!?」

天使の翼が生えた薄茶色のショートカットの絶世の美少女がいた!


(あ、ありがとうございます。このステータス表示はその身体の天使の眼を通して測った測定値を、貴方に分かりやくすくAR化したものです)


俺は周りの植物を視る

[薬草…ポーションの材料の一つ]

とARで表示される


「天使の眼、超便利!!!」

歓喜する俺。


(そろそろ私は帰らなければなりません…)


「え!?一緒に居てくれないの!!」


(その身体を貴方に譲ったので、この世界に留まれなくなりました。)


「そんな!なら身体返すよ!!

自分のせいで誰かが犠牲になるのは嫌だ!!」


(優しいのですね。安心してください。その身体は私の本体ではありません。分かりやすく言えばアバターの一つに過ぎません)


「ほ、ほんとう?」


(はい、あとで貴方を迎えに行きます。なんとか貴方を現世に戻してもらえるよう神に交渉してみます)


「生き返れるの?」


(どう言う形になるか分かりませんが、貴方の希望に沿うように努力してみます)


「ここで待っていればいいの?」


(もう一度、具現化するにはアバターを育てなければいけません

少なくても10数年はかかるでしょう。それまではここで自由に生きてください)


不老不死だし、観光気分で旅をしてれば10数年なんてすぐだろう…


「分かりました!!また会える日を楽しみにしてます!!」


(でも気をつけてください

この世界で悪事を働きすぎて魔道に堕ちたら、貴方を討たなければならなくなります)


「はい。天使さまの体に恥じないようできるだけ善行を積みます」


(期待してますね)


「あ、最後に名前を教えてください」

(見習いなので名前はありませんが…そのアバターの名前はルディアルです)


「ありがとうございます。名もなき天使さま!!今度会った時、お名前教えてください」


(あら、じゃ天使昇格試験頑張らないといけませんね。では良き旅路を…)


身体の中から何かが消えた。


「行っちゃった…」

知らない世界。誰も自分を知らない世界。知らない人ばかりの世界にたった一人。


いや、違う。

天使さまに貰ったこのルディアルの身体がある。

そっと自分の体を抱きしめる。


「良し、天使の名を汚さないように困った人(美少女)達を助けてハーレムを作ろう!」

軽く自分のプルプルした頬を叩き気合を入れる。


でも…その前に自分が困ってるな…どうしようか…


困った時の…

「ステータスオープン!」


じろじろじー……

武器と鎧のお陰で攻撃力、防御力はめちゃくちゃ高い。でも元の腕力も素早さも器用さも一桁数字…素早い敵には攻撃が当たらないパターンだ。


魔法の種類は豊富だ。

攻撃防御強化弱体回復移動蘇生ありとあらゆる物を網羅しているが…魂が見習い天使から俺に変わったせいかMP不足でほとんど使えない!!


軽度の怪我を治せるヒールぐらいしか使えない。


ほかのスキルは…

[飛翔 自由に空を飛べる。消費MP1分1MP]


「おぉ!飛べるのか!」


澄み切った青空を見上げ、飛びたいと念じる。


背中の翼が大きく光輝く。


フワッ!

「飛べた!!」


どんどん高度を上げる。

地平線がどんどん広がり丸みを帯びてくる。


「……美しい!!」

遠くに雪山。視界をひねれば大森林。海。山岳地帯…見ているだけでワクワクするようなフィールドがそこにあった。


しばし時間を忘れ魅入ってしまう


ふと見ると、少し離れた場所に城壁に囲まれた街と城のようなものが見えた。

ARで距離7kmと表示される。


「よし、あっちへ飛ぼう!」

グライダーのように滑空しようとした瞬間!


「あっ!!!!」

MP切れ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

上空500メートルから落ちる。


ドシャグチャーン。

終端速度で大地に叩きつけられた俺の四肢は有らぬ方向に曲がり、首は180度回転して背中を向いていた


あっ翼って肩甲骨から生えてるのかと思ったけど、身体の上に浮いてるんだ…って感心している場合じゃない!!


「ウギャァァ!!いってぇぇ!!痛い!!ギャァァァァ!!」


そして光に包まれる俺。

シュウウウ…

「な、治った…」

美少女にあるまじきスプラッタな姿が瞬時に回復する。


「ドジったな…MPは常時表示しておこう」


ゲーム画面感覚で視界の右上にMPを表示させる

1MP回復に8分か…


しかし…喉が渇いたな…

あたりを見渡す。


[サボテン…絞れば少量の水が飲める]


「ううんっ…」

俺はサボテンの一部をもぎ取ろうとするが非力すぎて千切れない。


「えい!」

カブッ!

ジュジュジュゥ…


サボテンの幹に噛み付く。

そのまま吸血鬼のようにサボテンの水分を啜りとる。


「ふぅ…まずぅぅ…ビール飲みてぇ…」


とりあえず、手頃な岩に腰掛けMP回復を待つ。


乾いた空気に高く青い空…


今のところMPはマックスで10まで貯まる。

飛翔は1分1MPの消費と書いてあった…


「歩きながら回復を待つか…」

街まで7キロ、歩いて行ける距離だ。


ガウッゥゥゥ!!

少し歩くと狼の群れが現れた。


[ハウンドウルフ 6匹 レベル1とても強い」

天使の眼が発動する。


「レベル1なのに、とてつよかよ!俺弱いな!!」


注釈

とてつよとは…

自分との相対的強さを表してます

弱い方から順に

[練習相手にならない]

[楽な相手だ]

[丁度良い相手だ]

[同じ強さだ(おなつよ)

[少し強い相手だ]

[強そうな相手だ]

[とても強そうな相手だ(とてつよ)

[とてもとても強そう相手だ](とてとて)

[計り知れない強さだ]

…となっている


この場合…飛んで逃げるか?

いや飛ぶまでに少しのラグがある。噛みつかれて組み伏せられるのがオチだろう。


ならば…

右手にセラミックのような白磁に金のレリーフが入った片手剣を具現化させる


[見習い天使の剣 ありとあらゆる物質と霊体を切り裂く片手剣

消費MP 1分5MP]


見習い天使の剣とは言え、

ゴッズアイテム!アーティファクトだ。

この世のどんな武器よりも強い!

…はず。


グアッ!!

飛びかかってきたウルフのドテッ腹にカウンター気味に剣が入る


そのまま空気を切るように抵抗なく真っ二つになるウルフ


「弱いじゃん!!」

楽勝!と思った瞬間!

MP切れ!

剣が消えた…


「うそ!!」

ガウッ!ガウッ!

「うわっ!脚噛むな!!や、やめろ!」


攻撃手段を失った俺はいとも容易く4匹のウルフに接近され手足を噛まれる


[見習い天使の鎧 あらゆる物理攻撃魔法攻撃を無効化する]

のお陰でダメージはない。ないが…


「まさか、この鎧も消えたりしないだろうな!!」


バキッ!

キャイ〜ン!

右手の手甲に噛み付いていたウルフの牙が折れた。


どうやら鎧にはMPは関係ないようだ。


自由になった右手で左手に噛み付くウルフの鼻っ面を殴る。


[ハウンドウルフに1%のダメージを与えた]


「え!俺弱すぎ!」

天使の眼がウルフに与えたダメージを計測して視覚化表示する


ガウッ!

キバが折れたウルフが俺の背中に飛び乗ってきた


「うわぁぁ」

ドサッ

ウルフ5匹分の重さに耐えきれず荒野の乾いた土の上に押し倒されてしまう。


や、ヤバイ!


ウーーウー!!

うつ伏せで倒れた俺の手足を一頭ずつ噛み付き押さえつける


お尻を高く持ち上げた格好で地面に組み伏せられてしまった。


残った1匹。おそらくウルフのボスが、その高く突き上げた俺のケツの穴の匂いを嗅ぐ。


「や、やめろ!!変態犬!!!」

ボスの鼻先が俺の股間の割れ目に押し当てられらる。


え?まさか!よ、欲情してる!?

ボスのお腹の下に赤黒い先細りのアレが見えた。


「や、やめろ!天使の身体穢すな!俺もまだ見てないんだぞ!!」


獣姦プレイには興味ないし、ましてや犯られるなんてまっぴらゴメンだ!!


「うわぁぁ!!だ、誰か助けてくれぇぇ!!!」


この鎧…まさかエロゲのようにおっぱいと股間部分が簡単に壊れたりしないだろうな!?


ガルゥゥゥ!!

お尻のハイレグ部分の布地を噛み千切ろうと牙を立てるが、幸いエロゲ仕様の鎧ではなかったようだ。

ガッチリ臀部を守ってくれている


「くそたれ!仕方がない」

俺は翼を展開する


このままウルフを抱えて飛び上がり、上空500メートルから道連れ墜落すれば流石に倒せるだろう。


「くくっ必殺エンジェルフォール!!」

と飛び降り自殺を覚悟し飛び立とうとした時!


「うおおおおおおお!!全騎ランス構え!!全力で天使さまをお救いしろ!!」


20騎の馬に騎乗した白銀の騎士達が、騎士団長の掛け声と共にフルヘルムのバイザーを落としランスを構えると突進してきた。


ドドドドドッ!

大地を揺るがす20騎の蹄の音!


「おおおおおおお!!!」

驚き逃げ出すウルフにランスチャージアタックを噛ます騎士達。


キャィィィン!!

串刺しにされるウルフ達。


「天使さま!!ご無事ですか!?」

騎士達に少し遅れて到着した神官やシスター達に身体を起こしてもらう。


「え?あ、だ、大丈夫です」

「良かったぁ…先程、天使さまが天から落ちてくるのを見かけて、慌ててお迎えにあがったのですが、間に合って良かったぁぁぁぁぁぁぁぁ」


あぁ、さっきMP切れで墜落したところを見られていたのか。


「私はイーリア教の司祭をやらせていただいてるアーデルと申します。」

アーデルと名乗った中年の女性は

地面に両膝をつき俺に祈りを捧げる。


カチャ。

さらにヘルメットを脱ぎ、片膝をついた白銀の騎士が俺に挨拶をした。


「王国第二騎士団隊長のファルウスと申します。天使さまにこうしてお会いでき、感激のあまり体が震えております」

と渋い中年男性が泣いていた。


困ったぞ…

こういう場合は

「いえ、中身はただの社畜です」

と本当の事を言った方が良いのだろうか?


うーん…(思考する事0.1秒)

「危ないところ助けて頂き、ありがとうございます。ゆえあってこの地に降り立つことになりましたルディアルと言います。」


輝く純白の翼を展開し、わずかに地表から浮き上がり神聖な雰囲気を醸し出しつつ自己紹介をする。


うん、嘘はついてないぞ。


そんな俺を見て感涙の涙を流す騎士団とシスターズ


「どうか我々の城に!」

「いえ、私たちの聖堂に!」


いきなりのルート分岐か!?

セーブしたい!!


(思考する事0.3秒)

「ありがとうございます。では最初に駆けつけてくださった騎士団の方々のご招待を受けたいと思います。そのあとは聖堂の方にも是非、招待してくださいませ」


無難と思われる選択をする。


俺は司祭と一緒に荘厳な飾りがついた馬車に乗る。


その際、馬車のドアに翼を引っかけると言う一発ギャグを披露してしまう。

慌てて翼を収納する。


収納するとオモチャのような小さな翼になった。


あれ!?この翼、座席の背もたれに当たって不便だぞ。


俺が座ったのを確認して御者に合図する司祭。

動き出す馬車。


ガタガタガタ!!


うわっこの馬車サスペンションないのか!?

ケツ痛いぞ。


「天使さま、乗り心地の悪さご容赦くださいまし」


よく舌を噛まずに喋れるな…

物理攻撃無効の見習い天使の鎧でもこの振動は無効化できないようだ。


20分ほど馬車の中でシェイクされてると王城に到着した。


馬車はもっと優雅な物かと思ったが…二度と乗りたくないぞ…


騎士にエスコートされ馬車から降りる。


高く勇壮な跳ね橋を渡り、白塗りの美しい王城に入ると今度は眼鏡をかけた女官に、花が咲き乱れる中庭を案内された。


そこで色々な花の説明をされるが…


うん正直、花なんか分からん。

多分、俺を迎える準備の時間稼ぎなんだろうな。


もう馬車の中ではないから翼を広げても大丈夫と女官に言われたので遠慮なく翼を展開する。


その白く光輝く翼に女官は感動したのか涙を流す。


それから少しして20畳ほどの広い豪華な調度品に囲まれた応接間に通される。


「天使さま、ようこそいらしゃいました」

5人のメイド達が見事なカーテシーで俺を迎える。


広いテーブルの中央に座ると

「お口に合うか分かりませんが…」

と美しいレリーフの入った銀の皿いっぱいに盛られた果物を差し出された。


うーん丸齧りしろって言うのだろうか?

あ、供物なのか!これは?


「ふふ、私に供物は不要です。貴方がたと同じ食べ物でいいですよ…ですが、今は飲み物だけで結構です」


「かしこまりました」

供物を下げ、代わりに紅茶を目の前で淹れてくれる。


うん、美味い。


メイドが頻繁に入れ替わりながら俺にお茶菓子を持ってくる。


そしてこのミニスカウェディングドレスの様な繊細な美しさを持つ鎧を間近に見て息を飲んでいる。



一方…少し時間が戻り、女官と中庭を歩くルディアルの姿を三階の会議室からこっそり覗くもの達がいた…


国王達である。

「マジ天使…」「ふつくしい…」

「胸、上半分出てるぞ」「ふととも…エロ」


ここで覗きをしているのは、天使出現の報を受け急遽、集まった王族。貴族。軍属。魔法省に各ギルド長達だ。


ルディアルが本物の天使か見極めるため王、自らが壁に張り付き覗きをしている


「おぉ…なんと美しい翼だ…」

女官に言われて翼を広げるルディアルの姿があった。


「…皆の者。あの少女がさきほど落ちてきた天使さまらしい」


口髭を蓄えた威厳のある初老に差し掛かった王が円卓に座りながら口火を切る。


「本当に天使さまなのでしょうか?」

貴族の一人が尋ねる。


「アーデルよ。そなた一緒に馬車に乗ったのであろう。どうであった?」

ルディアルを迎えに行った司祭アーデルに尋ねる王。


「はい…見た瞬間、このお方は天使さまだと魂が感じました…

あのまま天使さまと一生馬車の中に居たかった…」

頬を赤く染める司祭。


「間違いあるまい…どんな魔法でも空は飛べぬ。それにあの翼も魔法で表現するのは不可能だ…」

白髭を蓄えた魔法省の重鎮ガンダールが重々しく語る。


「しかし…なぜ降臨なされたのだ?…まさか!?魔族の動きに変化があったのか?」

「ハッ、それについては問題ないかと思われます。結界にも異常は見当たりません。」


「ならばなぜ?」


「古来より天使は人々の救いを求める声によって現れるとされています」


会議に参加した王族、貴族はお互いの顔を見渡す。

少なからず心あたりがあるのだろう。


「税率を上げすぎたのだろうか…」

苦虫を噛み潰したような顔で呟く王。


「税率70%はさすがに度を越していたかと思います」

宰相サイファスの言葉だ。


「困窮した国民の声を聞き届けたのかも知れんのぉ」

とガンダール。


「わかった…税率は戻そう…いや30%まで引き下げよう」


「しかし…神が税率に文句をつけてくるでしょうか?」


「うーむ…他に心当たりのある者はいないか?今なら罪に問わないぞ?」


「あの…」

おずおずと手をあげる貴族の一人

「獣人と亜人の奴隷売買に手をつけました」


「それが原因だ!!ボケッ!!」

貴族の横っ面に鉄拳制裁をかます王。


「すぐ、売り買いした奴隷を買い戻して解放しろ!」

「は、はい、今すぐに!!」


「あ、あの領地に勝手に関所を作って通行税を取っていました…」


「ふんっ!」

中年の貴族の腹にヒザ蹴りを叩き込む王。

「おふっ!」


「あの…法外な金額で民を治療して払えない時は家屋を摂取してました…」

ガタガタ震えながら手を上げるシスター


「神に従えるシスターがそれはマズイだろ!!全部返せ!!」

ラリアットをかます司祭アーデル


「はぁはぁ…他にヤバイと思われる事をしている奴は今すぐ白状しろ!」

「「「は、はい…」」」


キツく問い詰めたところ、多かれ少なかれ悪事を行なっていた者が大多数だった…


「よし、とりあえず天使さまにお会いしよう…罪を問われたら…全員一緒に土下座するぞ!!」

「「「ハッ」」」


覚悟が決まったところで歓迎の準備が完了した。




「ルディアルさま、歓迎の準備ができました。どうぞこちらへ」


メイドさんに案内され応接間から出る。


いよいよ王様とご対面か…

頭の中で色々シミュレーションする。


偽物だとバレて拘束されそうになったら全力で飛んで逃げる。


俺を捕まえてその力を利用しようとしてきたら全力で飛んで逃げる。


お友達になりましょうと友好関係を望んで来たら交友を結ぶ。


よし、シミュレート完了。

なにせ俺は見た目だけ天使の劣化ヒーラーでしかないからな。

戦闘はNGだ。


戦闘といえば、他人のステータスを見る事はできるのだろうか。


俺は目の前を歩くメイドさんを鑑定してみる。


「名前 ノエル。職業王族付きメイド 戦闘力 とてもとてもつよい」


「ぶっ!!とてとてぇ!!?」

「ど、どうなされましたか!?」

「い、いえ…く、くしゃみが出そうになっただけです」


クスッと微笑むメイドさん

メイドこぇぇ!!

いや、俺が弱すぎるだけか?


しかしマズイなとてとてのメイドさんがそばに居たら逃げる事すらできないかも知れない…


大きな扉の前に立つ。

その両脇にはフルプレートの騎士がいる。


「中に入りましたら、私めがエスコートさせていただきます。

奥まで進んだら、王や貴族の方かだに祝福を授けて頂きたいのですが…」

「分かりました…」

「ありがとうございます」


すっと私の右手を握るメイドさん

そのまま、ドアマンの騎士が両開きの扉を開く。


うう、緊張する。メイドさんに手が震えてるの感づかれてないかな?


中に入ると全員片膝を付いて頭を下げていた。一番奥で王様も王座に座らず、その横に片膝をついて頭を下げていた


メイドさんにエスコートされながらダンスホールのような100人は余裕で踊れそうな広い王の間を歩く。


そして王座の前まで来ると、メイドさんは後ろに下がり皆と同じように片膝をついて頭を下げる。


あ、ここで祝福をするのね。

「皆さん、頭をあげてください」

全員がこちらを見たのを確認してから、俺はゆっくり翼を広げる


「「「「おぉぉ…」」」


ゆっくり宙に浮かび


「あなた達に祝福を」


アニメやマンガで見た天使をイメージしながら神々しく、唯一使える消費MP3の下級ヒールを一気に全員にかける


「おおぉ…」

全ての人の身体に光の粒子がまとわりつく。

「ヒール!?いや…違う…この粒子はいったい?」

驚く人々。


いや、ただの劣化ヒールですけど?

ま、いいや深く突っ込まれる前に次に進もう。


メイドさんに再びエスコートされ王座の前に立たされる。

そして王座に座るように促された


俺は覚悟を決めて王座に座る!


「ありがとうございます天使さま」

手の甲に、片膝をついた王に口づけをされる。


うげっ!

だが我慢。


「我ら一同、天使さまの御降臨を心より感謝を捧げます」


あー良かった…全く疑われてない


「我ら、神の御心のままに生きます!」

と宣言する王様。


え、それ、俺が国を運営しろって事?

それは面倒くさいし、天使の力をアテにされても困る。

なんとか避けねば。


(思考時間:0.5秒)


「私はこの地に住むありとあらゆる人種の人々が豊かに平和に暮らせる事を望みます」


静かに傾聴する王族貴族その他お偉いさん達。


「そしてそれは神の力によって行われるのではなく、人であるあなた達自らの力で成し得なければなりません!」


さりげなく日本国憲法をアレンジして伝える。


日本の憲法が王政に合うか分からないが、日本みたいな国になればとりあえず平和って事でいいだろう。



「ハハッ!!神の御心にそうよう努力して国民全てが豊かな人生を送れるよう努力します!!」


その時、王達は思った。

やべーー!

やっぱり民衆を苦しめて贅沢してたの見られてたんだ!!

俺ヤベーじゃん。地獄行きじゃん

…もう悔い改めて善行を積むしかないじゃん!!…と。



さて、ここで駄目押しだ。

「私はこの国の行く末を一人の人間として見ていきます」


(略 天使の力が弱く見えてもそれは人間としてあなた達を見るためにあえて使ってないだけなんだからな!)


「ハッ!このランバード三世の名にかけて民を幸せへと導く事を誓います!」


「期待してますよ」


涙を流す王。


この後、王座に座る俺の前に貴族や国の重鎮達が代わる代わる挨拶にくる。


そして王族達と夕食を食べ、ようやく寝室に案内された…


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