6・令嬢の鎧はドレス
師匠ができました。
5歳になった。
痛感しているのは、ドレスは、格闘技に向かない。
当たり前だけど。
舐めてたドレス。
恥ずかしいけど俺は現在、ドレス1人で着れない。
御令嬢の生活も慣れたチャ慣れた。
風呂も、裸にされてるのも人任せ。
身体も髪も洗うのも人任せ。
風呂上がりにはクリームとか香油?などを塗られ
髪を乾かしてもらい、ネグリジェ?ナイトドレス?
ともかく、パジャマじゃないヒラヒラしたものを着せられて
ベッドに寝かされる。
朝も、基本はメイドが起しに来るまではベッドの中。
望まないけど、望めばベッドの中で朝食だって取れるだろう。
顔を洗われ、着替えさせられる。
下着もゴチャゴチャ。
カボチャみたいなパンツに、フリフリのついたパンツをもひとつ。
スカートの様なパニエとかいうのをはかされる。
その日によって、パニエの枚数が違う。
フワッとさせたいドレスの時は枚数が多い。
フワッとしてるくせに着てる本人は重い。
女の人って凄いと思った。
お兄様に聞いたら、男の子の服はもっと簡単らしい。
で、小さくなったお兄様の服を着ようとして家族に反対された。
「折角、女の子なのに。ドレスを一緒に選びたいわ。」
と、お母様が。
「宝石だって、ドレスだって買ってあげる楽しみが。」
と、お父様が。
「ドレスのクリスをエスコートするのが夢なのに。」
と、1番上のマイケル兄様に。
「何着ても、クリスは可愛いいけどやっぱドレスな!」
と、サムズアップして前歯きらりんと光らせた2番目のキース兄様。
「ドレスのクリスが可愛いからなの?攫われるの?
やっぱりクリスは、お屋敷に閉じ込めて誰にも見せないようにしなくちゃ。」
と、泣きながら3番目のチャーリー兄様が。
公爵令嬢にドレスは必須らしい。
5歳には、家族の意識改革はまだ無理っぽい。
でも、朝は1人で起きて走り込みとかしたい。
自主練とか、秘密特訓とかさ。
やっぱ、強くなりたいんんだよね俺。
だって、好きな子ぐらい守れるようになりたい!俺の矜持。
あれ?好きな子?コンヤクシャは王子様だったなぁそういえば。
王子、守ってどうすんの俺。
近衛兵じゃないかそれ!
いやいや、婚約者=好きな人じゃないから。
絶賛、婚約解消に向けて体力強化中だしね。
体力と強さにどう関係があるかは不明だけど
最悪、王子殴って海外逃亡くらいの事は出来る様になりたい。
1人で着替えられなきゃ、話にならない。
ジャージが欲しい。
剣の稽古は、始めた時は幼児向けの簡易ドレスだったから
そのままドレスで稽古してた。
いや、なんか子供の遊び?お嬢様の気まぐれ?
だと思われて直ぐ辞めるだろうと思われていたらしい。
そして、マイケル兄様の希望で剣の先生が代った。
マイケル兄様もキース兄様も強くなって
2人のためにお父様が、国1番の先生を探して来たらしい。
因みにチャーリー兄様は最近、俺に負けた。
ザ・師匠と呼びたくなるような正しく達人、剣豪と呼ばれる人がやってきた。
そして、この
「ロジャーだ。」
という自己紹介しかしなかった先生が恩人になった。
「ドレスで稽古は罷りならん!」
って怒られた。
絶対!稽古は辞めない!って頑張った。
悔しいけれど泣いてしまいました。
涙は武器にしないつもりでしたが、使える武器は多いに越した事がないと割り切りました。
ハンストも覚悟してましたが、滅多に泣かない俺が泣いたので
親父が、結構簡単に折れた(ナミダ)を改めて武器認定。
結果、兄様達の稽古着に巻きスカートの様なヒラヒラを付ける事で
師匠と家族とメイドが妥協しました。
ちょっとヒラってしてるけど、自分で着られる衣装を手に入れました。
この稽古着で、脚の可動域が広がり上段蹴りも軽々できる様になりました。
秘密特訓中に
「クリス〜〜!」
って言いなが走ってきたチャーリー兄様に踵落としが決まったのは秘密。
気を失って本人が忘れてたから良いよね。
パンチじゃなくキックに重点を置いて鍛えてます。
やっぱり可愛い女の子の俺、だから目指すのはナックルじゃなく指輪の映える手。
早朝、目覚めたら稽古着に着替えて広い庭を走る。
シャドーボクシングっぽくパンチを繰り出し
広い庭の目立たない場所で、樹に布を巻き付けてサンドバッグ風な物を作ってキックの練習。
何を目指しているのかな?
純粋に強さ?
いや、婚約破棄です!
あれから、会っていませんが王子様は元気にされているでしょうか?
(棒読み。)
王子の事、忘れ去りそうなもう直ぐ6歳。
お茶会の招待状が届き始めました。
マイケル兄様の愛称はミック