4・VS婚約者?
わ~い。王様だよ。
初めてのお城です。
我が家も3歳じゃ回れないほど広い。
この間は、兄さま達とかくれんぼしてて庭で迷子になった。
迷子になる庭ってどんだけ広いんだよ。って一人ツッコミ入れたりしてる。
使用人なんて覚えきれてない。
筆頭執事のセバスチャン。
メイド長のロザリー。
私の側仕えメイドは、兄弟が多くお姉ちゃん気質のアンヌ。
なかなかの美人。淡い茶の髪を後ろきつくお団子にして布で捲いている。
今日のお伴もロザリー。
馬車には、お父様、お母様、俺クリスティーナ。
使用人用の馬車と護衛は馬でついてくる。
お城は遠くからでも見える。
だんだん近づくと、どんだけって感じで広かった。
門から馬車でトコトコ・トコトコって。
前庭らしい。
大きな玄関?らしいところに着いた。
赤いフロックコートに黒い帽子の紳士が馬車のドアを開ける。
「クラレンス公爵様。ようこそ。」
「うむ。」
「公爵夫人もお待ち申しておりました。」
「相変わらず、紳士ね。トーマス。」
「おや、こちらの可愛らしい姫がクリスティーナ様でいらっしゃいますか。」
「ごきげんよう。」
にっこり笑って見せる。
スマイルは0円。
まだ、降りれない。
ドアマントーマスが抱えて降ろしてくれて。
「あっ・・。」
出遅れてたお父様が悔しそうだ。
最近やっと、脳内がお父様になった。
「オヤじがくれた。」
「お父様でございますね。」
「おとうちゃまからいただきましたにょ。」
お兄様は、セーフ。
過去に姉しかいなかったので
兄貴呼びが身に付いてなかった。
姉貴、いやお姉様って感じになったと思う。
『お母様』はねぇ、直ぐ呼べた。
だって、完全にアレ(おふくろ)とは別者。
いや~、あんな妖艶な美女をお母様と呼べる幸せ。
噛みしめています。
そして城の中。
もう幼児の体力じゃ無理。
お父様に抱かれております。
ひと際大きな両開きの扉の前で降ろされて
母様と父様の間に立ちます。
扉が開かれ向こうの端に玉座が見えました。
やっと到着です。
謁見の間。
お仕着せのお兄さんがススッと近寄ってくる。
「今日は、お二人の初めての顔合わせですので
小さいお子様が緊張なさらない様にとのお配慮で
中庭に面したサロンをご用意させていただいております。」
え!まだ歩くの?嫌だ・・て思ったけど抱っこされてるから、歩くのは人任せ。
でも、抱っこされて移動するのも退屈なんだ。
隣の部屋でした。
午後の日差しが気持ち良く感じられるサンルームの様な部屋。
ひとり掛けのソファー座るのは大柄男の人。
多分王様。
隣のソファーに座るのはお妃様だよね。
そして、逆光でシルエットだけの男の子が二人。
アレ?二人?
あ!俺の婚約者。第二王子だったよ。
背の高いほうが第一王子で王太子?
「よく来たな。そちらがクリスティーナ嬢かな。」
見様見真似のカーテシー。
「まぁ。なんて可愛らしいご挨拶。
ひさしぶりですね。クラレンス公爵、セレナ様も。
セレナ様はもう少し、お城に顔を見せて下さってもよろしいのに。」
王妃様は、お母様のお友達らしい。
「ふむ。」
王様が立ち上がる。
大きな人だ。
190cmくらいありそう。
横も太っているというより、がっちりムキムキ系。
「2人ともこちらに。」
駆けだしかけた弟を兄が手を引いて抑える。
流石王子様、品がある。
「こっちが、兄。ブライアン。」
「第一王子のブライアンです。」
「で、こちらがクリスティーナ嬢の婚約者のイアンだ。」
「第二王子のイアンです。」
「ブライアン殿下、イアン殿下。お久しぶりでございます。」
父が挨拶する。
「こちらが、妻のセレナでございます。
お会いした事もあるかとは存じますが。」
お母様が、にっこり微笑む。まぶしい。クラクラする。
「殿下。お会いできて光栄ですわ。」
見本のようなカーテシー。美しい。
「そして、我が家の宝。クリスティーナです。」
宝って、困る。
「くりしゅちーなでごじゃましゅ。」
「プッ!ごじゃいましゅって笑える。」
言いながら笑ってる第2王子。品が無いぞお前。
それに、親父の殺意を感じねえのか?
「イアン。レディに失礼ですよ。」
ブライアン殿下が窘める。マジ紳士。
「それに、最近までイアンも『王子でしゅ。』って言ってましたよ。」
「レディじゃねえよ。こんなチビ。」
親父の殺意が膨れ上がったよ。
「おーほっほ。そうですわ。レディというのは私の様な大人の女よ。」
また妙なのが、参戦してきた。
凄い。美人。まだ子供だけど。
「姉上!」
イアン殿下が、あぁめんどい。馬鹿イアンが駆けていく。
「お城の中では走らない!」
優等生ブライアンがすかさず注意する。
「レディは、ちゃんと入室の許可を得てから部屋に入って来るものよ。」
王妃様は道理が分かっていらっしゃる。
「おや、我が家の宝玉の登場だ。」
王様が目じりを下げる。
「もうぅ、お父様は分かってないわね。
我が家の宝物は可愛いイアンじゃないの!」
王女は、ブラコンらしい。
「こちらに。クラレンス侯爵家のクリスティーナ嬢だ。
1番上の子。メリーアンだ。11歳になる。
いずれは姉妹になるのだから、女の子同士仲良くな。」
「イアンに婚約なんて、早すぎます。可哀想だわ。
オムツも取れてない様な赤ちゃんじゃないの。」
紅い髪、サファイアの瞳。将来有望なお姉様だ!姉貴じゃーーねぇ!
「もう、オムツはちてません。れでぃにしちゅれいでしゅよ。」
本当のことだから其処は、キッチリ言っておきたい。
でも、美人への挨拶はきちんと決めるよ。
「いっしょうちゅいていきましゅ。」
気が付くと、跪いて握った手の甲に口づけしてた。
だって、言動からちょっと馬鹿っぽいけどそこも可愛いからさ。
「何をなさるの。無礼な!」
扇子が頭に降ってきた。
でも、扇子をブライアンが真剣白刃取りの様に、頭に当たる寸前で止めてくれた。
ブライアンってマジ王子。
あ!本物王子。
気が強いとこもタイプ。
「めりあんしゃま。しゅてき。しゅきかも。」
こちらの世界で、初恋かも。
未来の姑&舅