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第6話「臙脂の盾、山吹の槍」(4/6)


翌日、新達4人はウェンの呼び出しで格納庫を訪れていた。

正確に言えば、呼び出されたのはエイディとノノだけで、新とトロフェは別段呼ばれたわけではないのだが。


「やあ、ウェン。もしかして、完成したのかい?」

「ご名答。あそこの2機よ、ホラ」


ウェンが指差した先には、《神聖帝国》の主力機である“イフシック”が2機、立っている。

しかし、通常の“イフシック”とはだいぶ(おもむき)が異なって見える。


第一に、機体色。

通常、“イフシック”の装甲は翠色で塗装されているが、この2機は違う。

向かって右は眩しいまでの山吹(やまぶき)色、左は少し鈍い臙脂(えんじ)色の装甲を見に纏っている。

そして何よりも、一般機には無い大仰な武装だ。

山吹色の機体は、身の丈ほどもありそうな長さを誇る円錐形の長槍と、一般機のそれよりもやや大型のクロスボウ。

臙脂色の機体は、両肩に提げられた大型の長方盾が2枚。

どちらも武装のせいか、一般機よりもやや大柄かのような印象を受ける。


「おおー! すっごい! カッコいい!!」

「ふふん、でしょう? まあ見たら分かると思うけど、向かって右がエイディ、左がノノの機体よ」


ノノからの賛辞を受け、ウェンは得意げに胸を張った。

心なしか、その後ろで機材を運搬する他の騎士達も誇らしげだ。

ウェンはそちらへ向き直って微笑む。


「あんた達にも感謝してるわよ。私の無茶なスケジュールに付き合ってくれて」

「ああ、素晴らしい仕上がりなのは遠目にも分かるよ。僕達からも礼を言わせてくれ、ありがとう」

「ありがとねっ! これでアタシ達もっと頑張っちゃうから!」


エイディとノノが口々に礼を述べると、騎士達は照れ臭そうに笑みを浮かべながらその場を去っていった。

その背中へ、続けてウェンが言葉を投げかける。


「さて、早速だけど今のうちにこの子達と“イシュローラ”を積み込んでおかなきゃね。あんた達、頼んだわよ」

「了解! 任せといて!」

「積み込む……ですか?」

「ええ。特殊遊撃部隊の母艦……というには、だいぶ小柄だけど」


そう言ってウェンは端末を取り出すと、エイディ達にそれを突きつけた。

覗き込んだ4人が見たのは、とある図面だった。

魔導鉄騎のようだが、人型ではない。

新が見知ったもので例えるなら、それはまるで大型のトレーラーと装甲車を混ぜたような姿をしていた。


「これが小型高速輸送装甲車両“アフサーブ”。あんた達の鉄騎を積んで目的地まで迅速に届ける、特殊遊撃部隊の移動の要になる子よ」

「随分と大がかりだな。いつから建造してたんだ、これ?」

「ざっと半年くらい前に手をつけ始めて、完成したのは……あんたが飛ばされてくる2日くらい前だったかしらね」


ウェンは天を仰ぎながら指折り数え、再び新へ視線を落とす。


「そもそも、特殊遊撃部隊の構想自体はあんたが来るずっと前から始まってたからね」

「なるほどな」

「ところで、この“アフサーブ”は誰が操縦するんだい?」

「あ、確かに。アタシ達が交代でやるの?」

「いえ、それだと私達が出撃した時に“アフサーブ”がポツンと戦場に取り残されてしまいます。誰か別の操縦者がいると思いますよ」


エイディ、ノノ、トロフェが言い合っていると、ウェンが不意にある人物を指差した。

3人と新がその指先を追っていくと、そこにいたのは……。


「私よ」


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