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第5話「降臨、蒼黒の異界騎士」(5/7)


何らかの手段でレーダーを掻い潜り接近してきた《ラミーナ》軍の高速艇。

それを偶然発見した新とトロフェは、完成したばかりの“イシュローラ”でそれの迎撃に向かう。

一方で、高速艇に乗るノイザップも“イシュローラ”の接近に気付いていた。

艦橋内に、敵機の接近を報せる警報が鳴り響いた為だ。


「艇長。敵機が接近しているようだが?」

「はっ。しかしながら敵は1機のみ、問題なく蹴散らせるかと」

「ふん、ならばこちらも鉄騎を出せ。2機もいれば充分だろう」

「承知しました。……ヌイーザ7級同志、ゴダードン7級同志、各自出撃して敵機を迎撃しろ!」

『了解! 行くぜゴダードン!』

『ああ、俺達の力見せてやろうぜ!』


艇長が格納庫へ向けて通信を送ると、通信機越しに威勢のいい返事が返ってくる。

ガゼルのような角を頭から生やした2人の若い兵士が各々の乗機を起動させ、高速艇の発進口から立て続けに飛び出していく。

その様子を見届けたノイザップはゆっくりと腰を上げ、艦橋出口へ向けて歩き出した。


「オレも準備をしておく。アレを蹴散らせば《ユースティル》はもう目の前だからな」

「はっ、お気をつけて」

「ふん、オレを誰だと思っている。貴様らはせいぜい帰還したオレを称える準備でもしておけ」


ノイザップは吐き捨て、艦橋を後にした。

艇長は扉が閉まると同時に舌打ちし、眼前のモニターへ向き直る。

そこでは既に、発進した2機の鉄騎が武器を構え、“イシュローラ”へと向かっていこうとしていた。


「魔導鉄騎、来ます! 数、“ティッドナーヴ”タイプが2!」

「“三角耳”か、上等! コイツの初狩りにゃ物足りねえくらいだ!」


後方に陣取った1機が長銃と頭部のビーム砲を立て続けに発射し、その隙間を縫ってもう1機が手斧を構えて“イシュローラ”へ迫る。

対する“イシュローラ”は横飛びで銃撃で避けつつ、ブレードを引き抜いて手斧と斬り結ぶ。

隙だらけの足元を勢いよく蹴飛ばすと、敵機はうつ伏せになって倒れ込んだ。

と、その瞬間を狙ってもう1機が長銃を構えて引き金を引く。

咄嗟に構えたシールドでそれを防ぎ、倒れた敵を踏みつけブレードを逆手に持つ。

勢いよく振り下ろされたブレードは敵機の背に深々と突き刺さり、その瞬間なんとか抜け出そうともがいていた敵機の手がピタリと止まった。


「────ッ!!」


それを見たもう1機の敵機が、深い慟哭の声を上げたかのように見えた。

次の瞬間、敵機は長銃を投げ捨て手斧を引き抜き、“イシュローラ”へと飛びかかる。

新は慌てることもなくマシンガンを構え、引き金を引いた。

放たれた銃弾は敵機の体を撃ち貫き、次々と風穴を空けていく。

やがて蜂の巣さながらの穴だらけの姿になった敵機は手斧を取り落とし、力なく崩れ落ちた。


「す、凄い……あっという間に2機を……」

「“零式”ン時よりずっと反応が良いな……いい仕事してくれんじゃねえか、ウェンの奴。よし、このまま一気に親玉を狩るぜ」


爆発して炎を上げる敵機に目も暮れずマシンガンを構え直し、その銃口と視線を陸上艇に向ける。

停止した陸上艇の艦橋でその様を見せつけられた艇長は、椅子の上で膝を抱えて縮み上がってしまった。


「ひ、ひいい……ノ、ノイザップ殿! 至急出撃を!」

『なんだ、あの2人はたった1機にしてやられたのか』

『恐ろしい機体です! どうかお気をつけて!』

『なに、心配はいらん。オレにはレウルク首相から賜った新型機があるのだぞ?』

『は、はぁ……』

『おい、発進口を開けろ』


ノイザップの指示に従い発進口が開かれると、1機の鉄騎が射出機に足をかけた。

巨大な腕が目を引く、全体的に赤茶けた機体。

両腕の先端には大きな鉄球が繋がっており、真っ直ぐに伸ばせばその先は(くるぶし)にまで届きそうだ。

背には大型の噴射装置を2本背負い、顔面には大仰な牙のような装飾が施されている。


『ようし! ノイザップ・ムラ、“エルパーグ796”で出るぞ!』


そしてその鉄騎……“エルパーグ796”は勢いよく陸上艇から飛び出し、大地に降り立った。

太く強大な脚で地面を踏みしめた“エルパーグ”は、その視界に“イシュローラ”を捉える。


「ほう、随分と不恰好だな。“ウィノロック”の鉄騎紛いでも模したか? まるで継ぎ接ぎじゃないか」


操縦席の中で、ノイザップは相対する敵の容姿を嘲笑(あざわら)う。

そして次の瞬間には、噴射装置から炎を噴き出しながら“イシュローラ”へ向けて飛びかかった。


────

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