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奉仕する巫女さん

 社務所(しゃむしょ)に着いたらまずは奉仕中の皆にごくろうさまですと挨拶をします。

うちは八時から十七時、十六時から夜中の一時、十二時から朝の九時までの三交代制になっています。

私は学校がある日は十六時から十八時の短い間での奉仕です。 まあ休日なんかは日勤フルで出されますけども。

この時間から、引き継ぎなんかで手が足りなくなるので楽というほどではないですね。

引き継ぎで二勤の人と話をする方と変わり、授与所(じゅよしょ)へ。

そこには通いの巫女の太田さんが居ました。


「こんにちは太田さん」


「こんにちはマリアちゃん」


太田さんは大学卒業してすぐにうちに来てくれた人で、実家は氏子さんです。 その伝手でうちで雇う事になりました。

おっとりしているのに計算が早く動作もキビキビして周りのフォローも万全な頼れる方で、日勤専門なためか今では日勤の守護女神などと呼ばれています。


季節は夏に入ったばかりですが、この時期になると参拝者(さんぱいしゃ)様達の数がグッと減ります。

やはり暑いからですかね?

海外からはけっこういらっしゃるのですが。

私自身はどう見ても日本人な外見だと自負しているのですが、どうも海外の方には白人にしか見えないそうで、境内(けいだい)なんかにいますと私の側に寄ってこられる事が多いです。

大体英語で話しかけてこられて、神社の案内や質問、主に日本人じゃないのにどうやって巫女になれたのか? 自分もなれるのか?(主に女性たまに男性)などを聞かれます。

日本人であると言うと驚かれ、クォーターと言うと海外の方には通じないので祖父がフィンランドの人だと言うと納得されます。

ハーフやクォーターは和製英語なので海外では通用しないんですよ。 最初は困ったものでした。

後、写真は勘弁していただきたいものです。 撮影してくれと頼まれるのは大丈夫なのですがね。


本格的に夏になりますと神社内では忙しくなります。

参拝者が減るのになんで? とお思いでしょうが、神社では夏からお正月の準備が徐々に始まるからです。

今から!? とお思いですか? いえいえ遅いくらいですよ。

お正月は一年で最も忙しいとき。 「稼ぎ時」なのです。

諸々の準備が必要なので、暇な夏のうちからお正月の授与品(じゅよひん)(お守りなど)、縁起物のデザインや発注数の検討などが行われます。

干支の授与品は毎年変わるものですからね。

とはいえ、夏の行事である夏祭りなどの準備も並行して行うのでそればかりという訳ではありませんが。


後、神社によっては、お正月のアルバイト募集も始まる所もあるでしょう。

神社ではアルバイトは助勤(じょきん)と言います。

お正月助勤ですが、募集は「巫女」さんだけとは限りません。 神社によっては男子学生の募集もしているところもあったはずです。 ちなみにうちは募集していません。

巫女さんと違って裏方の力仕事などになるかもしれませんが、神社やお寺で年越ししてみたいなぁ、という方は検討してみてはどうでしょう?


おっと、参拝者の方がこちらにいらっしゃるようですよ。

初老の夫婦の方のようです。 


「「ようこそお参りくださいました」」


太田さんと二人であいさつをします。 


「どうも、お守りを見させてもらいます」


「ごゆっくりとごらんください」


ニコニコした笑みを浮かべながらお守りを見ていらっしゃいますね。

二人は相談しながら、どのお守りにしようかお話ししていらっしゃいます


「すいません」


「はい」


太田さんが対応に出ました。


「家内安全のお守りを2つ」


指を指されたのは横型お守りという形のお守りで、これは長方形の形をしています。

私は確認しつつも手早く御袋に入れます。


「こちらの二体でよろしいでしょうか?」


お守りは一体、二体と数えます。


「一体600円で1200円お納めください」


「どうもありがとう」 「ありがとうございます」


とお二人が立ち去っていく背中に。


「「ご苦労様でした」」


とお辞儀をしてお見送りをしました。

神社では何かお授けした時も(買われるという意味)ありがとうございましたとは言いません。

これは売買ではないからですね。

助勤の巫女の方で、普通の接客業を経験された方はよく「いらっしゃいませ」と口に出してしまわれますが、これも神社では使いません。

基本的には「ようこそお参りくださいました」ですね。

帰りなどは「ご苦労様でした」と言って、参拝者を送り出します。

このように様々な決まりというものがあります。


他に気を付ける事は。

私語は慎みましょう。

元気にハキハキ話しましょう。

言葉遣いや態度に気を配りましょう。

忙しい時間にも参拝者にはきちんと対応しましょう。

適当に答えずに分からないことは、責任者に確認しましょう。

参拝者に御神酒などを振る舞う場合も、自分たちの飲酒は慎みましょう。

まあ最後は私は確実にやってはいけませんけどね。

これはお正月の助勤の方に言う基本的な物ですね。


そうやっていると、太田さんと一緒に交代で奥に引っ込むことになりました。

うちの社務所は一軒家くらいの大きさで、外に面している所に授与所が。 中は事務仕事をする場所や休憩をする場所。 通いの方用の更衣室。 当然トイレやお風呂もあります。 これは使用する方達でお掃除をしてもらっています。

時間は気づいたら十七時をかなり過ぎていました。 1勤の方はそろそろ帰る準備をしていますね。

2勤の方は早速境内の掃除に出ようとしているので、私も掃除に出ましょうか。


「境内お掃除行ってきます!」


「はーい、頑張ってね」


という声援? を受けて掃除道具置き場へ向かいましょう。


「あ、マリアちゃんも掃除? じゃあ本殿周り一緒にやろうか?」


と2勤の山内さん(6年目)の勧めで一緒に本殿周りをやることになりました。

基本境内の掃除は朝と夕方の二回やります。

山内さんと手分けして掃除を致しまして、終わる頃には十八時間際(まぎわ)となっていました。

社務所に戻り、1勤の方に挨拶して中へ。

2勤の方と少しお話して私も上がりましょう。



続く










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