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さようならの巫女さん

 はい、我が家に帰ってきました。

途中、屋台の匂いに心引かれつつもなんとか振り切って戻ってきた私を褒めてください。

自転車を自転車置き場に置いて、中からシャッターを下ろし鍵を掛けたら、自転車置き場内にある入り口から中へ入ります。

つまり自宅の周りに塀があり、その外側に自転車置き場で、その中に塀の中に入れる入り口があるという訳です。

もっと言うと自転車置き場が塀にちょっとめり込んでる感じですかね。

さて、我が家は神社の景観を損ねないように神社の建造物の影に隠れるように建てられています。

具体的に言うと、社務所の影といった感じでしょうか?

社務所が二階建てでその裏に平屋の家がそっと建っている感じですね。

社務所は小規模から中規模の神社では自宅を兼ねている所もままあるらしいです。 うちは分かれていますけどね。

家の玄関は神社の裏手にあり、基本自宅に用がある方はそっちに向かいます。

自転車置き場からの出入りは勝手口みたいな物でしょうか。

そうやって家の中に入って部屋に向かっていると、お父さんと会いました。


「おう、おかえり」


「ただいま帰りました」


お父さんは、我が神社で権宮司(ごんぐうじ)をしています。 つまり次期宮司ですね。

お父さんの外見はサングラスをしていれば、間違いなく裏社会のボスに間違われると保証できる風貌をしています。

あ、なんですかお父さん? なぜ拳を振り上げ……


頭をさすりつつ自分の部屋に戻りました。




さて、ここで前説明してなかった宮司以外の説明をしておきましょう。


権宮司とは、神社で宮司に次ぐ地位であり副代表者とされます。

大きな神社に限ってこの権宮司という役職が存在しますが、大きな神社で無い場合は権宮司自体定められていないことが多いです。

つまりうちは比較的大きな神社である訳ですね。

前にも言った通り、『権』という言葉には副や仮といった意味があります。

権と付くとその職階のひとつ下の位ということになりますね。

権宮司は主に宮司の補佐を行い、宮司が不在の場合などは代理を務めます。


禰宜(ねぎ)は権宮司の次に地位があり、一般の会社に例えるなら部長といった位になるでしょうか。

権宮司のいない神社になると宮司の次の地位になり、会社に例えると管理職に相当し禰宜が宮司の補佐役になります。

禰宜の定員は普通一人とされており大体の神社では一人しか存在しません。

ですが、神職が多い大きい規模の神社などでは神社本庁の統理で承認してもらった場合に限り、3人~5人程度の禰宜が奉職していることもあります。

ちなみにうちは3人いますね。

宮司や権宮司の指示で、社務や祭儀を行うことから経験を積んだ人がなれる神職です。


権禰宜(ごんねぎ)は、禰宜の下の位にあたり最も一般的な職階です。

宮司や禰宜は基本ひとつの神社に一人と決まっていますが、権禰宜には人数の制限がありません。

しかし、神職を名乗れるのは権禰宜からであり、このことから権禰宜であっても一定の地位を有します。


出仕(しゅっし)は神職見習いであり一般的な会社でいう所の新入社員などに当たるでしょうか。

神職につくには資格がいりますが資格は専門学校や養成所に入学し修了することで取れます。

なので資格を取り権禰宜になるまでは誰もが見習いとなります。

ですので神職見習いである出仕は正確にはまだ神職に当たりません。

また神職経歴にも出仕の間は含まれませんが、権禰宜以上に昇格すると遡って出仕の期間も経歴に入れれるようになります。


最後に巫女です。

巫女になるには資格はいりませんが、色々と厳しい制限があります。

まず性別は女性であることが条件であり、男性はなることができません。

さらに未婚であることや、年齢は高校生~20代後半までと決まっています。

大晦日やお正月の深夜などは18歳以上でないといけないといったこともあります。

また髪型に規制はないようですが茶髪や派手な髪色はダメで、黒髪でひとつに結べる髪の長さが好ましいとされています。

お正月などの繁盛期になると巫女のアルバイトの募集をしている所が多いですがこういった条件があり、またアルバトで巫女の仕事をすることを助勤(じょきん)といいます。


さて神社の役職の名前を紹介いたしましたが、この役職には昇格という物があり、これには勤務成績なども関係してきますがその役職につくために基礎資格である階位が必要になります。


上位から4つの階位に分けられ、これらの段位を取得するには神職としての学識により神社本庁の階位検定委員会で選考試験などを経て与えられるものとなります。

ですが、試験での階位取得は試験の難易度が非常に高いことから試験検定により階位を取得する人は極少数となっています。

なので実際、階位取得者の大多数は神職の養成機関に入学したり階位検定講習を受講するなどの方法で階位を取得するということが多いといわれています。

また階位を取得して神職とし神社に奉職している状態であっても、権禰宜以上になれる段位をもっていなければ神社本庁からは神職としての扱いは受けることは出来ません。

階位を取得することが神職制度の基本中の基本となり神職の出発点となります。




神職には上下のランク付けが3つあります。 それは学識の指標である『階位』、経験功績を反映した『身分』、そして神社内の役職である『職称』です。 

『階位』は神職になるための基礎資格であり、『身分』は神職となった者に与えられるものです。


では階級の段位の種類について説明していきましょう。


1.明階(めいかい)

別表神社という神社本庁が定めた包括している一部の規模の大きな神社で宮司や権宮司になるために必要な資格になります。

神道系の大学を卒業すると明階を取得する事ができます。

ただし、条件として神社での2年間の実習と所定の研修の受講が必要となりますので、卒業後すぐに与えられる訳ではありません。


2.正階(せいかい)

一般の神社で宮司や権宮司、または別表神社で禰宜に就くのに必要な資格となります。

神職養成機関で2年間の全過程を修了するか、階位検定講習会を受講してその後所定期間神社での実習を行うと正階を取得することができます。


3.権正階(ごんせいかい)

略称で権階と言われ禰宜に必要な資格となりますが、宮司になることができる神社もあります。

神職養成機関で1年間学ぶか通信教育での修了でも得ることができます。

また権正階の階位検定講習会を受講してその後所定期間神社での実習を行うことでも権正階を授与されます。


4.直階(ちょっかい)

一般の神社で禰宜になるために必要な資格となります。

正階や権正階などと同じく講習を受講するか、通信教育での修了で取得することができます。

直階を取得することで初めて神職として神社に奉職することが可能となります。


さて段位は4つ、と言いましたが実はもう一つありまして、それが浄階(じょうかい)です。

神職の階位のうち最高位で、明階を得た後、長年神道の研究に研鑽(けんさん)し大きな業績を挙げた者に与えられる希少な階位です。 まあ名誉的な段位でしょうか。


後、階位の名称は天武天皇(てんむてんのう)が定めた『明・浄・正・直・勤・務・追・進』の位階用語を用いていますが、神道の大切にする『(きよ)く明るく正しく(すぐ)き心』を表している呼称であることは間違いないと思います。


さて次に、神職養成機関とはなにか?と思われているでしょう。

なのでその紹介を。 

まず高等課程(大学)として國學院大學(こくがくいんだいがく)皇學館大學(こうがっかんだいがく)があり、所定の課程を修了すると卒業時に正階が授与されその後2年間の神社奉仕と各種研修を経て、明階が授与されます(以前は卒業時に明階が授与されていました)。

直階・権正階・正階 については上記2大学のほか、全国いくつかの神職養成機関 (高等課程に対する普通課程)での講習会受講で授与されるケースがあります。この研修は非常に厳しいもので、実施の目的も『祠職・家職を緊急に引き継ぐ必要がある』、つまり急に実家の神社の跡を継ぐ必要が生じた等の者に資格を授与するため となっています。 ですから一般人が『教養のため』とか『資格を取ってみたい』という気分で受講することは許されていません。

その他、検定試験という道もありますね。


最後に、神職身分について説明します。


神社界では、現実的には階位よりもこちらが重視されています。

装束の区別もこの身分を元に行われます。

階位とともに着用できる袴の色でも身分が決まってきます。 なので履いている袴を見るだけで神職の身分がわかるのです。


身分は特級、一級、二級上、二級、三級、四級の六等級に分かれています。

これらは神職の経験や神社に対する功績などによって決まられています。


特級は神社本庁統理、神宮の大宮司及び表彰規程第二条第二号の表彰を受けた者。

袴は、白に白の文様が入っているもので、一級に比べ文様のサイズが一回り大きいものとなります。

大きな神社の宮司などの、一部の神職しか着用することができません。


一級は神宮小宮司、表彰規程第二条第一号の表彰を受けた者及び浄階で身分選考委員会を経た者。

袴は、紫色に白い文様が入っており、二級上に比べ文様がくっきりといています。

一級には神職全体で約1%しかなることができないとされ、200人程度しかいません。


二級上は神宮禰宜、別表神社の宮司・権宮司及び二級神職で身分選考委員会の選考を経た者。

袴は、紫色に薄い紫の文様が入っているものになります。

神社の宮司でもベテランの方などしか着用できません。


二級は神宮禰宜、別表神社の宮司・権宮司及び三級神職で身分選考委員会の選考を経た者。

袴は、紫色で文様などは入っていません。

位置的には中堅の神職の方たちとなります。


三級神宮権禰宜又は宮掌(くじょう)及び権正階以上の階位を有する者で四級はその他の神職。

袴はそれぞれ、浅黄色という薄い青緑のような色をしているものとなります。

若手の神職の方であり、青よりの浅黄色や緑よりの浅黄色など神社によって少し変わってきますがこのような色の袴を着用している方は三級、四級の神職の方となります。


このほかの袴を着用している方たちは神職ではなく、事務員や研修中の方などに見られます。


特級の統理と神宮大宮司、二級の神宮禰宜と別表神社の宮司・権宮司は『属職身分(ぞくしょくみぶん)』とされ、その職を退けばその職に就く前の身分に降ることになります(例外あり)。

特級・一級は原則として浄階、二級上・二級は正階以上を有する者でなければ任命・選考の対象となりません。

特級の身分を有し最高の功績状を授与された者には、特に『長老』の敬称を贈られることがあります。

権正階以上の階位で神社に初めて奉職する場合はまず三級の身分となります。


とまあ、長々と説明しましたが少しは神社の事が分かっていただけたと思います。

これをきっかけにお参りしてみようかなと思っていただけたら嬉しく思います。


それではまだ語りたい事は多いですが、これにて終わらせていただきたいと思います。

またどこかで出会えることを願って最後の言葉に変えさせてもらいます。




これにて”白石マリアのまったり巫女さんの日々”は終わりとさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 説明がわかりやすい [気になる点] 巫女 なり方 [一言] 所作の端まで気が行き届いた白石マリアが魅力的でした
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