薄毛転生フサフサ
ノリと勢いで作った処女作です。
つたない文章で恐縮ですが、なるべくおもしろい話ができるように頑張ります!
作品へのコメントとおススメの育毛剤があればぜひお願いします。
――かつて人はみなフサフサだった。
しかし、進化というものは残酷で、ときに不要と切り棄てられる。
それがのちに、必要であるとわかったとしても……
現代。進みゆく文明の進歩に反し、後退していく存在に心痛める人間はそう少なくはない。
かくいう私もその一人だ。
週末の昼下がり、来客に反応して甲高い電子音が部屋に鳴り響く。
「おとどけものでーす」
配送業の若い青年は私のサインを受け取ると次の配達先へと足早に去っていった。
片手で持てる程の段ボールを抱えてリビングへ向かう。
この開封こそがその日の一大イベントだった。
ガムテープをはがしガサゴソと音を立てながら緩衝材の山からお目当ての代物を探し出す。
『強力発毛剤スーパーゼット』
全国的に品薄で通販限定商品のためなかなか手に入らない激レアモノだ。
しかし、その分ネットの評判はすこぶる高い。
「こいつは期待できそうだ」
乾いた唇を舌でひと舐めする。
その行為に意味などないと頭ではわかっていても、ついやってしまう高揚感がなす衝動だ。
使い方の説明書を放り投げキャップを開けて頭に振りかける。
世に出回っている発毛剤の使い方なんて総じて似たようなものだ。
数滴を頭皮の根元に垂らして、よく揉む。
爪を立てるのはご法度だ、荒れた土壌ではよい作物は育たない。もはや常識だ。
指の腹で丁寧に頭皮を吊り上げるようにマッサージすることが豊作への近道だ。
「おぉ、これはすばらしい」
多くの発毛剤と人生を共にしてきた私だからこそわかる頭皮の活性具合。
毛穴から浸透した育毛エキスが内面宇宙にビッグバンを引き起こす。その前兆を感じる。
これまで薄毛を馬鹿にしてきた連中を見返す時が来たんだ。
そう思うと期待と興奮で頭に血が上っていくのを感じた。
「これは、キテる。キテますぞぉ‼」
ボンッ、と何かが弾ける音がした。
俺のテンションが最高に達すると同時に超新星爆発が起きたのだ。
なんと、私は発毛剤の過剰摂取により死んでしまったのだった。