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 ガチャガチャ。そんな無機質な音が静かな部屋に響く。


 洗い物を終わらせたあと足早に部屋に戻った俺は、一人仰向けでベッドに転がりながらルービックキューブを弄っていた。



 ルービックキューブは幾度か遊んだことがあり、その腕前は俺の唯一の取り柄といっても過言ではないと自負している。――のだが。



 ルービックキューブを弄り始めてかれこれ一時間以上、矢野を待っている間を含めると二時間以上経っているが、一向に面が揃う気配はなかった。

 


「痛っ……」



 それどころか、俺の顔面に手から滑り落ちて衝突する事態だ。

 しかもこれで累計八回目である。 




 そう、何を隠そう。俺は集中出来ないでいた。


 原因は言わずもがな。今朝見た夢のせいだ。

 あの夢の内容が頭から離れない。

 正夢だと考える自分と、嘘っぱちだと考える自分がいてどうにも集中が削がれる。


 こうして痛い思いをしても、すぐにまた夢の内容がグルグルと頭の中を渦巻いていき、集中力が削がれ、やがて手からルービックキューブが落ちる。先程から繰り返している現象だ。


 こんな毛ほどもない集中力だから朝食を作るときも大変だった。

 初めは卵焼きを作る予定だったのに何故かスクランブルエッグが出来てたし……もうミスの連発。細かいミスは何度したか覚えていない。


 本来なら恩返しの一貫として毎食作ってあげる予定だったが、流石にこの調子じゃ今日は作れそうにない……か。事故ったら悪いしな。


「痛っ……」


 なんて考えていたら、再度衝突。

 これで九回目か。うん。


「もうやめよ」


 いささか決断が遅すぎる気がしないでもないが、俺はルービックキューブを床に落とすとチクタクと忙しなく動く時計を見つめた。

 




 あと十三時間。あと十三時間で今日が終わる。

 そうしたら明日はきっといつものように本調子に………………


 ……本調子に戻れるのか?


 当たり前のように、今日が過ぎれば終わること、そう考えていたが本当にそうなのか。


 そんな疑問が頭に浮かぶ。


 ヴェーチェルになった時もそうだ。明日には戻れる、そう楽観していた結果はこのザマだ。


 同じように、この調子が毎日続いてみろ……恩返しが出来ないどころか、矢野の前で致命的なボロを出す可能性も否定できない。


 ……うん、早期解決が望ましいな。 



 要は夢の真相が気になるわけだ。なら実際に圭介に会ってみるのが一番早いだろう。


 思えば、ヴェーチェルになって以来、森島由宇としての知り合いに会っていなかったし、会うことで元の身体に戻れる進展があるかもしれない。

 外は怖いが、恐怖心を差し置いても行く価値はある。


「よし」


 俺はベッドから立ち上がると、フードを深く被って部屋を出た。

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