抹殺された過去
最後まで読んでいただけると幸いです。
日の傾きかけた公園に、平凡な僕と、この辺りには似つかわしくない金髪碧眼の老人。
僕は普通の高校生。なんの偏りもないような人生。
これはこれで幸せなのかもしれない。
だが、僕はこの一歩を踏み出したことを後悔なんてしていない。
その老人に英語で話しかけた。
「メ、メイアイヘルプユー?」
すると彼は流暢な日本語で語り始めた。
「私はFBIに所属していたものでして、人探しをしているのですよ。
FBI捜査官と聞くと距離を感じるかもしれないですが、こんな老いぼれては大したものではないのですよ。
現に探し人一人探せないのですから。」
と、柔和な笑みを浮かべた。
「少年、よければ私の話を聞いて行ってはくれませんか。この老いぼれを助けると思って。」
海外の人が話す流暢な日本語に今更ながら違和感を覚えつつ、いいですよ、と了承した。
「ありがとうね、少年。それでは失礼するよ。
私は先に述べたように元FBIでね。色々と人に言えないようなことも目の当たりにしてきた。
でもそんな中、私にも生きる希望ができてね。妻と子供ができたのだよ。
だがねそれは、あってはいけない事態だったのだよ。なんせ秘密を重んじる組織で守るものができてしまえば支障がでるのが常識だからね。
だから組織の上の人たちは彼女たちを消そうとした。だから私はそれに逆らって彼女たちを逃がしたのだよ。
ここまで話したら私が探している人が分かったのではないだろうか。」
「わ、分かりましたけど。なぜそれを僕に?」
老人はこちらを見据え。
「君今好きな人がいるだろう?」
僕が動揺すると、見透かしたように笑い
「これでも元FBIだからね」と言った。
「その子のことをどうか守ってくれないか。」
僕は彼を見つめ、静かに頷いた。
老人はニッコリと笑い。
その場から立ち上がり、去って行った。
有難うございました。




