正義のヒーロー取り締まり係
最近よくテレビの中での暴力や違法行為が子供に悪影響を与えるという話を聞く
ヒーローたちがもし現実の世界にいたら?
彼彼女らの行為は法に触れるかもしれない
正義の名のもとに暴力と違法行為が行われるのを休日の朝っぱらから流すのは子供に悪影響を与えないだろうか
そういう考えから書きました。
ジリリリリリリリリーーーー
最新の設備から流れる古くさいベルの音とメインスクリーンに現れた赤色の点が事件の始まりを告げる。
「はぁー またか」
警察官の制服に身を包んだ中年手前の男、黒野はため息をつく。
「しょうがないっすよ先輩」
そう声をかけてくるのは四つ下の竹原だ。
「それじゃ いくか 場所は覚えたな」
「はい先輩 西図書館から少し南ですね」
「よしいくぞ!」
「はいっ」
竹原とともに外に出て右腕にはめた腕時計のような機械を掴んで
「「チェンジ!!」」
そう叫ぶと腕の機械が一瞬光り
全体が変形していき十秒もたつともとの形から完全に違うものになった 機械だけが。
残念ながら警察官は不必要な変装は禁じられているので制服と帽子は変わらない、
「相変わらずこっ恥ずかしいなあ」
黒野はそう言って大きく姿を変えてパトカーのサイレンそのものになった腕の機械をうっとおしげに見ながら夕方の空に飛び上がり、それに竹原も続く。
ウゥゥーーーー ウゥウウウウゥーーーーーーー
サイレンをならしながら二人の警官は民家の屋上を次々渡って猛スピードで住宅街を駆け抜ける。
「この先です」
目印の図書館の横を走る
すぐに小さな児童公園が見えてくる
「あれか」
そこにはそれぞれピンクと水色のふわふわしたドレスを纏った中学生ほどの少女が二人壁際に小学生高学年ほどの少年を追い詰めていた。少女たちから少し離れたところには気の弱そうな少年がスマホを開いたままへたりこんでいる。
「その子を離せ!」
「出たわね 悪の味方」
「このルミナスバリアブルスが許さないわ」
そう言ってキラキラのついたステッキを振り回して黒野に襲いかかる。
「竹原!」
黒野は二人からの攻撃を警棒でやすやすと裁き竹原に情報を確認する
「ルミナスバリアブルス ランクEのピンクとブルーの二人組で活動領域は主に埼玉県東部 タイプAです」
「よしっ 俺たちだけで捕まえるぞ お前はブルーをやれ」
「はいっ」
竹原も警棒を抜き戦いに参加するとすぐに警官側が有利になる。
「くっ ブルー」
「うんっ」
「「シャイニーフラッシュ」」
合わさったステッキから光が溢れだし警官二人の視界を無くす
その一瞬の隙をつきルミナスバリアブルスは去っていった
「くそっ 逃がしたか」
黒野が悪態をつく
「まあまあ先輩 それより大丈夫かい?」
「はい もう大丈夫です ありがとうございます」
「怪我は無さそうだね何があったか教えてくれる?」
こういうときは竹原の出番である。悪人顔の黒野はただ黙って怖がらせないことに努める。
「僕たち二人でボケモンやってたんだけど僕がカブリアスとカルーラっていう強いのばっかり使うからずるいってゆうたが言ったらいきなりルミナスなんとかとかいうのが来て 厨ボケ? を使うなって掴みかかってきて」
「なるほどゆうたくんっていうのが君ね」
竹原は隣の少年に話しかける
「はい」
「えっと」「龍輝です」
「あっありがとう 龍輝くんの言っていることに間違いはない?」
「はい 僕は勝てなくてムカついたからちょっと言ってみただけなのに ルなんとかが来て」
「通報したのはゆうたくんであってる?」
「はい なんとかが龍輝の服を掴んで脅したから怖くなって」
「よく通報してくれたね ありがとう」
「……………………
少年たちを家に帰らせて警官二人は待機所に帰る。
帰りは機械の力を使えないので歩きである。
「あーそれにしても前より増えたよなぁ」
「そうですね 僕が配属された二年前からでも倍以上なのに先輩は五年前からですもんね」
「あぁ もう五年か 思えば懐かしいなぁ」
五年前
もうすぐ三十だというのに全く出世しない黒野は珍しく警察署の署長に呼ばれて少し浮かれていた。
「失礼します」
「君が黒野か まあまずはこの写真を見てくれ」
部屋に入ると早速ある写真を見せられる。
そこに写っていたのは
「コスプレというやつでしょうか?」
全身を覆う単色のスーツに同じ色のマスク、いわゆるレンジャーものの衣装だった。
「そうではない いや 或いはそうかもしれんがこれは単なる衣装ではなく実際に戦闘力を持っていて自分のことをヒーローだと名乗っている」
「現実世界にヒーローですか」
「そうだ 非常に馬鹿馬鹿しいがこれは実在する。そして私が君に頼みたいのもまさにこのことなのだよ」
「はぁ つまり ヒーローに協力しろと」
「いや、その逆だ 君にはヒーローと戦って貰いたい いやこういうと悪役のように聞こえるな 今後はヒーローではなく上が使ってるUPD力不正使用者と呼ぼう 具体的なことはこれを読んでくれ」
……そうしてこの機械をもらってここに配属されてって訳だな」
「そもそもなんでそんなに躍起になってヒーローを取り締まるんですかね? 確かにやりすぎなやつはいますけど強盗とかが減ったって聞きますけどね」
「さあな 上の考えてることはさっぱりだ。なんでも暴力の独占だとか私闘の禁止だとか俺にはよくわからん」
黒野は吐き捨てるように言う。
「僕もです。そういうのがわかる人が出世するのかもしれませんね」
「そうかもしれんな」
そう言って二人の警官は街を待機所まで歩いていった。
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