きっかけと勇気
「――と言う訳で、他の係りから誰か助っ人やってもらえませんか?」
文化祭も間近に迫ったある日のHR。文化祭のクラスリーダーは、誰かが助っ人に立候補してくれるのを待っていた。
でも、皆忙しくて助っ人をやる余裕もないのか、誰も立候補しない。
斯く言う私も、立候補していなかった。
いや、出来なかったのだ。
昔からそうだった。
ドジで、要領も悪くて、何をやっても上手くいかない。そんな私は、気がつけば私から自信を根こそぎ奪っていた。
今では、人と話しをすることでさえ極度に緊張してしまい、自分から人に話しかけることなんて出来ない。
ましてや、自分から何かに立候補するなど・・・出来るわけ無い。
もうこの性格と接して十六年になっていたけど、わたしだってこの性格に満足しているわけではない。
高校生になったら変わろう。そう思ってたのに。
気が付けば変われないまま一年が経った。
『このままでいいの?』
――いいわけない、けど・・・。
『けど・・・って。そんなこと言ってたらいつまで経っても変われないよ』
――うん。でも・・・。
『大丈夫。××は、無限大の可能性を持ってるんだから。それに、私も一緒だし、ね?』
――頑張って・・・みようかな。
『その意気だよ。頑張ろう!』
『知ってた?
ほんの少しの勇気と、きっかけがあれば、人って変われるものなんだよ。
私たちは、まだまだ変われるの』
かつて、唯一の友人に言われた言葉を思い出しながら、ゆっくり深呼吸した。
これは、自分を変えるチャンス。
自分を変えるきっかけ。ならば、あと私に必要な物は・・・ほんの少しの勇気。
震える体を抑えて、ゆっくり、ゆっくり手を挙げる。
「あ、あの・・・わ、わたし、やります・・・」
何故か、さっきまで騒がしかった教室は静かになっていて。視線が、集まった。
九時四八分
時間が、止まった――――気がした。
えっと、これからどうすればいいのだろう・・・
私の頭はいとも簡単にショートした。
『頑張ったね』
そんな友人の優しい声が聞こえたのは、きっと空耳。
たとえ貴女がいなくとも
あなたの言葉が力をくれる。
ありがとう
その言葉を風に乗せて
貴女に届きますように・・・
今この瞬間から
ほんの少しの勇気を胸に抱いて。
私は、私を変えていく
きっと誰もが、無限大の可能性を持っているから