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第3話試合開始

ローグは自分の試合が始まるまでの間控え室の天井をしばし眺めていた。


それは昔からの緊張をほぐす癖であった。


(今日は今まで以上に緊張が凄いな。兄さんもこれを体験してるんだ・・・俺も全力で戦わないと)


等と考えていると急に、


「おい!」


ローグに向かって叫ぶ声がした。


ローグも声のする方に顔を向けると、1人の男が近寄ってきた。


「お前、あのルイーズ・ハトゥスの弟なんだってな。しかもあのアーロミノト2人目。この大会の長い歴史の中でたった2人・・・ふっ笑わせてくれるな」


この悪態をついている男、ローグの対戦相手ネーレ・シュナイゼルだ。


髪の毛は金髪で右もみあげを三つ編みに編み込んでいる。耳には5連ピアス、首にはネックレスをしている。


シュナイゼル家は貴族の中でも上級貴族である。


因みにローグと言うより、アーロミノト以外が皆貴族の血を引いている。


「それで?何が言いたい・・・」


ローグが静かに言うと、


「わっかんねぇかな~、この舞台から降りてくれって言ってんだよ」


ネーレがローグの肩に手を乗っけた。


「もちろんタダでとは言わねぇさ、お前さえ良ければ・・・」


と言いかけた時、


(パシッ!)


「あぁ!てめぇ何しやがる」


「その辺にしといたらどうだ」


「アラストル!」


アラストルはネーレの手を掴み睨み付けていた。


「何だよてめぇ、そう言えばさっき廊下でのやり取り見てたけどよ~なんだありゃ。結局落ちこぼれは落ちこぼれとしか仲良く出来ない!!こんな皮肉な事ないよー!!」


(アラストルが落ちこぼれ?一体何の事だ?)


ローグが そんな事を考えていると、


(ドクン!バッ!)


アラストルが掴んでいた腕を離し、そのままネーレに殴りこんだ。


しかし、


「!?ロ、ローグ・・・」


何と今度はローグがアラストルの拳を、ネーレの顔をに当たる紙一重で止めた。


「ネーレとか言ったなぁ・・・確かに俺も兄さん、そしてスタルヒン提督もアーロミノト出身、落ちこぼれだ何だと言われても仕方がない。だがな・・・」


ローグはアラストルの拳を離し、改めてネーレの顔を見直した。


それを見たネーレも、


「へへ、てめぇそんな顔も出来んのかよ・・・」


(ローグ・・・)


さっき廊下でやり取りしていた者とは思えないほど、それは別人のような顔付きをしていた。


そんな空気を先に割ったのは、


「ねぇ、いい加減そんな話やめたら。それよりあんた」


「あぁ!」


今度はアイリスが呆れた顔をして話に入ってきた。


「第一これから戦うんだからそこで決着つければ良いじゃない。それとも、あなたがさんざん落ちこぼれと言った相手を買収するって事は・・・」


「何だよ」


「自信がないんだ、もしかしてこの大会も親に頼んで出してもらったとか?」


アイリスが嘲笑った言い方をしていると、ネーレがアラストルとローグを押し退け近付いて行った。


「てめぇ・・・この俺に喧嘩売ってんのか!」


「あら?図星だったから余計に腹がたったのかしら?」


「んの・・・野郎!」


(ダダダダ!)


「死ねー!!」


ネーレがアイリスに殴りかかった。


しかしそこに、


「そこまで!!」


控え室の扉が開くと同時に、女性の制止の叫び声がした。


「全く!何がどうしてこうなったかは聞きはしないが、これから戦うというのに選手に選ばれたと言う精神は無いのか!」


この女性はクレスラ国軍所属ハーネス部隊第3師団師団長アルミン・ウィル・ハーネス大佐である。


「特にローグ!」


「はい!!」


ローグはきょうを突かれたのかちゃっかり敬礼をしていた。


「大きくなったな・・・ルイーズとお前の父親の葬儀以来だな」


「はい、ご無沙汰しております!アルミン大佐もお元気そうでなによりであります!」


「あぁ、それはそうとローグ、これでは兄が悲しむぞ」


(ピク!)


ローグは痛い所を突かれ少しうつむいた。


「すみません・・・」


アルミンもそれを見たからなのか、


「試合開始10分前だ、1回戦の選手は準備しろ。準備出来しだいリング入り口まで来るように!以上!!」


そう言い残しアルミンは控え室を出て行った。


それからしばらくたってからローグが動き出した。


(カチャン)


清劉を腰に差し控え室を出ようとした。


その時、


「ローグ・・・」


後ろからアラストルに声をかけられた。


「・・・」


しかしローグはアラストルの顔を見ただけで、特に何も話はせず控え室を出て行った。


ネーレも同じく憤怒の感情剥き出しで控え室を出て行った。


そして、


(パンパカパーパッパッパッパー!!)


「皆様大変お待たせ致しました!!これより第1ブロック1回戦ローグ選手対ネーレ選手の試合を始めさせて頂きます!!」


(イェーイ!!ヒューヒュー!!)


観客からの歓喜と声援が上がった。


「それでは選手の入場です!!第1コーナー歴代優勝者現スタルヒン提督、そしてもう1人の優勝者、今回来賓席に座っているルイーズ・ハトゥス大佐の弟・・・今大会3人目になれるかー!!アーロミノト代表ローグ・ハトゥス選手!!」


(イェーイ!!ヒューヒュー!)


実況がローグ紹介した時観客席から、


「ローグ!!頑張ってー!!」


ローグが向くと母エミカそして、


「ローグ!!頑張りなさいよー!!お兄さんもー見てるんだからねー!!」


(ルミル・・・来てたのか・・・)


ローグはその姿を見た時何故か心が楽になった気がした、何より一瞬ルイーズの姿を見て安心した。


そして心の底から何か楽しみや嬉しさが込み上げてきた。


ローグがそんな事を考えていると実況が、


「続きまして第2コーナー!!かのシュナイゼル家の後継者と称された男・・・その実力は正に未知数!!クレスラ国国公立代表ネーレ・シュナイゼル選手!!」


「やっとてめぇを正々堂々ボッコボコに出来る時が来たなぁ!!」


ネーレがローグに向かって叫んだ。


そしてローグもネーレに向かって、


「そうだな、でもその台詞さっきの事も含めそっくりそのまま返してやるよ」


ローグもネーレも内心バチバチだった。


そしてとうとう、


「それではルール説明をさせて頂きます!とは言えルールは簡単選手どちらかがリ場外、または戦闘不能になった者が負けになります。因みにリングには特別の魔方陣によりいかなる衝撃魔法も防ぎますので存分に暴れまわってください!!試合開始のゴングです!!」


(カーン!!)


開始の合図同時に、


「行くぜー!!くらいやがれー!!」


先に動いたのはネーレだった。


(タン!)


「うぉぉぉぉらーーーー!!」


(ズバーーーーーン!!)


ネーレは登録武器長槍タスクを高く振り上げ、一気にローグ目掛けて降り下ろした!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ネーレ選手いきなりの大一撃!なんとネーレ選手リング場を叩き割った上にローグ選手の立っていた場所が砂ぼこりが立ち込め、全く姿が確認出来ませーーーーーん!!」


「そりゃそうさ、姿所か肉片すら残っちゃいねぇよ!!」


ネーレが満面の笑みをこぼしていた。


それを見ていた主賓席にいるルイーズをしりめに、


「いやぁ~流石シュナイゼル家!今年も魅せてくれますなぁ~、また今年も決勝はシュナイゼル殿ですかな!それに比べて、ルイーズ殿の弟君も残念でしたなぁ~、相手が悪すぎましたなぁ~!!」


実は主賓席に座っている者達も、多くは選手の血縁つまり貴族なのだ。もちろんルイーズやスタルヒンかたやローグも含め、いくら実力行使の試合とは言ったものの面白く思わない者が沢山いる。


だが、


(そうやって貴族同士ゴマのすりあいをしていれば良い・・・俺の・・・ローグはあんな攻撃で殺られやしねぇさ。今回はあいつとアラストル、この2人が決勝に勝ち進むんだからな!!)


ルイーズは心の中でほくそえんでいた。


それは観客席で見ていたルミルも同じ気持ちであった。


そしてそれに答えるかのようにローグも、


「ケホッケホッいきなりやってくれんな~」


「な!」


「おおおおおおおおおおおっとこれは!ローグ選手ネーレ選手の攻撃をかわしていたーーーーーーーーーー!!」


(当たり前だ)


ルイーズは微笑んでいた。


そして攻撃を避けられたネーレは、


「てめぇ!」


「今度はこっちから行かせてもらうぜ!!」


(ダダ!)


ローグはネーレの懐に飛び込み、


「列破掌!!」


(ダン!)


「がは!」


ローグは掌に気を固めてネーレの胸目掛けて技を放った。


続いてローグはネーレの長槍を掴みそのまま、


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


(バーーーーーン!!)


「グオッ!!」


ネーレごと地面に叩き付けた。


それを見ていた主賓、現シュナイゼル家当主バース・シュナイゼルが立ち上がり、


「ネーレ!お前はこんな所でシュナイゼル家の名に泥を塗るつもりか!!」


「クッ!わかってるんだよ~んな事わよーーー!!」


ネーレはそのままローグに向かって、


「飛燕脚!」


(ドス!!)


「かは!!」


ネーレの背面ドロップキックがローグの腹部に重く入った。


「グゥ!!」


(タンタン!)


「今の流石にキツいぜ!」


ローグの口から血が滴り始めた。


それを見てネーレが、


「てめぇ・・・当たる瞬間後ろに飛んだな?」


「へへ、でもさっきのは少し焦ったぜ!あんた強いな、甘く見てたよ」


ローグは血を拭いながら体勢を立て直し、


(カシャン)


「やっと抜いたか」


「あぁ、改めて勝負しようじゃねぇか!ちゃんとした正々堂々の戦いおよ!」


今まで抜く事のなかった清劉を初めて抜いた。


そんななかバースが、


「ネーレ!何をしている!そんな相手に何てまどっている!わかっているのか?今回優勝出来なければお前はシュナイゼル家当主にはなれないんだぞ!」


(ギュッ!)


ネーレは拳を強く握り締め、


「なぁローグ・・・こんな事もう言わないと思ってたが、頼む!ここで引いてくれねぇか!」


ローグは少し戸惑った。


さっきまでのネーレとは違い、真剣な眼差しと言うより目が涙ぐんでるようにも見えた。


そしてローグは、


「ネーレ・・・お前の気持ちは良くわかった」


ネーレはその言葉を聞き、顔が晴れた。


「じゃあ!」


だが、


「でもわりぃな・・・俺もこの戦い譲れねぇんだ。どうしても越えなきゃいけねぇもんがあるんだ!」


ローグはそう言い、ルイーズを見上げた。


そしてルイーズと目が合った。


(そうだ、お前はそんな所で止まるような奴じゃない!!)


「ネーレ、俺とお前・・・背負っているものは違えど、お互いに重いものを背負っているのは間違いない。だから本気の勝負をしないか?それならどっちが負けても恨みっこなしだ!」


ローグはネーレに大きく問いかけた。


するとネーレが急に、


「ふっ、ふふふ、はっはっはっはっ!!」


「ネーレ・・・」


「はぁ~あ、お前には敵わねえな・・・。初めてだよ、お前みたいな奴・・・」


(チャキ)


ネーレは長槍を納めた。


それを見たバースが、


(ガタン!)


「ネーレどういうつもりだ!そんな奴と話時間があるなら、早くそいつを倒せー!!」


そう叫んだ時ローグが、


「あぁもうさっきからうるせえんだよオッサン!あんた黙って見てらんねぇのか!」


バースに叫んだ。


「家だ当主だは俺にはわかんねぇけど、今戦ってんのはあんたの息子じゃねえか!恥だ何だとさっきから言ってるが、俺から言わせればいちいち大声を出してるあんたの方が、よっぽど恥ずかしいぜ!!」


「うぐぐぐぐ!」


ローグにそう言われ、今にでもぶちギレそうな表情を浮かべていた。


そんな時、


「ローグ!」


「?!兄さん!」


ルイーズが叫んだ。


「ふぅ~、バース殿」


ルイーズはバースに向き直し、


「んな!」


「ルイーズ!」


「お兄さん!」


「兄さん!」


「何の真似だ?」


ルイーズが頭を下げたのを見て、全員が驚いた。


「我が弟が、とんだご無礼をはたらいた事お許し下さい」


「ルイーズ殿」


バースが一言言った後続いて、


「しかしローグの言葉にも一理あります。今は貴方のご子息様を、純粋に応援してあげてはどうでしょうか?」


そう言いルイーズは微笑みを浮かべ、バースに問いかけた。


(タッタッタッタッ)


そんな話をしている中ローグがネーレに近づき、


「なぁ、さっきも言ったけどあくまでも今は俺達の試合をしないか?今だけ楽しまないか?」


「・・・」


ネーレは少し戸惑った、何より背負っている物を考えていた。


(これで勝たなきゃ!!俺は!!)


心の中で葛藤知っていると、


「ネーレ!!」


「!!親父・・・」


「・・・すまなかった!今日は何も考えず、自分の思うまま存分に戦いなさい!」


「親父・・・」


ネーレはバースから目線を外さなかった、それはバースも同じであった。


今の今までネーレに対し、自分の息子と言うよりシュナイゼル家の息子と家柄を大事にしていたからである。


因みにバースも今まで、ネーレと同じように育てられて来た。


そして今、ルイーズやローグに改めて言われて心を痛めた。


それからルイーズもローグに、


「ローグ!お前もあれだけでかい口を叩いたんだ!つまりそれ相応の自信があるからかー!!」


真剣な眼差しで叫んだ。


勿論ローグの答えは決まっていた。


「兄さん!そんな事決まっているじゃないか!確かに、今日はとてつもなく緊張した・・・でも!それよりも嬉しさと楽しみの気持ちが大きく!心が弾んだ!そして何より・・・」


ローグは一度深呼吸をし、そして、


「何より!兄さんの目の前で俺の全力を見てもらえる事が、何より嬉しかったー!!だから・・・だから兄さん!」


ローグは観客席にいるエミカに体を向けた。


そこでローグは改めてルミルの姿を確認した。


「ぐっ!母さん!ルミル!見ていてくれ!!」


目に涙を浮かべ叫びきった後ルミルが観客席から立ち上がり、


「あったり前でしょ!!勝とうが負けようがローグを見てる!!お兄さんもお母様も勿論私も応援してるんだから、カッコ悪い試合は見せないでねー!!」


続いてルイーズも、


「その通りだ!ローグ・・・お前は、俺の自慢の弟だ!勝ってここに来い!だが・・・ネーレ殿!貴方も全力で戦いなさい!今までの気持ち全て弟に叩き込みなさい!」


そう言われとたんにネーレが、


(スー)


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


(!!ビリビリ!!)


空に向かって、叫びだした。


そして叫び終わると、


(何だよ・・・お前もそんな顔も出来んのかよ!)


さっきまでローグやアラストル、そしてアイリスに対して悪態をついていたとは思えないほどの真剣で、且つ吹っ切れたような顔付きをしていた。


それを見たローグは嬉しい気持ちになった。


そこでローグも、


(スー)


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


空に叫んだ、そしていきなり、


(バッ!)


ネーレに向かって突っ込んでいく!


(チャキ、ギャイーン!)


ローグの居合いをネーレが止め、そのまま、


(カシャン、ザン!)


清劉を凪ぎ払いローグを切りつけた。


(パシッ、ガン!)


さらにローグは刀を持った右腕に力を入れ、ネーレの槍を止めそのまま追尾で束を叩き込もうとした。


だが、ネーレもローグの攻撃を止めるなど一進一退の激しい攻防戦が始まった。


そしてルイーズやバースも席に座り、


「バース殿、先程は大変失礼を致しました。そしてありがとうございます」


バースに深々と頭を下げた。


「うむ、しかしお礼を言われる事は何もしておらんが?」


ルイーズは首を横に振った。


「そんな事はありません、シュナイゼル家は昔からの武道の家訓。あらゆる武器や体術を習得しているため創立からの実技指導は、シュナイゼル家です。うちのように一番下の養成所は、在り来たりの実技しか出来ないので良い経験になります」


そうバースに言うと、


「それを言うならこちらとて変わらんさ。ワシやあいつも含め、今まで会ったことのないタイプの人間だったからな、ましてスタルヒン提督の部下の弟なのだから」


そうしと2人が話をしている中、


(ガン!ギン!バシ!ガン!ダン!)


ローグとネーレの戦いは勢い止まることなく行われていた。


「爪旋牙!!」


ローグは三回転し、その遠心力を利用した三連撃を繰り出した。


(ザシュザシュザシュ!!)


「ぐはぁー!」


ネーレがもろにローグの斬撃を正面からくらった。


(ドスン)


ネーレは背中から倒れた、ローグもその光景を見て構えをやめた。


そして誰もが決着がついたと思った、レフェリーがネーレに近付きカウントを始めた。


「1、2、3、4、、、」


ネーレも微かな意識のなかでレフェリーのカウントを聞いていた。


(あぁ、俺負けたのか?悔しいな・・・、ん?悔しい?違うだろ!)


(すぅー!)


ネーレははっきり意識を取り戻した。


「8、9!」


レフェリーが手を挙げようとしたほんの差で、ネーレが、


「ごふっ!ま、まだ・・・終わっちゃいねぇぞ!」


槍を杖にして立ち上がった。


「今のは、マジで効いたぜ!」


ネーレが笑いながらローグに言った。


「今完璧に決まったと思ったんだけどなぁ、まさか魔力障壁まで使うとは思わなかったよ」


そう。


ネーレはローグの斬撃が当たる寸での時に、身体正面に障壁を張って一時を逃れた。


だか逆に言うのであれば、障壁を張ってあの威力、さらに言うのであれば障壁が無かったらどうなっていたか。


「はぁ、はぁ、ローグ。俺は今の今まで自分が正直どうしようもない奴だって今になって気付いた。実際こんな家何か嫌だとずっと思っていた、親父や、執事メイド、尊敬の眼差し全てがうっとおしいと思っていた。

だけど今日は逆に凄くありがてぇって初めて思ったよ。」


「ネーレ」


ネーレは肩で呼吸をしながらローグに話始めた。


「お前みたいなすげぇ奴とやり合う機会があるとは思ってなかったからな、俺はずっと試合は相手に負けを認めさせるやり方しかしてこなかった・・・家の力を盾にずっと逃げていた。そんな俺をお前は引くどころか、どんどん進んで俺と話をしてくれた。そんなお前見ていて、虚勢を張っていた俺がどんなに小さい男かよくわかった。だから・・・その・・・」


ネーレは1度深呼吸をしてローグに、


「あ~ありがとうよ!!」


感謝の気持ちを伝えた。


ネーレは顔を赤らめながら、ローグを見ると、


(キョトーン)


「何だよそのアホ面は?」


ネーレにそう言われ、


「いやぁ会った時の事を考えていたけど、何か気持ちが悪い」


「んな!てめえ!」


それを聞いたネーレが怒った時ローグが、


「でもありがとう、お前がそんな風に思ってくれて俺も嬉しいよ」


ローグはそう言いながら、刀を鞘に納めた。


そして、


(ザッ)


「なら最後はこれで決める。今は試合だからな、ちゃんと勝負を決めねぇとな」


ローグは居合いの構えをした。


それを見たネーレも、


「そうだな。じゃあこれが終わったら飯でも食おうぜ」


「あぁ」


2人は互いに微笑み返した。


そして、


「行くぜ!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ネーレが最後の力を振り絞って残りの魔力を全て放出した!


そのせいで辺り一面に物凄い突風が吹き荒れた。


「おいおいおいおいマジかよ!なら俺だって!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ローグも最大魔力を放出した、互いに魔力がぶつかり合いバチバチ音をたてながらせめぎあっていた。


「行くぜローグ!」


(タン!)


ネーレは天高く飛び上がり、


「出でよ雷!鳴け雷鳴!その大いなる裁きの光でかの者を滅せん!」


ネーレは槍を高らかに構え、周りの雷が槍にまとわり巨大なランスに変わった。


「行くぜ!ボルティモア・グングニル~ーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ネーレの巨大なランスがローグ目掛けて降ってくる。


そしてローグも、


「行くぜーー!俺の必殺技!大斬破!双龍炎熱爆炎陣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ローグの渾身の居合いから、2頭の炎を纏った龍が現れ、咆哮しながらネーレに向かっていった。


(ズッドーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)


互いに技がぶつかり物凄い衝撃音が周りに響いた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ネーレもローグも、一歩も引かない戦いを見せた。


周りの観客からも、


「勝ってローグ!」


「ローグ頑張って!」


「ローグ!」


「ネーレ!勝つんだ!」


ルミルに母エミカ、そしてルイーズにバース全員が固唾を呑んで応援した。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ローグは抜いた刀を振り抜いた。


ネーレもローグに負けず劣らず、


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


投げた槍を投げきった。


2人の技も最後までぶつかり合いそして、


(どっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)


空中で大爆発を起こした。


爆風は会場全てを包んだ。


それから数秒、爆風は収まり辺りは砂と土埃が舞っていた。


(ガシャン)


「ゴホッゴホッ、全く、ローグったら!お母様大丈夫ですか!」


ルミルがエミカの肩に手を置いた。


「ゴホッゴホッ、えぇなんとかルミルちゃんは?」


「私も大丈夫ですよ」


反対側の来賓席も、


「ゴホッゴホッ、あいつらこれはやりすぎだ!バース殿お怪我は?」


「ゴホッゴホッ、あぁ大丈夫だすまない。しかしこれは・・・」


全員何事もなく無事だった。


そこでルイーズが、


「あの2人は?」


と叫んだ時、ある1人の男性が、


「いたぞ!誰か立ってる!」


「ローグ!」


「ネーレ!」


ルイーズとバースが叫んだ。


2人の姿が露になると、2人はボロボロになって互いに構え向き合っていた。


そして、


(バタン!)


「「な!」」


先に倒れたのは、


「ゴホッゴホッ、ネーレ選手戦闘不能!」


レフェリーが咳き込みながら現れ、ローグに向けて手を挙げた。


そして、


「第1回戦は・・・ローグ選手の、勝ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー利!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


そう叫ぶと、


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


一斉に観客が沸いた。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!凄かったぞ!良く頑張った!最高の試合だったぞ!」


2人に大きな声援が贈られた。


それを見たルミルもエミカも、


「良かった!本当に良かった!」


「おめでとうございます!ローグかっこ良かったぞ!」


涙を浮かべて、笑っていた。


かくゆうルイーズも、


「全く!我ながらにあの弟には毎回驚かされるよ・・・まぁでもおめっとさん」


ローグに小さくも声援を送った。


それから、


「バース殿」


身体を向けて、


「あなた様のご子息は本当に有能でありました、ローグを代わり私から感謝申し上げます。ありがとうございました」


ルイーズは深々とバースに頭を下げた。


そしてバースも、


「礼を言わなきゃいけないのはこちらだルイーズ殿、そなたらには気付かされてばかりじゃった。顔を上げてくれ、今のワシには勿体無い」


ルイーズはそう言われ頭を上げた。


するとバースはルイーズに手をだし、


「これからもお互いに良い友好関係を築けたらと思う、これからも宜しく頼むぞ」


ルイーズはバースの手を握り、


「勿論でございます。その言葉有り難く頂戴致します」


2人は熱く固い握手を交わした。

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