[5]人格の完成
人間が一生の間になすべきことは、一生命体として完成することです。
すなわち、生命体の特性としての主体性、成長性、繁殖性を完成させることです。
これは産まれてから死ぬまで、家庭をその基本的な場としてなされます。
人間には、生来、これらの主体性、成長性、繁殖性を完成したいという欲望がそなわっており、この欲望が充足されて初めて喜びが生ずるようになっています。
主体性完成の欲望とは、学問、芸術のような知識・美に対する欲望、所有欲、創造欲などをいいます。
成長性完成の欲望とは、自己を心身ともに向上させ、内に秘められた可能性を十分に表現したいという欲望です。
繁殖性完成の欲望とは、性欲とか愛情欲をいいます。
人間は、これらの欲望が調和して満足されて、初めて真の喜びを感じることができ、どれ一つに片寄っても心からの満足はえられず、むなしさが心の片隅に残ってしまいます。
このようにして、一生命体として完成した時、初めて「人間としての資格」を獲得したといえ、「人格」を完成したといいえるのです。
人間は、人間同志あるいは自然と深い係わりをもって存在しており、それらなくして存在しえないといっても過言ではありません。
従って、「自分だけ良ければ」という利己主義的な考え方は、決して正しいものではありません。
自分を取り巻く人間、自然という環境によって支えられている自分であると、絶えず感謝の思いを忘れてはならないのです。