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人生の意味論  作者: いのうげんてん
4章 人間の生命
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[1]人間の特性

[1]人間の特性


 人間は、生物学的には霊長目ヒト科に属する哺乳類で、万物の霊長といわれるにふさわしく、その個体内に物質の構成単位である原子はもとより、下等な生物から高等生物にいたるまでの一連の生命体の構造を集約してもっています。


 例えば、人体の構成単位は、他の生物と同様に細胞であり、植物での導管、篩管は、人体の動脈、静脈にあたります。また、根は胃腸管、葉は肺にあたると考えられます。


 人間がどんな動物のなき声もまねることができるのは、人間の声帯が諸々の動物の発声器の機能を集約的にもっているからとみていいでしょう。


 このような肉体的機能の優位性ばかりでなく、もっと高次な精神的機能においても、人間は他の生物に比べて、きわだっています。


 下等の生物から高等になるにつれて、次第にこの機能は複雑かつ精巧になり、人間に近似していきます。


 例えば、言語を例にとると、人間より下等な動物は鳴き声によって各々の感情などを伝達しています。動物学者は、ガチョウやカラスの鳴き声を解明しているといわれます。


 マガモの研究によると、親鳥とふ化する前のひなは、小さな声を出し合って一種の音声交信をしていることがわかっています。


 これは、野外では1つの巣の卵のふ化が、3~8時間でいっせいに完了するのに対して、ふ卵器で人工的にふ化させると数日かかることに疑問が抱かれ、実験した結果わかったものです。


 すなわち、親鳥がふ化しつつあるひな達に号令をかけて、いっせいにふ化させているというのです。


 さらに下等な蜜蜂にも情報伝達の言葉があります。1匹の蜜蜂が蜜を発見すると巣にもどって来て、その場所を他の仲間に伝達します。


 蜜蜂の演ずるダンスの太陽に対する角度が、蜜のある場所までの距離を示しているというのです。


 一方、人間は、言語によって情報を伝達しています。言語は、人間を他の動物から区別する示標の最も重要なものの1つとされ、人間の生活活動の基盤となっているといっても過言ではありません。


 犬なども鳴き声の差によって、うれしいとき、悲しいとき、怒ったとき、それぞれの感情を表わしますが、いずれも音声の高低強弱程度の差異であって、人間のような意味をもつ多種の単語の組み合わせによるさまざまな意味を伝達するのとは、大きく異なります。


 チンパンジーの子供は、人間の子供に非常に似ており、知的行動においては人間の子供に勝るとも劣りませんが、人間の家族の一員として、ごく幼い時からいくら養育しても、言語を話すようには絶対なりません。


 一方、人間はどんな未開の種族でも言語はもっており、このことからも、言語は人間に特有であることが理解されます。


 このようにみてくると、蜜蜂のような下等なものから高等なものにいくに従い、そのメカニズムが人間のものと近似してくることがわかります。


 すなわち、人間は、万物の霊長といわれるにふさわしく、より低級なものの要素を集約的に内包し、肉体、精神ともに、万物の最高峰に位置しているのです。


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