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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv6.育てろ、神の子を!
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26/68

Lv6.育てろ、神の子を! 2年目

「へ? あーちゃんを? 育てて? どうなるの? ていうか育つの?」

「育つわよ? ゲームの常識は他のゲームでは非常識。18歳まですくすくと。見た目だけじゃなくて、思考パターンとかもあなたの育て方によって変更できるのよ」

「いやいや、育った後どうするんだよ。まさか育ったまま現実世界に?」

「そりゃそうよ。まあ、流石に全てが終わって、元の世界に戻るときは子供に戻っちゃうけど」


 早く大人になりたいらしく、将来どんな大人になるのか想像してニコニコしているあーちゃんと、育成方針で悩んでいるのか、あーちゃんを見て努力値だのドーピングだの、最近プレイし始めたポケデビの育成とごっちゃになっている黄龍。一方の俺は、最初から今までずっと一緒に冒険をしてきたキャラをリストラして、新しいキャラを加入させるような感覚に陥って乗り気にはなれなかった。


「本人だって大人になりたいって言ってるし、話にも絡んでこない幼女を連れ歩くのもいい加減限界でしょ」

「そんなテコ入れみたいな理由で……いいのかなぁ?」

「あーちゃんが大人になってよかったと思えるように、頑張って子育てをすることね」


 確かに黄龍程やかましくもないし、ナビゲーターの役割を持つラボちゃんと違って特に役目もない。パーティーに加入する新キャラを、自分達で作るゲームなんて珍しくも無い。バランスのいいパーティーのために、あーちゃんのために、ここは頑張って子育てをしようじゃないか。



「というわけで、育成方針について考えよう」

「攻撃力と防御力、体力が大事よ!」

「最近ポケデビにハマったからって何ほざいてんだアホ。お前みたいなゲーム脳がいるからゲームが批判されるんだよ。やっぱりここは、女らしい子にするべきだ」

「あら、女らしい子にするべきだなんて、傲慢なエゴじゃなくて?」

「そうよ、アタシが女らしくないとか言ってるアンタに女らしいなんて理解できるわけないじゃない」

「お前は絶対女らしくないと思うがなあ」


 このゲームの基本は1週間の予定を決めることと、休日におでかけすること。3人で熱心に話し合い、最初の1週間は肉体労働と勉強と瞑想をバランス良く入れることにした。


「それじゃああるばいといってきます!」


 まずは肉体労働のアルバイト。設定上は8歳の子供がヘルメットを被って土木工事をするのはどんな層に需要があるのだろうか。日本だったら色々と問題になりそうだが。


『体力が上がった! 根性が上がった! 女らしさが下がった! オシャレが下がった!』

「うんうん、やっぱり体力と根性は大事よね」

「女らしさとオシャレが下がったじゃないか、黄龍みたいになっちゃうよ」

「人を女らしさもオシャレもないみたいに言わないでよ」

「ここだけの話、この前お前とデートした時服が裏表だったぞ。パスタも犬食いしやがって」

「……うぐぐ」


 俺もフォークだけで食べるし偉そうに言える程上品な食べ方ではないけれど、なるべく音は立てないように頑張ったというのにこいつはお皿を持ってズルズルと食べやがる。彼氏が寛容な俺でなければきっとフラれていることだろう。


「さんすうむずかしい……」


 お次は塾でお勉強。このゲームに小学校なんて概念は無く、その都度お金を払って塾で勉強させるのだ。


『理系が上がった! 賢さが上がった! 体力が下がった!』

「ちょっとアンタ、人が折角上げさせた体力を何下げてんのよ! 勉強禁止!」

「そこまでは下がってないだろ。トータルでは上がってるんだから、バランス良くやればいいんだよ」

「さて、次は私の選んだ瞑想ね」


 真っ暗闇な部屋の中で、あーちゃんが正座してぶつぶつと何かを呟いている。明らかに怪しかったのでゲームをプレイした時は一回も選ばなかったのだが、どんな効果なのだろうか。


『闇の眷属に近づいた! 不思議度が上がった! 賢さが下がった! 体力が下がった!』

「ラボちゃんなんてことしてくれるんだよ!? 闇の眷属に近づいたって何? あーちゃんを吸血鬼にでもしたいの?」

「そうよそうよ、体力もトータルで下がっちゃったじゃないの!」

「あら、闇の眷属も悪くないとおもうけど」


 一度決めてしまったスケジュールは変更することができない。結局この後もあーちゃんはバランスよく土木作業と勉強と瞑想をして、大して賢くはならず、体力も女らしさもオシャレ度も下がり、闇の眷属と不思議度とかいう意味不明な値がやたらと上がってしまった。


「まあステータスなんて飾りだよ。肝心なのはコミュニケーション。この休日にどういう行動をとるかが重要だ」

「そうね。とりあえず街に行くべきだと思うわ」


 大事なのはステータスではなく愛。俺達が親として、どうあーちゃんに接するかの方が大事。子供どころかペットすら育てたことのない俺だけど、数々のゲームで色んな生き物を育ててきたからきっとその経験は活かされるはずだ。そんなわけで4人で仲良くお出かけ。適当にぶらついていると、


「お、ゲームセンターがあるじゃないか! ゲームセンターに行こう!」

「何でそんなものがあるの?」

「ある程度は親の嗜好とかが反映されているのよ」


 中世ヨーロッパっぽい世界観をぶち壊すゲームセンターを発見。俺の嗜好が反映されて登場したのなら、行かない訳にはいかないだろうと、止める間もなく我先にと中へ入る。


「なるほど、ゲーム中のミニゲームが遊べるのか。よし、全ゲームで最高ランクを取るぞ……」

「呆れた父親ね。完全に目的忘れて一人で遊んでるじゃないの」

「聞いてくれる? こいつデートでゲームセンターに行った時、私をほったらかして一人用のアーケードを2時間くらいやってたのよ?」

「最低ね。あーちゃん、こんな大人になっちゃ駄目よ?」

「わたしもげーむするー!」


 やはりあーちゃんが一番懐いているのは俺らしく、呆れ顔の黄龍とラボちゃんの言う事には耳を持たず、俺の横の筺体に座ってゲームをプレイし始める。現実世界でも格闘ゲームでラボちゃんをフルボッコにしたり、相当なセンスが垣間見えるあーちゃん。ミニゲームの操作方法を覚えると、横を向いて俺に話しかけながらサクサクとゲームをプレイし始めた。


『オタク度が上がった! 体力が下がった! 賢さが下がった!』

「ちょっとアンタ! また体力下げてるし、オタクになってるじゃないの!」

「憤慨したいのはこっちだよ! どうしてゲームやって賢さが下がるんだ? それにな、ゲームってのは他にも色んな物を教えてくれるんだよ! 諦めない心だってつくから根性だって上がるはずなんだ、他にも、ギャルゲーでコミュニケーション能力を養えたり……ゲームやったらオタク度が上がるなんて、偏見じゃないか! あーちゃん、周囲の批判なんかに負けちゃ駄目だ!」

「うん、はいすこあをめざすよ!」

『オタク度が上がった! 体力が下がった! 賢さが下がった!』

「ああ、また体力が!」


 あーちゃんがゲームをプレイする度に体力と賢さが減って行く。それでも俺は、ゲーマーとして彼女に水を差すことなんてできなかった。



「きょうはたのしかった!」

「うんうん、俺の見込んだ通りあーちゃんは天性のゲーマーだよ」

「……体力の数値が0になったんだけど。アンタのせいで」

「あ、ねこさんだ!」


 たっぷりゲームをプレイして、体力も賢さも初期値から大幅に減り、とうとう0になってしまったあーちゃん。体力が0とは思えない程の元気さで、見つけた野良猫に走り寄って行った。


「将来が楽しみね」


 そんなあーちゃんを見て、ニヤニヤするラボちゃん。幼少期の育成を少し失敗してしまった感があるが、まだまだ取り返せる。絶対にあーちゃんを、強くて可愛いゲーマー乙女にしてみせる!

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