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傭兵の異世界召喚記  作者: 雨宮和希
悪魔襲来編
8/23

炎龍の話

 ギルドに行き、早速ジムのおっさんに戦果を報告すると、びっくり仰天!! のあまりイスから倒れてしまった。


「おい大丈夫かよ」

「お、お前いや、だって、…………いやもういいや。お前が規格外なことはもう分かってる」


 なぜか呆れられたようだ。いや確かに調子乗って倒しすぎたとは思っているが。


「ギルドの依頼ってさあ、事後承諾パターンってアリなの?」

「ああ」

「じゃあこの四枚の常駐依頼受けるわ。ゴブリン、コボルト、ボブゴブリンの討伐依頼な。後……リザードマンと戦狼の討伐依頼も受けたいんだが……要求ランクC以上とかB以上とか書かれてんな。いいのこれ受けて?」

「推奨はされてねえし、実際受けようとすると職員に止められることも多いんだが…………倒しちまったんならしょうがねえだろ。止めようもない」

「そうかい。ありがと」


 そう言って依頼掲示板から依頼を剥がして持ってくる。

 するとしばらくジムさんは、報酬の計算に頭を悩ませていた。



 ◇


 ゴブリンの討伐は5匹で基本報酬300ゼニー。それ以上は1体ごとに20ゼニー追加だ。つまり23体で460ゼニー。

 コボルトの討伐は5匹で基本報酬200ゼニー。それ以上は一体ごとに20ゼニー追加。11体で220ゼニー。

 ボブゴブリン討伐は一体ごとに基本報酬200ゼニー。3体で600ゼニー。

 リザードマン討伐は一体で1200ゼニー。

 戦狼は一体で2500ゼニー。

 合計で、5480ゼニーだ。しかし戦狼は高いなあ。Bランク相当の魔物だから当然なのか。まあ多分、群れで現れたら俺死んでたしな。

 Bランク並みの魔物なんかまだ新人の俺が狩るべき魔物じゃないだろう。


 続けて魔法石を売り飛ばした。

 たくさん出しすぎて買い取りカウンターの姉さんがアタフタしていた。可愛いな。

 魔法石は合計で6720ゼニーだった。


 報酬と合わせると12200ゼニー。元の持ち金と合わせて13300ゼニーだ。

 ハッハッハ。一気に金持ちになってしまった。4時間前くらいまでは1100ゼニーだったのにな。


 これだけあれば装備の調達もできる。

 明日は依頼は受けないで市場の方に行ってみるか。

 リザードマンの片手剣はボロボロになっちゃったしな。

 

 今日は疲れたからもう冒険亭に戻ろう。酒場で夕食も食べたかったけど、みんな、ギルドをてんやわんやさせた俺に注目してるから居心地悪いし。

 

 外に出れば、もう夜だった。満天の星が暗い空を背景に光り輝いている。

 綺麗だな。

 異世界は景色が綺麗な場所がたくさんある。いずれいろいろな場所を見てみたいな。


 冒険亭に戻ると、一晩分の600ゼニーと風呂追加の100ゼニーを払った。

 今日は金があるから風呂に入れるぜ!

 返り血を結構浴びたからさっさと入ろう。

 部屋に戻って魔法袋を置き、着替えのTシャツを用意する。


 案内に従って、温泉へと向かった。というか勝手に中世ヨーロッパだと決めつけてたけど温泉とかもあるんだね。

 

 服を脱ぎ、温泉内に入る。結構広いな。冒険者と思われる者が5人ほどいる。 まずは身体を洗って血や汚れを落とすと、西洋風の温泉につかり、一息ついた。


「ああ~生き返る」


 そう言いながら、"魔力"が循環していくのを身体で感じる。

 感じられるようになったのは、まさに数時間前だ。ジムさんから"身体強化"のコツを聞き実践したところ、あっさりと習得できた。自分でもびっくりである。

 普通なら半年以上はかかるらしい。

 もしかして俺には才能があるのだろうか。ふっふっふ。

 

 その"身体強化"を習得したときに、同時に魔力の流れも感じられるようになったのだ。血液と同じように身体を巡っている。

 当然驚いた。そもそも、俺に魔力が存在しない可能性すらあったのだ。

 なぜその思考に至ったのかといえば、魔法石の存在だ。

 ジムさんからの受け売りだが、人や魔物が魔力を練るのに必ず必要な器官だというのが魔法石だ。

 だがそもそも、地球に住む人間にそんな不可解な臓器はなかった。

 だから、俺にもないだろうという考えに至ったのだ。 


 しかしその予想はあっさり裏切られ、俺はあっさりと魔力を纒うことに成功した。

 魔法石が右胸に存在することも手にとるように分かる。なぜなら魔力を練っているのが右胸の、ないはずの臓器だったからだ。

 多分、天使のフリーラの奴か、神のどちらかが改造でもしたんだろう。

 側頭部の銃創を治すついでに。


 

 と、しまったな。考え事をしていたせいで随分と長風呂になってしまった。

 そろそろ上がるか。


「お? あんときの兄ちゃんじゃねえかあ」


 と考えていると、無精ひげを生やしたおっさんが話しかけてきた。

 こいつは確か、犬獣人のスコットと一緒にいた…………


「ライドン………さんだっけ?」

「正解正解、ギルド期待のルーキーに覚えられているとは光栄だね」

「期待のルーキーだって?」

「お前さん、戦狼を倒したらしいじゃねえか」

「ああ……あの無駄にデカくて速い狼か」

「ありゃ本来Bランク相当の魔物だ。Fランクの新人がいきなりぶっ倒しゃ、そりゃ期待されるだろ」

「なるほど」

「戦狼はBランク冒険者の俺でも苦戦する魔物だぜ?」

「へえ、ライドンさんBランクだったのか」

「ああ、すげえだろ?」

「どんな気分だ? 高ランク冒険者ってよ」

「最高だな。優越感に浸れる。ここは魔物が少ないから高ランクの冒険者も少ないしな」

「俺もそのうち、同じランクまで上がってみせるよ」

「ククッ……楽しみに待ってるぜえ」


 いいおっさんだな。面白い性格してやがる。あ、そういえば…………。


「スコットの奴はどうしたんだ?」

「ん? 俺とアイツがいつも一緒にいるとでも思ったか」

「いや、なんとなくそんなイメージが」

「ハッハッハ! あいつは高級亭の方に泊まってるよ。無駄に寝床にこだわるやつだからな」

「あいつはさあ、なんでセシルを口説き落とそうとしてたんだ? いやそりゃ強い奴を仲間にしたいとは思うがそれにしたって……」

「あいつはフレイムドラゴンを倒したいんだよ」

「フレイムドラゴン?」

「知らねえのか? 要求Aランクの化物ドラゴンだ」

「Aランクか……!」

「そう、あのドラゴンは強い。

 名前の通り炎の竜で、炎によって実体が隠されていて、物理攻撃は意味をなさねえ」

「炎そのものってお前、そりゃ倒しようがないじゃねえか」

「物理攻撃が聞かねえ代わりに魔術は有効だ。

 上位魔術なら何十発と遠距離から放つだけで倒せるだろう。だが問題は、今この街に魔術師がいねえことだ」

「そりゃ無理だ。でも諦めてないんだろ? 何でだ?」

「スコットの住んでいた村は、フレイムドラゴンに滅ぼされた」


 絶句した。なるほど、そんな事情があったのか。スコットよ。小物臭いとか思ってすまなかった。


「つまり……復讐か?」

「いや、そうじゃねえ」

「え?」

「スコットの奴は昔から不思議な能力があってな。

 魔物の心が読めることがあるんだと。それで、村を滅ぼされたときにフレイムドラゴンの心が見えたらしい」

「どんな内容だったんだ?」

「次の標的、ライラの街を滅ぼすと」

「…………信じがたい内容だな」

「お前もそう思うだろ? だからギルドの連中もスコットの言葉に耳を貸さなくてなあ。魔物の心が読める力なんて聞いたことないし」

「つまり……奴は村を滅ぼされた後、ここに来てこの街を護ろうとしてたのか」

「そうだ。復讐に身を任せて、1人で討伐に向かいたい思いもあるだろう。だが奴は自分の実力をちゃんと理解している。だからセシルに頼みこんでいるのさ」

「それをセシルは断っているのか」

「セシルの奴だってフレイムドラゴンが住処をライラ森林に移したことぐらい知っているだろう。でも奴は討伐を断っている。まあ、この街には高ランク冒険者が少ない。Aランクは『魔眼』セシルと『戦斧』グスタフの2人しかいねぇ。そしてフレイムドラゴンはAランク2人程度で勝てる相手じゃねえ」

「Bランクのおっさん達を加えてもか?」

「そうすりゃ勝負は分からんかもしれん。だがスコットはまずセシルを落とすのが不可欠なのさ」

「そりゃまたどうして?」

「奴には『魔眼』がある」


 ライドンは一度言葉を切って、


「『魔眼』を"視覚共有"して魔力の流れさえ見えりゃ、奴の実体が捉えられる」


 ライドンは殺意すら見える眼で呟く。多分、スコットとは関係なく、彼はフレイムドラゴンに因縁があるのだろう。

 ん? でも初めて会ったときはスコットを諭すようなことを言ってたような。俺が関係ない人物だったからかな?


 まあそれはともかく、話を纏めてみよう。

 村を滅ぼされたスコットは新たな被害を防ごうとこの街にやって来た。

 ギルドには信じて貰えなかったが、どうにかフレイムドラゴンを、倒す術を模索しようとしている。

 だから『魔眼』を持つセシルを口説こうとしており、セシルさえいれば魔術師がいなくても何とかなる。物理攻撃が通じるからだ。


 スコット……。アイツ良い奴だな。その話が本当ならだが。セシルに断られてるのは顔が小悪党っぽいからじゃないのか?



「ライドンのおっさんは、何でその話を信じてるんだ?」

「別にそこまで信じてるわけじゃねえよ。ただ、アイツの目的と俺の目的は一致する。だから協力しているのさ」


 ライドンはそう言うが、あの話し方を見る限り、信じているんだと俺は思う。

 真剣な顔をしていたライドンは苦笑し、


「おっと……何でお前さんにこんな話をしてるんだか」

「フレイムドラゴンの討伐が決定したら、俺も呼んでください。力になってみせますよ」

「そりゃ心強い。頼むぜ」


 おっさんは風呂から立ち上がる。


「…………その傷!」

「ああ、これか? こりゃフレイムドラゴンにつけられた火傷だよ」


 右腕に大きな火傷の跡がある。

 ライドンは再び苦笑し、


「恨みって訳じゃあねえが……この傷の借りは返したくてな」


 そう言って、ライドンは去っていった。裸で。


 なんか風呂だから格好つかねえな。



 さて、明日は装備調達だ。


 


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