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傭兵の異世界召喚記  作者: 雨宮和希
悪魔襲来編
13/23

黒幕

 俺が剣を抜くと同時に、レナが鉤爪を構える。指で俺が先に出ることを合図し、剣を中段に構える。


「グルオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 咆哮で威嚇してくるが、戦車のキャタピラ音に比べればこれっぽっちも恐怖心を煽られない。

 むしろその隙をついた。


 "身体強化"を発動させて、地面を蹴る。砲弾のような速度を殺さずに、そのまま飛び蹴りを叩きつける。

 ゴッ!! という凄まじい音が炸裂した。

 だが、剛力熊はたたらを踏むだけで大したダメージを受けた様子はない。

 蹴りの反動で後ろに下がると、剛力熊はその巨体に似合わない素早い動きでなぐりかかろうと迫りくる。


 莫大な筋肉と魔力に纏われ、補強された一撃が直撃する。


 その。

 直前で。


 『瞬間移動』で剛力熊の後ろをとった。


 本当なら誰かの前で能力はあまり使いたくなかったのだが、仕方がない。


 魔力を纏い"強化"された筋力によって、上段から剣を振り下ろす。元々の技術と相まって、神速で放たれたその攻撃は誰が見ても必殺の威力を保っていた。


 だが。


 真後ろ、死角からの攻撃にも関わらず剛力熊は完璧に反応した。

 巨体を最小限の動きで揺らし、俺の剣をかわす。


 予定外の展開。


 さらに剛力熊はその巨大な拳を無造作に振るう。


「チィ…………!!」


 剣を空振って崩した態勢を強引に立て直し、左腕を全力の魔力で強化する。

 

 掲げた左腕に、巨大な剛力熊の拳が叩きつけられた。

 

 轟音。まともに考えれば、左腕が折れるどころではすまないだろう。そのまま顔を潰されてもおかしくない。


 だが。


「………………この程度か?」


 無傷。俺の左腕は拳の跡すら残っておらず、逆に剛力熊の拳から血しぶきが舞った。


「グオオオ……………!!」


 痛みを堪え、剛力熊は俺を睨みつける。

 だが、どうやら奴は忘れているようだ。

 敵が俺一人じゃないってことを。


 ザシュッッ!! という、レナの鋭い爪撃が剛力熊の背中に炸裂した。


 怒りの咆哮。その間に俺は大地を蹴って剛力熊に肉迫する。

 レナも動いていた。

 剛力熊はどっちに対応しようか逡巡するが、選んだ答えは回避だった。

 全力の横っ飛び。

 それを読んでいた俺は、砂煙を上げて追随する。

 その勢いのまま剣を振り回す。


 必殺の一撃が剛力熊の首を刈り取る。


 その、寸前の出来事だった。


 何者かが放った投げナイフが真横から出現した。

 完璧なタイミング。回避は絶対に間に合わない。レナが何かを叫ぶ。

 だが、俺には『瞬間移動』があった。

 投げナイフが頭蓋に突き刺さるその寸前で、俺はその場から姿を消す。


 5メートル後方に転移した。着地。同時に索敵を開始。

 どこの誰だ。あの投げナイフを放ったのは。


「カズヤ! 上よ!」


 レナの叫びを聴き、顔を上げる。


 大木の枝の上、そこにある男がいた。

 浅黒い肌。淀んだ緑髪。紅い瞳に、黒い翼。

 その姿は、まさに。


「悪魔……………」


 レナが恐怖の表情を浮かべながら告げた。

 俺は油断なく剛力熊の方にも注意をやっているが、奴は悪魔が出てきた瞬間から、悪魔の立つ木の根元から動かない。

 洗脳でもされているのだろうか。

 だとすれば、先ほどの真後ろからの攻撃に反応したのにも説明がつく。

 あれはこいつのスペックでかわせるような攻撃じゃなかったはずだ。


 緑髪の悪魔は不敵な笑みを描いて告げる。


「紹介ありがとう。猫の獣人よ。ご存知の通り、私は悪魔。上級悪魔のシルヴァー二・カニスキラだ。よろしく頼むよ、人間」


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