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黒天使復活

 文化祭当日を迎え、適当に時間を潰そうと思っていた午前10時。朝倉準一には客人が来ていた。代理は口内巡回があり、居ないので準一のその客人とのマンツーマンだ。

 現在、場所は借りた生徒会室。


「どうも。会えて光栄です。七聖剣朝倉準一」


 七聖剣は特殊な魔法戦闘に優れた七人を国内から選抜した総称だ。しかし、これはトップシークレット中のトップシークレット。

 何だ、この男は、と準一は向かいに座り口を開く。


「失礼。あなたは?」

「ああ、申し遅れました」


 黒いスーツの白髪、恐らく40代だろう男性は礼をする。


「白井信一郎。自衛隊の情報担当を一手に担う課。そこの人間です」


 自衛隊関係の人間? と思いながら準一は名刺を受取り「朝倉準一です」と言うと「存じております」と白井はカバンをテーブルに置く。


「まず、七聖剣のあなたを見込んで、ある任務を頼みたいのですが、この資料にお目を通しいただけますか?」

「……分かりました」


 の準一の声を聴き、白井はカバンを開け、資料を取り出す。「どうぞ」

 受け取り、見ると航空写真とは別の写真。

 どうやら海上に展開する艦隊を撮影した物らしい。


「……どこの艦隊です?」

「米日混成……とだけ、何しろ事情が事情でして」


 何ともはっきりとしないが、聞いておく。「これは、魔術師としての俺に対しての任務、と考えてよろしいのでしょうか?」

 ええ、と白井は頷く。


「これは、米日混成の輸送艦隊です」


 と言うのだが、そんな輸送にしてはあまりに物々しい。普通に戦闘用の大規模艦隊だ。


「……護衛ですか?」と思いついた任務を言ってみると、正解らしく白井は頷く。「事は急を要します。あなたにしか頼めない任務です」と白井。


「ちょっと待って下さい。詳しくお話しして頂きたい、何か知らぬまま護衛なんて御免だ」


 まさか、自衛隊と米軍の悪巧みに手を貸す、なんてあってはとんでもない。


「お話しします。まず」と白井は一枚の写真を取り出す。


 受け取り、目を通し、準一は驚愕し、言葉を失った。


「米国海軍空母・エンタープライスの甲板です。……お分かりいただけましたか?」


 エンタープライス、その2番艦の甲板には、恐らく強力な拘束術式を組みこまれているであろう鎖で、アルシエルが拘束されており、その前では、十人を超える術者に氷月千早が拘束詠唱を掛けられている。


「今回の護衛対象は、その一機と一人。天使と少女ですが、協力は黒妖聖教会も申し出て、今に至ります」


 頭がパニックになった、氷月千早は確かに葬った。だが生きている。


「白井さん……でしたか、七聖剣は他にも居ます。俺では役不足です」

「何を謙遜なさるのです。あなたはこの一機と一人と交戦経験があり、勝利している」


 だが……と何も思いつかない。


「この碧武九州校に関しては、七聖剣2人が守護に当たります。あなたは、この任務から離れ、黒翼天使護衛任務に就いていただきたい」


 長い息を吐く。


「で、このアルシエルですが、何から護ればいいんです?」

「神聖なる天使隊、吸血姫。クイーンシェリエスから」


 


 アルシエルを護衛する艦隊は、現在ハワイから太平洋へ入り、東京へ進行中。朝倉準一は割とすぐに到着した。

 聞けば、一機と一人は太平洋で漂流していたのを演習に出向いていた自衛隊艦隊に確保され、ハワイでの調べられたのち、日本への輸送が決定したらしい。

 正直に言うと、自分だけじゃ足りないだろう。が準一の意見だった。レーダー上では、既に機影は後方に迫っているのだが、詰め寄っては来ない。

 準一のアルぺリスは、艦隊の上空で滞空。千早は終始、笑みを向けている。

 前、戦った時千早は自分に対して、千早側に付かないか、と聞いた。それに対しての準一の答えは考えておく、だった。

 言ってしまえば、千早の考えに賛同、とまではいかないが理解できる部分はあったが。


「各員へ。後方に控えた敵部隊が動き始めた」


 各艦に通達され、ベクターが全機起動、艦隊は対空戦闘を開く。同時、後方の駆逐艦二隻が茨に貫かれ、グルグルと巻きつかれ爆発。

 空母から艦載機が上がる。


 ここまで、朝倉準一が到着して三〇分と経っていない

 まるで、奪取する部隊は待っていたかのようだ


「先行します」


 準一は言うと、アルぺリスにブレードを装備させ、飛翔し、加速魔法で敵機に急接近し、敵部隊が情報通りの神聖なる天使隊だと気付く。

 まず、手近な一機に肉迫し、回し蹴り後魔導砲で撃ち抜き、一機撃墜。

 ベクター部隊が追いつき、各自で戦闘態勢に入ると同時、見覚えのある一機がアルぺリスに接近する。

 しかしこれは魔法でも使ってないと出せない速度。機体性能ではない。

 ブラッド・ローゼンの血の魔法は、操縦者である魔術師の血液を機械魔導天使に捧げる事により、格段の性能アップを図る事が出来る。


「ハンニバル」


 準一は、近づいた敵の機体の名を言うと、加速魔法を使用した状態での回し蹴り、だがハンニバルは早く、回避し剣を突き上げる。

 硬化魔法を発動。

 突き上げられた剣の刀身を腕部装甲で滑らせ、懐に飛び込み左手のブレードの切っ先を向けるが、別の機の接近を許し、その気配に気づき、ハンニバルを退け、その機が振り下ろした大剣を受け止める。


「シベリア以来ね。朝倉準一」


 クイーンシェリエスのカレンデュラ。

 だが、構う暇はない、すぐ隣では体勢を立て直した、オリバーのハンニバルが迫っている。

 カレンデュラの大剣を退け、魔導砲を撃ち、距離を取り、二機に攻撃を加えながら後方を見る。

 まだベクター隊は機械魔導天使と交戦しており、空母に敵は迫っていない。

 

「余所見する余裕が」とオリバーの声が聞こえた直後、アルぺリスはとび蹴りを喰らわされ、後ろにさがり魔導砲の射撃が止むと同時、カレンデュラが接近。


 気付き、アルぺリスのブレードを振るうと、カレンデュラの大剣。ロツンディフォリアが刀身の口を開け、アルぺリスのブレードを咥えこむ。

 動かなくなったブレードを手放し、カレンデュラに踵落としを叩き込み、後ろから不意打ちを狙ったハンニバルの剣を加速魔法で避け、蹴る。

 ハンニバルは後ろにさがり、入れ違いに神聖なる天使隊の機械魔導天使がアルぺリスに雪崩れ込むが、加速、硬化の同時使用のアルぺリスに簡単に撃破され、アルぺリスはカレンデュラとの鍔迫り合いを始め、ハンニバルは後ろからアルぺリスに迫る。

 しかし、準一の対応は早く左手のブレードでロツンディフォリアを、右手を硬化させハンニバルのブレードを受け、二機を交互に見る。


「本当に強いわね。参ったわ」

「確か、あんたの機体に血と薔薇が入ったんじゃなかったか?」


 準一は、聞いておく。するとハンニバルがブレードを下げ、後ろにさがる。「いいや少し事情が変わった。この状況の為にな」

 ハンニバルは魔法陣を機の前に形成させ、その中から数十枚以上の護符が飛び出し、その全てが機械魔導天使の形状になる。


「召喚術式。式神と同じだ」


 くそ、と対応しようとするが、カレンデュラは力を入れ、アルぺリスを突き飛ばし、召喚された天使の中に放り込む。 

 さっさと倒したいのだが、如何せんその機械魔導天使たちはタフ。

 撃ち抜こうも、胸部を破壊しようも構わず動いている。

 そんな奴らを相手に、ハンニバルの相手もしている為、完全にアルぺリスの足は停まった。


「クイーンシェリエス。後は貴様の仕事だ」

「分かった。頼むわ」


 言うと、カレンデュラは空母へ飛ぶ。準一は追いかけようとするが、完全に敵のペースに呑まれ、行動を制限される。加速魔法での脱出を試みるが、ハンニバルの高速機動に阻まれる。




 エンタープライスに迫ったカレンデュラは、ミサイル以外の対空砲火を盾で防ぎ、アルシエルの前に降りるとロツンディフォリアで黒妖聖教会の詠唱術者を殺し、氷月千早は自由になる。

 

「……何の真似かしら?」


 千早はカレンデュラを見上げる。


「助けてあげるのよ。必要でしょ?」


 そうね、と千早は差し出されたアルシエルの手に乗り、コクピット内のシートに座り操縦かんを握る。


「着いて来て。氷月千早」

「分かったわ」


 千早は、一度アルぺリスの方を見ると、飛翔したカレンデュラにアルシエルを続かせた。



 一方、召喚した天使にアルぺリスを任せハンニバルもカレンデュラに続いた。物の数分の悪夢は、護衛任務失敗と言う形で終了し、敵機を撃墜したアルシエルとベクター部隊は、空母に着艦。


 だが、全ては予期されたモノだった。


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