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トラック泊地侵攻 ①

 翌々日、客人との事で先日よりカノンが任務で居ない事を思いだし、準一は学校内の待合室へ向かった。




「過去まで出向いた収穫は? 聞きたいものね」


 問うのはシスターライラ。隣に立つ朝倉準一は長い息を吐き、口を開いた。「どうやら、俺は一度死んでいるらしい」


「というと?」

「首を刎ねられてな。そんで、アルぺリスのお出ましだ」


 へぇ、と興味あり気にライラは顎に手をやり、学校の待合室の壁に背を預ける。「一度、死んだ。ねぇ、それってアルぺリス召喚時に使った血が貴方の中に流れている事に、関係があるのかしら?」


 さぁな、と準一は言うとシスターライラに目を向ける。「ジェシカ・ミレイズは?」


「気になるの?」

「それなりにな、黒妖聖教会が彼女に何かしてないかと」

「してると思って?」


 いいや、と準一は笑う。「で?」


「彼女はマリアに会いに行ってるわよ。それに、黒妖聖教会では治癒魔法関連を指導しているわ」


 そうか、と準一が言った直後、携帯が鳴った。誰だ、と思う前に出てみると、機甲艦隊の駆逐艦雪風の艦長から。

 

『すまない。特級少尉、緊急事態だ。今から、碧武の停泊地に雪風、島風、榛名が入港する』

「分かりました。椿姫、アルぺリス、どちらが?」

『どちらもだ』


 よっぽどだな、と思うと携帯を切りライラに一度手を振ると待合室を出て、格納庫へ内線を繋ぐと、代理には話が行っていたらしく、すんなり椿姫カスタムは運び出され、停泊地には3隻の戦闘艦が入港し、遅れて、空母赤城が入港。そうそうたる光景になった。

 これだけの戦闘力をここに連れてくる理由は、それなりに何かあるのだろうが、違和感があるとすれば普段やって来る弩級戦艦大和はどうしたのだろうか、という事だ。

 準一が案内されたのは、発進した艦隊。空母赤城のブリーフィングルーム。各員は席に着き、デスクに置かれていた資料を手に取り、目をやるとブリーフィング開始の言葉と共に、部屋の照明が消え、ホワイトボード前に投影ディスプレイが映される。


「まず」と口を開いたのは機甲艦隊所属の、駆逐艦CICでオペレーターをしている若い青年だ。「これからお話しする事は、作戦参加の我々に対し、上から箝口令がしかれています」


 箝口令がしかれるレベル。普段もしかれているのと同じだが、こうやって言われるのは久しぶりだ。


「これを」


 映し出されたのは、大和の航行映像だ。すぐにそれは戦闘態勢に入り、大和周辺には曳光弾が走り、ミサイルが舞い、爆発が映り、水柱が立っている。


「そして、この映像の直後が」と映像が消え、写真に切り替わるとその海域には何もない。「この状態です」


 席に座る1人、中年男性が「魔法か?」と聞くが「分かりません」が青年の答え。「これは、昨日の昼過ぎ。種子島を出航し、航行訓練に出向いた直後のモノで」


「誰が撮影を?」と別の1人。「航空自衛隊の哨戒機です。付近には、海上自衛隊の潜水艦・うずしお、が浮上していたのですが」

「潜水艦は確認していない、のか?」

「はい」


 中年からの問いに答えると、青年は一呼吸。「そして、哨戒機はその写真の撮影後、広範囲に霧が広がり、大和を見失った、という事です」

 大和を見失った、それにはカノンも一緒に居た。


「霧……とは?」と準一。「分かりません。ですが、高度な空間魔法の可能性が高い、との意見です」


 しかし、と別の男が口を挟む。「これだけの戦力が揃ったのは良いが、一体どこへ? 大和は行方不明なんだろ?」


「それですが」と青年は画面を見るように指示する。「これを、本日明朝。機甲艦隊所有のトラック泊地で撮影した物です」


 見ると、泊地に大和が錨を降ろし、停泊しているがおかしい。


「なぁ、トラック泊地の他の艦艇は?」

「不明です」


 男の問いに、青年は言い放つと別の画像に切り替える。「この情報を手に入れたのは、日本だけではありません。これは、中華軍の海軍艦隊ですが」


「まさか、大和を奪いに?」

「その通りです」


 中華海軍の移動経路は、裂ける戦力がそこしかないのだろう、カムチャツカ半島から南下し、日本海を抜け、直に福岡を過ぎる航路。


「ここしか裂けなかった理由は明白です。反日軍のスポンサーの中華軍は、これを機に韓軍と口裏を合わせ、トラック泊地を奪いに向かっています」


 マジかよ、と声が聞こえると青年は続ける。「ですが、幸いなことに」


「イスラエルから、米軍とイスラエル空軍の混成飛行隊が時間稼ぎに向かっています」


 米軍としては、必死になるところだ。ここでトラック泊地が奪われれば、トラック泊地領内の米軍基地も一緒に奪われ、尚且つ中東進軍と東南アジアでの威圧が難しくなる。 その為、米空軍の試験飛行隊同然のイスラエル空軍を引きつれている。


「信用できるのか?」

「出来ますよ。トラック泊地が奪われれば、米軍も困るでしょうから」


 言うと、青年はディスプレイを閉じる。「今回の作戦では、反日軍との交戦もあり得ます。各員、交代での対空対水雷対潜警戒を厳となし、すぐに戦闘態勢に入れる状態で待機してください」


 立ち上がり、全員は敬礼。




 着替える間の無かった準一は、空母内に用意された部屋に入り、学生服を脱ぎ機甲艦隊のマークの入った作業服を着ると、機が待機する甲板へ向かう。

 飛行甲板には、椿姫の他に防空迎撃兵装の代わりを成す9mベクター。神守、50mmガトリングガンを腕に装備し、ショルダーアーマー内には迎撃用の対空ミサイルを収めている。

 そのほかは、F-35・ライトニング。F-15・イーグル。ライトニングは垂直離発着機だから兎も角、イーグルは赤城の飛行甲板では圧倒的に滑走路としての距離は足りないのだが、機体下部に垂直上昇下降用の補助高出力ブースターを4基装備している。

 おかげで、イーグルも垂直離は着が可能になった為、そのブースターを使用しての急発進が可能になった。



 差し向ける戦力は、駆逐艦2、戦艦1、空母1。

 駆逐艦は雪風・島風の2隻。

 しかし、駆逐艦と言っても二次大戦中の砲戦特化の撃ち合い用戦闘艦ではない。

 戦闘能力で言えば、イージスシステム搭載のジョーンズ級駆逐艦と同等。

 言ってしまえば、雪風・島風はイージスシステム搭載艦、イージス艦である。しかし、自衛隊の様に専守防衛ではない為、護衛艦ではなく普通に駆逐艦呼称だ。


 戦艦榛名は、近代化改修を受けた大和に続く近代戦艦だ。SPYレーダーを4基備え、イルミネーターレーダー数基。主砲はレーダー照準、VLS、2連ミサイル発射。防御火器として、CIWS、速射砲。艦載機としては戦闘ヘリ。人員輸送用のティルトローター機。


 赤城は特筆したことは無いが、空母は2段式。大体、ベクターは一段に膝を付いて待機している。2段は垂直離発着機専門。

 


 一通り見おえ、準一は艦内に戻り、知り合いと共に食事を取り、代理へ連絡し、数日戻れない可能性がある、と伝えた。

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